【インタビュー】サンボマスター、革新的な挑戦を随所に散りばめたニューアルバム『終わらないミラクルの予感アルバム』

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7枚目のアルバム『終わらないミラクルの予感アルバム』を10月9日にリリースするサンボマスター。メジャー・デビューして今年で10年という節目の年に相応しく、これまで培った王道のサンボマスター節だけでなく、大胆にEDMへアプローチしたアレンジが耳を惹く曲たちが随所にちりばめられた革新的なアルバムとなっている。ニュー・アルバム、3人の関係、そして福島、原発のこと。誰よりも音楽を愛するファンであることがわかる彼らの真っ直ぐな、そしてなにより常にユーモアを忘れないその姿勢は、10年間音楽シーンの第一線で活躍してきた自信と余裕を感じさせる。

■音楽や東北の状況など全部含めて
■本当に“ミラクルを起こしたい”って思った

――サンボマスターって一年中ツアーやフェスに明け暮れている気がするんですが、いったいいつの間にアルバムを作ってたんですか(笑)?

山口隆(Vo.Gt 以下・山口):いや~、本当、いつやってるんだって思いますよね(笑)。去年のツアーが終わった後くらいに、木内が「前と違う、もっと新しいことをやるべきだ」というようなことを言ったんです。僕はマニアックになっちゃうんで、木内は結構、第三者的な感じで「これだとわかりづらい」とか言ってくれるんですよ。だから木内がそう言ったってことは、そうなのかなって。

木内泰史(Dr.Cho以下・木内):なんかこう、“3ピースのロックバンド”という枠に、自分たちで括られすぎると音楽性に制限があるかなと思って。アレンジ面にもっと目を向けるべきじゃないかってずっと考えてたんですよ。

近藤洋一(Ba.Cho以下・近藤):そうですね。

――確かに今回のアルバムはアレンジ面でこれまでの作品との違いは明確ですね。

山口:今、ライヴとかフェスとかに来てくれている人たちが、「待ってました!」って思う音にしたいという気持ちがありました。今回は、いわゆる新しい音と、ビンテージ・サウンドの再生と、初期衝動の爆発っていう3つがアルバムにバランス良く、という風には考えていました。

――2曲目の「スローモーションラブ」、この曲が僕はこのアルバムで一番好きで。非常にドラマティックな曲で、今までにない新境地だと思うんですが、新しさを意識しましたか?

山口:ありがとうございます!。ディレクターも、近ちゃんも木内もこの曲を良いって言ってくれたんで、2曲目になりましたけどね。“新しい”感じをみんなが感じてくれたんじゃないですかね。

――なるほど。その他にも「愛したいし怖れないし急がない」のアレンジがダブステップで驚きました。

山口:まあ、ダブステップというか、今若者とか音楽好きたちが新しく始めてるものって凄く楽しいし、これをバンド・サウンドでやるということが、フェスとかライヴに来る人の、あるいは家で音楽を聴く人たちの空気と合致してる気がするんですよ。ジャンルとかをあんまり固執せずに、楽しいことをやって、そしてそれが一番新しい感じで出せたらいいな、と思ったんですよね。

――僕は1stアルバムの『新しき日本語ロックの道と光』を初めてCDショップで試聴した時に、「本当に“新しき日本語ロックの道と光”が出てきた!」っていう衝撃を受けて、久しぶりにロック・バンドに興奮した覚えがあるんです。そういう気持ちをこのアルバムを聴いてもう一回思い起こしました。

山口:えぇ!?マジすか!?いや~すいませんね、なんかもう…。

一同:わはははは!

木内:すいませんって、別にサービスで言ってもらってるわけじゃないんだからさ(笑)

――(笑)。いや、本当に良いアルバムですよ。

山口:ありがとうございます(笑)。いやでもね、今回本当に、他の方も随分ほめてくださるから、ありがたいなと思って。でもみなさん物凄く難しい言葉でほめてくださったから、半分くらいわからなかったんですよね(笑)!。「これはポスト・モダンだ」とか。「フ~ン」って、わかったふりしちゃったりして。

――「ポスト・ダブステップですね」とか?

山口:そうそう(笑)。難しいことはわからないですけど、とにかく自分たちは音楽が凄く好きだし、みんながワクワクするようなことが好きなんですよね。だから本当に“ミラクルを起こしたい”って思ったし、そのミラクルを起こしたいっていうのは、音楽でもそうだけど、相変わらず進まない東北の状況もそうだし、全部含めて音楽をやってみたいなと思ったんです。2曲目とかもバンド・サウンドにするというのが難しいんですよね。だから、必ず木内のドラムの生音が全部に入っているんです。例えば先程おっしゃった8曲目の「愛したいし怖れないし急がない」も、実はドラムは生なんですよ。

――あ、打ち込みだけじゃないんですね?

山口:逆にそうしないと、新しくならないんですよね。そういうジャンルを真似したみたいになっちゃうというか。今回は生音と混ぜて躍動感が出せたのが良かったです。

――打ち込みは以前から近藤さんが担当していらっしゃるんですか?

山口:打ち込みは近ちゃんが凄く詳しくて。僕がレコードを持ってきて、「これ何使ってんの?」って聞くと、「これは○○っていうのを使ってるんですけど、これをやるんだったら、こっちの方が良いです」とか、凄いんですよ。例えば「ヒューマン・ボイスっていう楽器があって、これは人の声がします」って持ってきて。またそれが良い音するんですよ。「ベースの音に、生とシンセのベースを足したいんだけど」っていうと、「シンセのベースはこれだけある」って見せてくれて、いちいちプレゼンがうまいんです(笑)。

――山口さんの漠然としたイメージを近藤さんが具現化してくれるんですね。

山口:そう、変換してくれる感じです、見事に。

近藤:楽しかったですよね、作業自体はね。

木内:すげぇ時間かかったけどね(笑)。

近藤:でも、危ないのが、すぐに「あ、これ聴いたことある」って音になるんですよ、やっぱり。だから生音を入れたというのもそれを突破するためだし、ちゃんと“自分たち”とか、“この世界”、というのを込めたサウンド・プロダクションに持っていくのに色んな工夫をしましたね。

山口:変にマニアックに見えないようにしようというのはありました。自分たちがあたかも高い偏差値でやってようには思ってほしくないというか…。まあでも、10年間やってると、誰もそうは思わないからいいか、という気もしますけど(笑)。聴いたら「あ、山口だ」って。そこは大丈夫だなって思います。

――確かに、パッと聴いたときに山口さんの声や、3人の演奏が耳に入ってくれば、「あ、サンボマスターだ」って思いますもんね。だから、今回のアルバムも最初一通り聴いたときにはそんなに変化は感じなかったんですよ。

山口:そうそう、全然それでいいんですよ。で、探っていくと、新しくなってることがわかれば良いわけで。まずはみんな、曲を聴いてアッパーになってくれたりっていうのが良いと思います。

――山口さんと近藤さんのマニアックな感じを、木内さんのポップなフィルターを通して世に送り出している感じなんですか?

近藤:たぶん木内は、曲を聴いてもったいないと思うことが多かったんじゃない?

木内:そう。だから「孤独とランデブー」のサビの(歌メロの裏で流れてる)フレーズとかあるじゃないですか?。ああいうのを考えたりとか。よりわかりやすいアレンジにしたいなってずっと思ってて。

近藤:良い曲なんだから、ある意味、王道のポップさで勝負しても良いんじゃないかって木内は思ってたんだよね。

◆インタビュー続きへ
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