【ライブレポート】TOTO、35周年ツアーで圧巻のパフォーマンス、ジェフがいた頃のようなガッチリまとまった完璧なステージ
80年代のアメリカを代表するバンド、TOTO。2008年に一度は解散したが、2010年には難病で離脱したベーシストのマイク・ポーカロの闘病支援を目的に再結成。その後はワールドツアーを何度も行ない、新作も制作中だという。今まさに“精力的に活動中”なのだ。そんなTOTOは2013年にデビュー35周年を迎え、その記念ツアーが日本にもやってきた。東京公演の最終日となった4月28日の武道館では、“今はすべてがうまく行っている”というスティーヴ・ルカサーの言葉のとおり、演奏力の高さと楽曲の良さを改めて見せつける完璧なパフォーマンスでオーディエンスを熱狂させた。
◆TOTO@武道館~拡大画像~
「Goin' Home」が終わるとステージは暗転。あの不穏なシンセの不協和音から「Hydra」が始まり、「St. George and the Dragon」と2ndアルバムのナンバーが続く。「I'll Be Over You」ではルカサーは昔に戻ったような澄んだ声のヴォーカルも聴かせた。「It's a Feeling」はライヴではめったに演奏しないナンバー。2コーラス目では作曲者であるスティーヴ・ポーカロ自身も味のあるヴォーカルを披露し、ファンを喜ばせた。
こうして見どころ、聴きどころ満載の過去の名曲、それもTOTOファンには人気の高い曲が次々に披露されるのを聴きながら感じたのは、今回のTOTOは久々に完璧に楽曲を演奏するTOTOだ、ということだ。もちろんTOTOはいつでも完璧な演奏をするバンドだが、ジェフがいなくなってからはルカサーが一人で前に出て引っ張り、超絶テクニシャンのサイモン・フィリップスとともにジャムセッションに走るような雰囲気があった。しかし今回は、ガッチリとまとまったバンドサウンドで楽曲をしっかりと聴かせることに重点を置いていたようだ。ルカサーも前に出まくることはなく、得意の下ネタ満載のMCもほとんどなし、ソロでもレコードに忠実なフレーズも多用。まるでジェフがいた時代のライヴのような、すごくまとまりのある雰囲気だった。
そうなった大きな理由の一つが、キース・カーロックの加入だろう。サイモンとは対照的にセットはシンプルだし、曲をプレイするときには手数が少なく、なにもしないからこそのカッコよさが感じられる。その意味で、ジェフと共通するプレイだった。思えばジェフが亡くなってから間もなく22年。ジェフがいない時期の方がもう長いわけなのだが、ファンが求めるのはやはり初期のTOTOサウンドのはず。この日のライヴは、そんなファンの想いに応えたものになっていたといえる。
ステージ後半も、ルカサーがアコースティックギターで流麗なソロを聴かせた「99」、ペイチのピアノソロからつながる「White Sister」、ネーザン・イーストがベースソロを披露し、コール&レスポンスで盛り上がって10分近い熱演となった「Africa」など、初期の名曲がズラリ。そして本編最後は「Hold the Line」。イントロの“ダンッ”というスネアと同時に、ロボットの顔のような最新のバンドロゴを描いたバックドロップが切って落とされると、1stのジャケットのあのイラストが現れ、客席は大興奮。もちろんサビでは大合唱となった。ライブ終盤の定番曲となっている「Home Of the Brave」でアンコールが終了するまで18曲、2時間20分のライヴだったが、本当にあっという間に感じられた。制作中だという新作、そして次回の来日が待ち遠しくなるような、とても濃密なライヴだった。
写真●Masayuki Noda
TOTO 35TH ANNIVERSARY TOUR IN JAPAN 2014
2014.4.28@日本武道館
1.On The Run / Child's Anthem / Goodbye Elenore
2. Goin' Home
3. Hydra
4. St. George and the Dragon
5. I'll Be Over You
6. It's a Feeling
7. Rosanna
8. Wings of Time
9. Falling in Between
10. I Won't Hold You Back
11. Pamela
12. 99
13. White Sister
14. Africa
15. How Many Times
16. Stop Loving You
17. Hold the Line
Encore Home of the Brave