【インタビュー】THE NEATBEATS、このアルバムは「お願いします、聴いて下さい」っていうよりは「買っておいた方がええんちゃう?」って感じですね
■モノラルって基本的にスピーカー一個で聴いてるハンデがある
■でもその中で音作りするというのは自分に対する挑戦なんです
――ニュー・アルバム『DANCE ROOM RACKET』にはカバー曲が多く収録されていますが、かなりマニアックなので何曲か解説していただきたいのですが、例えば「DO YOU WANNA DANCE?」はビーチ・ボーイズのカバーですか?
MR.PAN:ビーチ・ボーイズが有名だけど、ボビー・フリーマンっていう人がオリジナルで、僕らがやってるのはクリフ・リチャードのバージョン。クリフ・リチャードってイギリスのエルヴィス・プレスリーって呼ばれてた人なんだけど、このバージョンでやる人ってほとんどいないんだよね(笑)。だからこそクリフ・リチャードでやることに意義があるんだよ。
――それはバディ・ホリーをカバーするのとはまた、違うニュアンスなんですか?
MR.PAN:違うんだよねぇ。バディ・ホリーは世界的レジェンドでしょ? でもクリフ・リチャードはイギリスだけのレジェンドだから。ローカルのスターという立ち位置が、僕らと合ってるな、と(笑)。誰のバージョンでやるかというこだわりはあるね。
――「don't forget to write」は誰のカバーなんですか?
MR.PAN:これはリヴァプールの知る人ぞ知るエスコーツというバンドです。エスコーツは着てるジャケットがデカいんだよね。テディー・ボーイ文化を引き継いでるというか。だからちょっと田舎のロック・バンドなんだろうな、と。父ちゃんはみんなテディー・ボーイなんちゃう?とか(笑)。
――そこまで想像しますか(笑)。これはなかなか解説書が必要なアルバムですね。「MY BABE」はリトル・ウォルターですか?
MR.PAN:そうだね。でも僕らのバージョンはビートルズがバック・バンドとしてビート・ブラザーズ名義でレコードを出してた時に歌ってたトニー・シェリダンっていう人のバージョンと、ヴィンス・テイラーのバージョンを合わせた感じだね。
――すみません、もう全然知識がついていかないです(笑)。
MR.PAN:ははははは!
――MR.PANさんと完全に知識を共有出来てる人っているんですか?
MR.PAN:ほとんどいないけど(笑)、ザ・クロマニヨンズのマーシーはたまに遊びにきて、レアなCDをあげたりして、「勉強になりました、ありがとう」とかメールくれる(笑)。彼もマージー・ビート大好きだからね。
――このスタジオでセッションしたりすることもあるんですか?
MR.PAN:いや、CD聴いたりレコード聴いたり(笑)。貸し借りしたりして。
――本当に中高校生みたいな音楽仲間なんですね(笑)。
MR.PAN:そうそう(笑)。それが一番楽しい。カバー曲もどこかでマーシーを喜ばせたいっていう気持ちもあるんだよね。マーシーがハイロウズ時代に僕らのフライヤーを見てCDを手に入れてくれて、マネージャーさんを通して連絡をくれたのをきっかけに仲良くなったんだけど。会ってすぐ音楽の話が合ったからね。聴いてる音楽の感想を話してたりすると、マーシーとかヒロト君の音楽の聴き方って、最大のリスナーっていう気がするね。
――最近の新しい音楽の話もしますか?
MR.PAN:するね、洋楽邦楽問わず。でもヒロト君は圧倒的にブルースが好きだね。この前も、「ロバート・ジョンソンのテイク違いというか、回転数違いがある」ってCD持ってきてくれて(笑)。「当時のピッチは絶対こうなんだけど、全然違うんだよ!」って、ヒロト君自らキーの違いの表を書いてきてくれたりして。まあマニアックな話やけどね。(笑)。
――マニアック過ぎますね(笑)。でも第一線でやってるミュージシャンの方がそこまで音楽ファンでいるのは凄いですね。
MR.PAN:本来そうでなければいけないと思うんだけどね。結構みんな、海でいうと“遠浅”なんだよね。遠浅でもええねんけど、“ここだけは物凄く深い、誰も近づかれへん”、みたいな奥深さは持っておきたいよね。そうすることで情報交換も出来るしね。俺とかマーシー、ヒロト君はマニアックすぎるんだけど(笑)。「○○のデモ・バージョンがある!知ってた!?」「なに~!?」とか(笑)。
――最近はあまりルーツがわからないバンドも多いですけど、ニートビーツははっきりわかりますね。
MR.PAN:昔は、例えばボ・ガンボスを聴いてボ・ディドリーを知るとか、RCを聴いてオーティス・レディングを知るとか、あったもんね。今はそういう文化じゃないのかなって、少し寂しい感じはするよね。
――アルバムの話に戻りますけど、最後の「SHY WOLF ON MARS」はインストでモンスターが叫んでるような不思議な曲ですね。
MR.PAN:これはね、僕が尊敬しているジョー・ミークという孤高のエンジニアがいて、その人の音楽のテーマは“宇宙”か“ジャングル”に決まってるんだけど(笑)、彼が作ったであろう感じの音楽を入れてみました。僕の中のメッセージとして。これを聴いて「あ!ジョー・ミークだ!」ってわかった人は相当僕と仲良くなれます(笑)。で、ジョー・ミークは自殺しちゃったんだけど、命日は2月3日なの。僕の誕生日が2月4日なんで、生まれ変わったのかなって(笑)。「60年代にこんな音を作ってたなんて!」って僕が感じたことを、この曲を聴いて感じてもらえたらな、と思ってます。
――アルバムのエンジニアは毎回このスタジオでMR.PANさんが自らやっていらっしゃるんですか?
MR.PAN:自分がやってます。他のバンドも、例えばOKAMOTO'Sも自分がやりました。レコーディングする時はある程度条件を出して、それで良いならやるよ、って言ってて。例えばミックスはモノラルでしかしないとか、楽器はスタジオの物を使ってくださいとか。OKAMOTO'Sもアンプとかドラムはこのスタジオの物を使ったし。あとはミックスは2回までしかしない、とか。それを面白がってくれる人たちとやってます。僕の理想のエンジニアリングは昔に倣っていて、今はレコーディングもミュージシャン主体で、間違えたら「もう一回やらせてください」とか言うけど、本来そんなことはミュージシャンの仕事じゃないんだよね。ビートルズはレコーディングしてすぐライヴに行ってたわけで。次に音を聴くときはいつかというと、レコードになった時だから。
――OKAMOTO'Sのような若いバンドがこのスタジオに来て録音してもらいたいっていうのは、そうしたMR.PANさんのこだわりに共感したからなんですね。
MR.PAN:うん、凄く嬉しかったね。来たときにどうしたいか聞いたら、「いや、お任せで」って言ってくれて。それは素晴らしいなって。だから直しもなかったからね。理想的な感じだし、お互い面白いくて良いかなって。
――今回のアルバムも全てモノラルで録音して、レコードでもリリースされるんですね。
MR.PAN:モノラルって基本的にスピーカー一個で聴いてるようなもんだから、ハンデがあるのよ(笑)。でもその中で音作りするというのは、自分に対する挑戦で。ステレオは右と左だけど、自分のやるモノラルは前と後ろのステレオだと思っていて。
――それは音の定位が、ということですか?
MR.PAN:そう、定位を前と後ろに作るというのが課題で、それはまだまだ研究の余地がありますけど。
――このアルバムにはキーボードの伊東ミキオさんも参加しているようですが、あまり派手にフューチャーされている感じではないですね?
MR.PAN:そう。ミキオ君は結構弾きすぎるんで(笑)。 「ミキオ君、あんまり弾かんでいい」って、逆に削ってもらった(笑)。
――では最後にアルバムについて改めて一言いただけますか?
MR.PAN:10年後にも聴ける作品を作っている自負はあるんで、「お願いします、聴いて下さい」っていうよりは「買っておいた方がええんちゃう?」って感じですね。本当に、買っておいた方がええんちゃうかなぁ(笑)。
取材・文●岡本貴之
『DANCE ROOM RACKET』
12月4日(水)発売
MSCD-063 ¥2,500(tax in)
01. TWISTIN' TIME WITH YOU (あいつとツイスト)
02. MAKE ME SHAKE (メイク・ミー・シェイク)
03. I LIVE TO LOVE YOU (アイ・リヴ・トゥー・ラヴ・ユー)
04. UNCHAIN MY HEART (僕は自由)
05. I KNOW A GIRL (アイ・ノウ・ア・ガール)
06. UNTIL THE VERY END (優しいままで)
07. DO YOU WANNA DANCE? (踊ろよベイビー)
08. THE GARAGE (ガレージで始まるぜ)
09. ROCKIN' ROBIN (ロッキン・ロビン)
10. MY BABE (マイ・ベイブ)
11. LONESOME TEARS IN MY EYES (ロンサム・ティアーズ・イン・マイ・アイズ)
12. YOUR JET (キミのジェット)
13. DON'T FORGET TO WRITE (ドント・フォーゲット・トゥー・ライト)
14. LONG TIME RIDIN' (長い旅路)
15. I WANT YOUR PITY (僕に哀れみを)
16. SHY WOLF ON MARS (火星の狼)
『DANCE ROOM RACKET』LP(帯/解説付き国内流通盤仕様)
SFR-053 / MSSFRLP-064 ¥3,000(tax in)
「収録曲」
side A
1. TWISTIN' TIME WITH YOU (あいつとツイスト)
2. MAKE ME SHAKE (メイク・ミー・シェイク)
3. I LIVE TO LOVE YOU (アイ・リヴ・トゥー・ラヴ・ユー)
4. UNCHAIN MY HEART (僕は自由)
5. I KNOW A GIRL (アイ・ノウ・ア・ガール)
6. UNTIL THE VERY END (優しいままで)
7. DO YOU WANNA DANCE? (踊ろよベイビー)
8. THE GARAGE (ガレージで始まるぜ)
side B
1. ROCKIN' ROBIN (ロッキン・ロビン)
2. MY BABE (マイ・ベイブ)
3. LONESOME TEARS IN MY EYES (ロンサム・ティアーズ・イン・マイ・アイズ)
4. YOUR JET (キミのジェット)
5. DON'T FORGET TO WRITE (ドント・フォーゲット・トゥー・ライト)
6. LONG TIME RIDIN' (長い旅路)
7. I WANT YOUR PITY (僕に哀れみを)
8. SHY WOLF ON MARS (火星の狼)
THE NEATBEATS 出演イベント放送決定
「ロッケンロー★サミット2013~渋谷頂上決戦~」
フジテレビNEXT
11月18日(月)25:00~27:00
◆THE NEATBEATS オフィシャルサイト
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