【インタビュー】KAGERO・白水悠「ハイスタだったりとか、先人たちが動かしてきたようにシーンを動かしたい」

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── 今年はそういうKAGEROの作品と対照的な、白水さんのソロ名義“I love you Alone”での1st『canvas』のリリースもありましたね。静と動がはっきり白水さんの中で分かれてるんだなと感じられる作品ですが。

白水:基本的に1人でいると、本当にひきこもりなんですよ(笑)。KAGEROでツアーに行っても、メンバーはその土地の美味しい物食べに行ったり、観光しに行ったりするんですけど、僕はずっと1人でホテルにいますから(笑)。

── それは曲を作りたい、とかではなく?

白水:1人でベッドの中にいるのが好きなんです(笑)。バンドがあるから外に出てるだけなんですよだから1人でいる時はI love you Aloneみたいな変な音楽ばっか作ってますね

── 完全にビジュアル・イメージからしてKAGEROとは全く違ってて、白水さんのパーソナルな部分が垣間見える感じですね。

白水:去年I love you Aloneを作り始めた頃から、僕が個人のアルバム用に作った曲をKAGERO用にアレンジするっていう作り方が一個の手段として出来ましたね。「ill」と「flower」っていう曲がそうなんですけど。あと今もう1曲つくってるのがあって、それを含んだ3部作がKAGEROで出来上がる感じかな。アローンは旋律が美しいものが生まれることが多くて。そういうKAGEROの曲の生まれ方が新しく出来ましたね。あと、今年は展覧会とか美術館にいく機会が凄く多くて。その刺激が強かったかもしれないですね。音楽をここまでやってきて、音楽でインスピレーションを受けるということはなかなか減っちゃって、正直。音楽以外からの刺激の方が大きいですね。

── それは以前だったら映画を見たりする中でインスピレーションを得ていたんですか?

白水:始めた頃は色んな音楽聴いて「ヤベェ!」って感じでしたけど、そこから小説や映画を見る事でイメージが膨らむようになって。今年はそういう現代アートから刺激を受けることが多かったです。

── ご自分で絵を描くようなこともあるんですか?

白水:絵は描けないけど、最近は映像をイジるのが好きで。「Brianstorm」のPVつくらせてもらったりとか。視覚に刺激を求めてたのかもしれないですね。映像は楽しいです。

── 今回のアメリカ・ツアーの様子も少し映像でわかりますけど、ライヴをおこなった4日間以外でアートやカルチャーに触れる機会はありましたか?

白水:滞在は10日間くらいしてたんですけど、向こうのメンバー達とひたすら飲んでただけですね(笑)。でもひとつ、なんだっけあの街?壁とか床に落書きしてある街。そこは凄かったですね。絵が凄くて。アメリカに行って一番思ったのが、芸術と市民の生活が密接なんですよね。ライヴハウスの入場料も5ドルとか高くても10ドルくらいなんですよ。一流のジャズとかもそれくらいの金額で見れたりするし。日本って、美術館とかもそうですけど構えて行くんですよね。

── 確かにそうですね。この日の何時にこの美術館に行く、っていう感じですもんね。

白水:そうそう。ライヴもそうだと思うんですよね。やっぱりチケット代も高いし。チケット2,500円にドリンク代に交通費に、飲んだりしたら5,000円とかかかるじゃないですか?やっぱり凄く高いですよね。それは凄く今回感じて。表現活動をする上でのアメリカとかヨーロッパのやり方というのは。

── 芸術に触れることへの敷居の低さというか。

白水:そうなんですよ。それは今後、KAGERO含めて僕個人としてのテーマかもしれないですね。KAGEROがいきなりチケット代めちゃくちゃ安くしますとかはいろんな大人の事情でできないかもしれないけど。ただ現代アートとか、そんなにかしこまって見るもんでもないと思うんですよね。

── 美術館に行っても、どうしても見た物に価値を見出さないともったいない気がしちゃいますからね(笑)

白水:そう。音楽にしても芸術にしてももっとフランクで良いと思うんですよね。それはチケットの値段を見てもそう思いますね。もちろん、そういうチケットの安いアメリカのライヴハウスに出てもそんな儲からないですよ。でもミュージシャンとしてそういう姿勢でいたいな、と思いますね。KAGEROも環境とか変わってきて、そういう姿勢とか意志が大事なんで。

── それは新ドラマーの萩原さんが加入してからの1年半でバンドが固まったのが大きいですか?

白水:次のステップへ行くことが早くなったかもしれない。毎月バンドの課題ってどんどん変わっていくし、1人ひとりの地力も上がってますし。誰かが上がれば誰かが置いて行かれるから、追い抜きっこですね。

── ライヴを見ると4人全員が全力疾走してる感じですけど、それがちゃんとまとまってるところが凄いですよね。

白水:そこは無秩序にならないようなバランス感覚が僕のキモで、表現として。そのへん意外と冷静なんです。(笑)

── バンド内で一番冷静じゃない、狂ってる人は誰でしょうか?サックスのRUPPAさんですか?

白水:どうなんだろ?Pianoの菊池(智恵子)かもしれないですね(笑)。久しぶりですからね、僕がコントロールしきれない人間って(笑)。でも本当に楽しいですよ。I love you Aloneにも菊池には全面的に参加してもらってて。アートの本質的な感覚が一番似てるのが菊池なんですよね。同じものを見て爆笑したり、これは無いな、と思ったり。趣味や行動は全く違うんですけど、感覚は一番近いかもしれないですね。

── それは演奏していてもそういう瞬間を感じるんですか?

白水:演奏のベクトルはみんな同じ方向を向いてると思うんですけど、ノイズ聴くのは僕と菊池だけかなあ(笑)。最近は僕の中で色んな特化したものをメンバーが持ってる感覚はありますね。ノイズとかカオスとか方面の菊池だとか、ハードコアな方向の萩原、メロディとかアドリブの方のRUPPAさんがいたり。本当に不思議なバンドですね。僕が中心に音楽を作ってるけど、だからって別に僕のバンドじゃないですからね。そこは楽器がベースで良かったなと思うんですよ。

── と、いいますと?

白水:ボーカルの人が曲も書いてるとすると、その人のバンドになることが多いじゃん?でもバンドの中でボーカルが目立つのがカッコイイのって、必ずしもドラムもカッコイイとイコールにはならないじゃないですか?

── そうですね。

白水:でも自分はベースだから、他の楽器がカッコよくないと自分もカッコよくならないんですよね(笑)。

── ああ、確かにそれはそうかもしれないですね(笑)

白水:だからバンドをカッコよくするしかないんですよ(笑)。

── そういえば、昨年はベスト・アルバムに収録された新曲「Pyro Hippo Ride」がiTunesジャズチャート1位を獲得しましたね。

白水:ありがとうございます。これって、リリース時にツイッターとかで「みんな買ってね!」とか一斉にやると瞬間的に1位になったりするらしいんですけど、僕らは先行配信されているのを把握してなくて(笑)。大して呼びかけとかもしてないのに1位になったのは嬉しかった。ランキングとかって全然気にしてない振りしてたんですけど、いざ1位になったら、凄く嬉しかったですね。「よっしゃ~!」って(笑)。

── ははははは!ここにもギャップが(笑)。

白水:タイアップとかにも興味なかったんですけど、(「FRISBY AND THE MAD DOG」が日本テレビ「NEWS ZERO」のプロ野球コーナーで使われた)これも事務所がプレゼンしたとか、バーターで契約したとか、そんなんじゃなくてただ気に入ってくれて勝手にやってくれてるみたいで。しかも3rdアルバムのマニアックなベストにも入ってない曲を(笑)。だからフェスとかもそうですよね。ごり押しで出るんじゃなくて、本当に主催の人達が心意気一発で呼んでくれてるんで、本当に周りに恵まれてるなと思いますね。

── こういうニュースがあるとバンドも盛り上がりますね。

白水:そうですね、バンドも周りも。初期からライヴに遊びに来てくれている人達に喜んでもらえて。昔からファンもライヴハウスとかも、本当に全然売れなかった頃を支えてくれた人達とかさ、KAGEROがもっともっとデカくなって、面白いことをやって、飲み屋で「いやぁ、白水に酒を教えたの僕なんだよ」って言えるようになるのが、唯一の恩返しかな、と思いますね。それぐらいしか出来ないですからね。
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