【インタビュー】KAGERO・白水悠「ハイスタだったりとか、先人たちが動かしてきたようにシーンを動かしたい」
4人組編成のインストゥルメンタルでありながら、その異様なほどの音圧とエッジの効いた演奏でライヴ・ハウス・シーンを席捲するKAGERO。彼らが9月におこなったアメリカ・ツアー用に制作したカバー・アルバム『Beast Meets West』が11月13日(水)にリリースされる。ピタっとKAGEROにハマる曲もあれば、とてつもなくはみ出したカバーもあるこのアルバムのことを中心に、リーダーでベーシストの白水悠に話を聴いた。
◆KAGERO アメリカでのライブ写真
── まず2012年のベストアルバム『KAGERO ZERO』リリース後の活動から振り返ってもらえますか?
白水悠(BASS・以下白水):とにかくライヴがめちゃくちゃ増えましたね。フェスとか他のバンドのレコ発に呼ばれることが多くなったりとか。あとは今年から定期的に下北沢シェルターで3マンのイベント「FUZZ'Em All」というのを始めたんですけど、heaven in her armsとかthe brown、UHNELLYSとかabout tessなんかが出てくれて。ドラムの萩原(朋学)が人と関わるのが好きなんで、そういうバンドとの繋がりが増えてきて。波長の合うバンドがジャンルを問わず増えましたね。前までは、“孤高”みたいなのがカッコイイなと思ってたんだけど(笑)。
── (笑)確かにKAGEROには孤高のイメージがありました。
白水:ツアーでもそうですけど、やっぱり色んなバンドと一緒にやることで、出来ない事ができるというか。例えば9月のアメリカ・ツアーにしても、THE RiCECOOKERSがいなかったらできなかったし。11月のツアー「三国同盟」も、Jake stone garageと六式がいたから出来る事ですし。
── 9月におこなわれたアメリカ・ツアーはどういうきっかけで実現したんでしょう?
白水:昔から海外でやりたいと思っていたのと、「インストだし海外でやった方が良いんじゃない?」って言われることも多くて。とはいえきっかけもなかなか無くて。そんな中で前から繋がっていたTHE RiCECOOKERSと一緒にツアーできるということになったんで。
── 4日連続ライヴということで、結構な強行軍だったんじゃないですか?
白水:行くことは前々から決まっていたんですけど、いかんせん僕は海外に行くのが初めてだったんで。初海外がツアーになるとは思わなかった(笑)。
── え!?そうだったんですか?意外ですね。1人でパッと海外に行っちゃうようなイメージでしたけど。
白水:いやいや、全然引きこもりなんで(笑)。他のメンバーは初めてじゃなかったんですけど、特に萩原はいつのまにか英語がペラペラになってて、「え~裏切られた!」と思って(笑)
── でもアメリカ・ツアーの映像が入った「Brianstorm」のPVでは白水さん自ら街頭でフライヤーを配る姿がありますよね?アグレッシヴだなぁ、と思ったんですけど(笑)。
白水:あれね~、初日がデラウェアっていう所だったんですけど、近くにデラウェア大学があって。向こうのコーディネーターの人とTHE RiCECOOKERSと一緒に、学生にビラを配ったんですけど。最初僕、全然配れなくて(笑)。あのPVは配れてるシーンを入れただけです(笑)。
── 海外でのライヴは日本とだいぶ違いましたか?
白水:うん、ライヴもやってる僕らはあんまり変わりはなくて、いつも日本でやってる通りにやってたんですけど、やっぱりお客さんのリアクションは面白かったですね。日本でも盛り上がる曲は向こうでも盛り上がるんですけど、日本はみんな周りの空気を読むというか、周りを見て盛り上がるというか。やっぱ僕自身もそうだしね。向こうは周りとか関係無く、“対個人”で、良ければいきなり暴れ出すし、それがすげー面白かったですね。
── KAGEROのライヴを拝見した時に、全員が爆発し続けてる印象だったんですが、お客さんの様子を冷静に感じ取る瞬間もあるんでしょうか?
白水:そんなに敏感に感じ取ってるわけじゃないかもしれないですけど、やっぱり見えますよね。日本でも人のバンドとかフェスとか、アウェイの状況にいる時の方が、やらかしてやろう、ぶっ壊してやろうみたいな気持ちは強いから、アメリカでそれは強かったかもしれないですね。あと自分達がサウンドが好きなバンドと対バンする時はアガりますね。「FUZZ'Em All」に出てるバンドとかにもそうだし、今年はそういう刺激を凄く受けてますね。
── 今回リリースされるアルバム『Beast Meets West』はアメリカ・ツアー用に作られたんでしょうか?
白水:カバーの良い所って、そのバンドの良さが意外と凝縮されることかなって思っていて、前から結構好きだったんですけど。アメリカでやることになった時に、KAGEROの曲なんてみんな知らないわけじゃないですか?だからアメリカで誰でもわかる曲を、まあその割にはUKものが多いんですけど(笑)、どの人種の人でも知ってるかな、という曲を選んで。個人的な趣向に走っても良かったんですけど、原曲を知らないカバーをやられてもどうせみんなわからないから(笑)。原曲が知られていて、カッコイイ曲たちを選んだつもりです。
── そうはいうものの、結構原曲をぶっ壊してる曲もありますよね(笑)。
白水:やっぱりそのままできないんですよね、KAGEROの楽器編成でやろうとすると。だからライヴでセットリストに組み込めるようなアレンジで。前に出した映画音楽のカバー・アルバム『SCREEN』は、あんまりライヴでやることを想定してなかったんですけど今回はライヴで出来るショート・チューンということで。
── この中からどんな曲をアメリカで演奏したんですか?
白水:「Brianstorm」(アークティック・モンキーズ)を中心にやってましたね。ほぼ毎日やってたかな。
── ダフト・パンクはやりませんでしたか?
白水:ダフト・パンクはやる前に自分が弦を切っちゃって出来なかったんですよ。(笑)
── ダフト・パンクの「One More Time」のカバーはほとんどオリジナルと言ってもいいんじゃないかと思うんですけど(笑)。
白水:ははははは!
── この選曲は面白いですね。
白水:メンバーとスタッフで決めたんですけど。KAGEROが何をやったら面白いかな?って言って。
── KAGEROがやるとハマる曲と、意外な曲とで分かれてる気がします。
白水:アレンジのアイデアが溜まってる時期だったんでしょうね。ちょうどこの時はハードコアのショート・チューンみたいのに刺激をもらうことが多くて。このアルバムは10曲で収録時間が26分しかないという(笑)。
── 最後のローリング・ストーンズのカバー「(I Can't Get No) Satisfaction」はどうしてこんなに短い(0分32秒)んですか?
白水:最後に激ショート・チューンが欲しいなと思って(笑)。
── 僕はまた、“このアルバムには満足してないぞ”、というメッセージを最後に込めたのかと。
白水:ははははは!すげぇ深読み(笑)!どっちかというと、今回の盤は個人的には頭の整理になったし、次のアルバムに向かっていくための良い盤になるだろうな、と作りながら思ってました。
── アルバムを聴いているとライヴに誘われる感じなんですけど、アルバムを作る上でライヴに足を運んでもらうことは常に意識してますか?
白水:1、2枚目の頃はライヴの為にアルバムを作ってる感じで一発録りしてたんですよ。それは生々しくはあるんだけど、結局ライヴの方が絶対いいじゃん、って思って。実際のライヴを越えられないなって。だから3枚目からスタジオ盤としての作り方というのは変えてきてはいるんですけど、その先にライヴがあるっていうのは変わらないでしょうね。
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