【ライヴレポート】Crack6、“6 elements=6つの要素”がバンドの歴史を凝縮し集大成を創り上げたアニバーサリーツアー

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2013年6月に結成10周年を迎え、数々のメモリアルなライブ&リリースを繰り広げてきたCrack6。PENICILLINのギタリスト・千聖=MSTRによる、このスーパープロジェクトの10周年アニバーサリーツアー<6 elements>が12月28日、TSUTAYA O-WESTでスタートした。タイトルの“6 elements=6つの要素”について、ライブ中にMSTRは“木・火・土・金・水という世界を構成する5要素+音楽のこと”と話したが、その通り本ツアーもCrack6という存在を構成するもの全てが引き出されたステージに。12月25日にリリースされた最新ミニアルバム『6 elements』を軸としつつ、新旧取り交ぜたメニューによりCrack6の歴史を凝縮して、まさしく集大成を創り上げたのである。

◆Crack6~拡大画像~

ベルの音が聴こえる壮大なSEに続いて幕が開き、姿を現した5人が奏でるのは、アルバムでも1曲目を飾っている「Gloria」。“Gloria in excelsis Deo”(=いと高きところには神に栄光あれ)と歌われるラテン語の清らかな調べは、クリスマス直後というタイミングに素晴らしくピッタリなのに、そこに突如トリプルギターが激しく斬り込んで、場内の空気を一変させるのだから驚きだ。神か邪悪か、光か影か? なんとも不穏なムードの中でお立ち台に上がり、マイクを握って「Loveless」を歌い出したMSTRも、短パン&ブーツにスタッズ付きのジャケットという完全なる“攻め”のスタイル。さらにTENZIXX(B)のデスシャウト、U6(G)のクリーンなコーラス、スカル(骸骨)メイクを施したSHIGE ROCKS(G)の激烈なギタープレイと、各メンバーの個性を活かした目くるめくシーンの移り変わりに、初っ端からフロアも大きく揺れ動く。そしてスタンドマイクとハンドマイクを巧みに併用し、緻密なソロプレイも挟んで、ボーカリスト/ギタリスト双方の顔を見事に共存させる「破壊不可能」へ。続く「Crazy Sky」ではしっかりと歌を聴かせて、いわゆるギターボーカルではなく、ギター+ボーカルであるのがMSTRの大きな魅力だ。

「初日からトバして行こうぜ!」との言葉を体現すべく、SHIGE ROCKSとのギターバトルが曲名そのものの「衝撃~warning666~」を手始めに、拡声器ごしに歌う「Free Your Mind」から“We are Black6!”と全員ポーズを決めて、披露したのは話題の新曲「We are Black6」。なんとJIRO 6(Dr)以外のメンバーがフリをして踊るというエンターテイメント性に富んだステージには、MSTRの一つの意図が秘められていた。

「こうして初日を迎えられて幸せです。クリスマスは終わったんですけど、僕の中ではまだクリスマス。来てくれる皆の笑顔が、僕にとってのクリスマスプレゼントです」――MSTR

裏を返せば、このライブ自体がCrack6からオーディエンスへのクリスマスプレゼントということだ。サンタのコスプレ姿が散見されるフロアを見渡して「サンタもこんなに……たくさんた」と本人いわく“サムいギャグ”も飛ばしつつ、ハードなギターソロで始まるメロディックな「1996」からMSTRが情感籠めて語る「追憶」、ミラーボールが回る千聖ソロ時代のバラード「falling over you」へ。ギターを置き、スタンドマイクを握り締めてひたすら感情を伝えることに専念するMSTRに、場内からは大きな拍手が沸き起こる。そうしてセンチメンタルなストーリーを深めたところで、共に手を鳴らし、大きく手を振る「記憶の匣」で高まる一体感が温かい。変化球だけでなく直球でも勝負できる、これがCrack6の強さだろう。

「『6 elements』を聴いて、ぶっちゃけ“ホントに俺、カッコいいな”って思う。だから、みんなも自信持っていいです。そんな音楽が好きな私、センスいい!ってね」――MSTR

と、熱いMCを挟んでは、今度は音楽で身体を熱く躍動させる、もう一つの直球ストレートが次々と放たれることに。JIRO 6がパワフルなドラミングで攻める「赤イ月光」に、「Crazy Poker Face」でスポットを浴びるMSTRは激しく頭を振りながらソロを弾いて、「Mstr A 2 Z」では拡声器を客席に向けてステージを跳ね回る。フロアが上手と下手に分かれて恒例のジャンプ対決をする「キラ☆キラ」では、SHIGE ROCKSの凄まじいギターソロが炸裂! ヘッドバンギングの嵐を呼び込んで、場内は季節外れの祭りの様相だ。続いて「ラスト行くぞ!」とミサイル級のパワーで攻撃する「電撃ミサイル2006」を贈り、マーチのリズムが新年へ向けての歩みのように力強く鳴る「True Sympathy」では、“君のために 輝き続けると誓う”というリリックが胸にグサリ。眩しい光のなか、差し伸べられたMSTRの腕が頼もしく、その誓いを信じていいのだと確信させられた。

まだまだプレゼントは終わることなく、アンコールではなんとMSTR自身もサンタコスで登場!『6 elements』について「サンタじゃなくサタンばりに大変でしたよっ!」と告白しながらも、「シングル2枚、アルバム1枚出して、すごく良い1年でした。ぶっちゃけ今後も休む気ないっす! ガッツリ盛り上がって2014年を迎えましょう!」と最新シングル「シグナリズム」に雪崩れ込む。場内総出でタオルを回して沸き上がるハッピーな空気に、JIRO 6とU6も顔を見合わせて思わずニッコリ。アルバムのラスト曲「KICK!」では重厚なユニゾンで身体を揺らし、ロックの衝動を最もピュアな形で放出してみせた。

「超盛り上がって、渋谷をビックリさせて帰りましょう。人生は回り続ける!」――MSTR

そう煽って、ダブルアンコールで届けられたラストチューンは「770R」。TENZIXXのベースがバキバキと鳴るなか、U6と共に“Crack6フラッグ”を振るMSTRに、フロアからは高らかに拳が突き上がる。メンバー全員が作曲に参加し、ライブを想定して作られた『6 elements』はメンバーとファンの心を一つにして、10年の積み重ねの上に大輪の華を咲かせてみせた。その達成感は彼らに新たな夢を与え、ステージを去るMSTRに何度も「来年もCrack6をよろしくお願いします!」と言わしめたのだ。

年を明け、この後ツアーは1月5日の名古屋ell FITS ALLに続き、1月11・12日の大阪RUIDOで大盛況の中ファイナルを迎えた。中国の五行思想によると、万物は木火土金水の5要素が循環することにより成り立つのだという。そこに音楽が加わって、5人とオーディエンスは今後どんなアンサンブルを奏でてゆくのか? 10周年アニバーサリーのCrack6にも期待は膨らむ。

取材・文●清水素子
写真●小林 裕和

「6 elements」
2013/12/25(水)発売
【初回限定盤】CD&DVD
CTCR-14817/B ¥3,900(tax in)
16Pジャケット仕様
【通常版】CD ONLY
CTCR-14818 ¥3,000(tax in)
20Pジャケット仕様
CD 収録曲(期間限定盤・通常盤 共通)
M1. Gloria
M2. 衝撃~ warning666 ~
M3. Crazy Sky
M4. Loveless
M5. We are Black6
M6. コルネット
M7. 追憶
M8. 赤イ月光
M9. シグナリズム
M10. KICK! (Crack6 with Ricky BRAND NEW WAVE Ver.)
DVD 収録内容
「赤イ月光」ビデオクリップ/「シグナリズム」ビデオクリップ/「Loveless」ビデオクリップ(特別収録)


◆Crack6 オフィシャルサイト
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