【ライブレポート】healah、溢れる感情に涙をこらえきれず「みなさんに良いライブにしてもらいました」
3月2日(日)、シンガーソングライターのhealahが1stアルバム『ゆらぎ』のリリースを記念してゲストに片平里菜を迎えたツーマン・ライブ<GARDEN PARTY vol.1>が東京・渋谷gee-geにておこなわれ、溢れ出る感情を隠すことの無い熱唱で詰めかけた多くの観客の心を揺さぶった。
◆healah、片平里菜 画像
この日の天気はあいにくの雨模様。雪に変わりそうな冷たい雨に日曜日の渋谷もいつもの喧騒を忘れて凍えているようだ。そんな中、会場の「渋谷gee-ge」には多くのファンが集まり、階段に列を作ってライブの開始を待ちわびていた。客電が落ちると拍手の中、まずhealahが登場。ステージに照明があたるとノースリーブのドレス姿でピアノに向かい静かに歌い出す。曲は「Everytime」。ゆっくりとしたワルツ調の曲ながらエネルギーに満ちたボーカルを初っ端から全開にするhealah。ゴスペル・シンガーのようなシャウトが伸びやかに会場に響く。渋谷gee-geは非常に音響も優れており、よりクリアに声が反響しているようだ。
「こんばんはhealahです。ガーデンパーティーへようこそお越しくださいました!」と腕を上げるhealah。「楽しく気軽に、家族や友達みたいな感じで楽しんでくれたら嬉しいです。そんな記念すべき第1回に素敵なアーティストの方をお呼びしています!」と片平里菜を呼び込む。healah とは対照的なTシャツ姿で登場した片平。2013年に大阪のイベントで共演したことをきっかけに1年振りに再会して共演することを観客に伝えると大きな拍手が。「お互い片想いを続けてきた2人です(笑)」と笑う2人。
ここから片平がステージに残り弾き語り。「凄く良い雰囲気ですね」と客席を眺めてから「Hey boy!」でライブをスタート。力強い歌声に手拍子が起こり「ヘイボーイ!」のコール&レスポンスに一斉に反応する観客。女性ファンのみのレスポンスを求めると会場にいる女性たちがすかさず反応して声を出す。片平のファンは積極的な方が多いようだ。手拍子に乗って2曲目「小石は蹴飛ばして」。時折ハスキーになる声にドキっとさせられる。
改めてMCで自己紹介。「福島から来ました片平里菜です。2人ともシャイというか人見知りなんですけど、1年前にご一緒した時にhealahさんの歌声に衝撃を受けました。共演出来て嬉しいです」とのMCからシングル曲「女の子は泣かない」へ。キャッチーな曲と歌詞が女性の心にまっすぐ入って行きそうだ。アルペジオで母の事を歌った「ぺんぺん草」から「最高の仕打ち」。セブンスのコードが印象的な、シンプルなようでいて凝った構成の曲だ。
「サード・シングルの曲をやります。手拍子をみなさんで練習しましょう!」と歌い出すとサビでバッチリと手拍子がキマる。最新曲「Oh JANE」も浸透しているようだ。「healahさんは茨城出身ということなんで、きっと私と訛りのイントネーションが同じです(笑)」と紹介してから地元・福島を歌った「Come Back Home」。「明日は月曜日ですけど、そんな事忘れて一緒に歌ってください!」と観客とコーラスを大合唱。healahの曲、「スパイ」が好きと本人に伝えようとして「スパイダーが好きです」と間違えてしまったというエピソードを交え、最後はなんとマイクをオフにした状態で「amazing sky」を歌いステージを降りた。
しばしのインターミッションを挟んでhealahのライブへ。合間のSEにはビョークが流れていた。改めて客席を眺めてみると男性客が7~8割、平均年齢は20代後半から30代前半といった所だろうか。落ち着いた大人のファンが多い印象だ。
「私の佇まいの変な所に衝撃を受けた方もいると思います(笑)」とのMCになんとも言えない笑いが起こる。ユニークなキャラクターと強烈なボーカルのギャップが面白い。続く「Butterfly」では一瞬打ち込みの音が流れ出したのかと思ってしまったのだが、もちろん1人での演奏だ。高音のリフレインと低音のフレーズがダークな世界観を表現していた。
続く「スパイ」ではピアノはさらにハードな音像に変わっていく。ロックなシンコペーションとブルージーなボーカルが意外性を感じさせた。この辺りの曲はバンド・サウンドで聴いてみたいと感じた。曲が終わるとこの日発売となったアルバムについて初めて触れる。「去年の夏にレコーディングしたものなので、写真も違う人みたいになっちゃってるんですけど(笑)」。真夏に手作り弁当を作って行き、3時間おきに食べながら録音したというエピソードを披露。「最初に歌った「Everytime」は、その場で思いついたフェイクが入っていたりして面白いです」とのこと。また『ゆらぎ』というタイトルについては「人生が真っ暗になったと感じていた時に出会った言葉で、水彩画で描かれた絵本から」ヒントを得て迷いながらも付けたという。続いて初めて歌う曲として「あなたがいた」。あなたという、限られた対象にごく個人的な伝えたい事を歌っている曲なはずが、人が人を想う普遍的な感情を表した楽曲に聴こえた。
「震災の時、周りの人達の助け合う姿を見ていて、茨城の人が大好きになりました」という言葉を伝えてから歌われた「水のオーブ」では、感極まり歌声が途切れてしまう。2番になり、歌うことが出来ずに声を詰まらせながらも曲を続け、ピアノを弾き続けるhealah。ほぼ一曲、まともに歌うことが出来ずに曲が終わり「すいません」と客席に謝る彼女を、観客の暖かい拍手が包み込む。「ティッシュください!」と鼻をかみながら話すhealahに笑いが起こり、会場は和やかなムードに。本人を見つめる観客からも「頑張れ!」という声援が。泣きながらも喋り続ける彼女。「音楽をやっていることをバカにされたりした時に書いた曲です。その時に友達が大丈夫って励ましてくれました。今、勇気が無くて苦しんでる人がいたら届けば良いな、と思います」というMCから歌い出した「この山越えたら」は先程とは違い、実にパワフルで彼女の芯の強さが伝わってくる歌声だった。「これはきっと私のスタート」という歌詞が胸に迫る。
「さっき泣いてて何歌ってるかわからなかったと思うんですけど、CDに入ってるんで…」とちゃっかりしたMCに観客から大きな笑いが起こる。どうやら涙の山は越えたようだ。最後に「感謝を込めて」との一言から最近出来たという新曲「あなたが笑うから」。伸びやかな声が会場の隅々まで響き“私は強くなる”という最後の言葉に先程の姿を重ねてグッときてしまった。
「みなさんに良いライブにしてもらいました、ありがとうございました。またお会いできると嬉しいなと思います」と、最後の曲はhealahが1人で歌う「空の中」。歌いながら観客に笑顔を向けるhealah。リラックスした表情に、感情をさらけ出して自分の全てを歌った充実感が伺えた。小さな体からは信じられないくらいのパワフルな歌声と愛すべきキャラクターに今後の活躍を信じたくなる、心温まるライブだった。
取材・文◎岡本貴之
Photo by 藤沢花瑞子
<GARDEN PARTY vol.1>2014年3月2日(日)渋谷gee-ge
ゲスト:片平里菜
<セットリスト>
1.Everytime(healah)
2.始まりに(片平里菜&healah)
<片平里菜 セットリスト>
1. Hey boy!
2. 小石は蹴飛ばして
3. 女の子は泣かない
4. ぺんぺん草
5. 最高の仕打ち
6. Oh JANE
7. Come Back Home
8. amazing sky (off MIC)
<healah セットリスト>
1.LOVE
2.Summer Snow
3.Butterfly
4.スパイ
5.あなたがいた
6.水のオーブ
7.この山越えたら
8.あなたが笑うから
EN1. You're the only one (healah&片平里菜)
EN2. 空の中(healah)
1stアルバム『ゆらぎ』
2014年3月2日 発売
BECR-001/¥1,800(税込)
BIRTH ENTERTAINMENT/Atomic Monster Records
01. あなたがいた
02. Summer Snow
03. Butterfly
04. I Remember
05. Everytime
06. この山越えたら
07. LOVE
08. 水のオーブ
◆healah オフィシャルサイト
◆片平里菜 オフィシャルサイト
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