くるり主催<京都音楽博覧会2013 IN 梅小路公園>大盛況。「個人的には1000年ぐらい続けたい」
京都出身のくるりが、地元で7年目の開催となる主催フェス<京都音楽博覧会2013 in梅小路公園>を開催した。
◆<京都音楽博覧会2013 IN 梅小路公園> 画像
京都市内で行なう音楽イベントということで、実施面でも音出しは19時をめどに終了するなど、演奏はもちろん、快適な空間を作り上げるよう配慮しながら行なわれているこのフェス。オフィシャルレポートをお届けしよう。
◆ ◆ ◆
■ 毎年恒例の開会宣言
恒例の着物姿で登場した岸田繁、佐藤征史、ファンファンが登場。天気予報を覆す晴天を喜びながらも熱中症やゲリラ豪雨への注意喚起を行い、先週の台風18号により被害を受けた京都に、東北からの参加も含め未だ1800人のボランティアが駆けつけてくれていることへ岸田が心からの感謝を述べる。「遠方から来ている人も思うんですけど、この連休は京都を元気にして帰ってください」とメッセージし、2013年の音博ならではの開会宣言となった。
■ マイア・ヒラサワ
「僕の大好きな歌手がスウェーデンのストックホルムからやってきてくれました」という岸田繁の紹介で登場したのは、2年ぶりの出演となるマイア・ヒラサワ。彼女がエレキを弾き、ベース、ドラム、キーボード、パーカッション/コーラスのバンド編成。軽快な曲調に自然と沸き上がるハンドクラップ。後半には「私と歌いたいと言われた時は超! うれしかった」と感激を表現、新作の日本盤でデュエットしている「The Ones」を岸田本人を迎えて披露。ラストはおなじみの「Boom!」をマイアもフロアタムを叩きながら歌い、大きな拍手に包まれた。
■ サンフジンズ
2番手は今年結成されたばかり?のサンフジンズ。奥田民生、岸田繁(くるり)、伊藤大地(SAKEROCK)の3人がトレードマークの白衣で登場、民生にいたっては手術帽まで着用する周到さだが、ふざけたネーミングといでたちもこの3人ならではの遊び心といった感で、乾いたアメリカンロックやオルタナティヴ・フォークなどのテイストを感じさせる、誕生したばかりなのにすでに名曲感を携えた楽曲を連発。民生がベース担当なのが見どころだが、岸田のコード感との相性も抜群だ。岸田がボーカルをとる「パン屋さん」、民生がアコギに持ち替えボーカルを担当する「右から左」など、シンプルなトリオ編成だが聽きどころは多い。<サンフジンズは医者じゃないんだ>などと脱力気味の歌詞を展開する(「サンフジンズのテーマ」)が、ユルいだけじゃない骨太で乾いた演奏にやんやの歓声が飛んだ。MCによるとこの演奏された5曲がオリジナルのすべてだそうで、ここに居合わせた人は幸運と言えるだろう。
■ 細野晴臣
すっかり音博の常連になった細野晴臣が、今回は高田蓮(ペダルスチール、G)、伊藤大地(Dr)に加え、日本のカントリー/ブル―スギター界の至宝・徳武弘文を迎えた豪華な編成で登場。ラグタイム感と細野のバリトンボイスが心地よい「I'M A FOOL TO CARE」に始まり、「こんな日にやる曲じゃないよね」と苦笑しながらトラフィックのカバー「HEAVEN IS IN YOUR MIND」を引き締まったプレイで披露。その後はくるりの佐藤征史を招き入れ、YMOの「Gradated Grey」をオリジナルとは180度違うアレンジでタフに聴かせてくれた。毎年「暑い。もう何やってるのかわかんない」とこぼしている細野だが、逆に演奏は年々アグレッシブになっている印象も。ラストはくるりのファンにもおなじみになった「ポンポン蒸気」を粋に決めて、充実の7曲を堪能させてくれた。
■ Villagers
久々の海外からの、それもバンドの登場が会場に新たな刺激を送り込んでいる。アイルランド・ダブリン出身のマイク・オブライエン率いるVillagersはUKインディー/アイルランドチャートで1位も獲得している実力派。伸びやかで腰もあるマイクの歌声を支えるタフでイマジネーション豊かなバンドサウンドは、明らかに異国の風を吹かせていた。ニューアルバム『アウェイランド』からの曲中心にプレイしていくのだが、トラディショナルな趣きのあるコナーのメロディに先鋭的なビートや透明感溢れるシンセ、幽玄なコーラスが彩りを加えると、無二のサウンドスケープが広がる。「We are Villagers,オコシヤス!」と覚えたての京言葉も交えて笑顔を増やしながら、曲ごとに初見のオーディエンスを吸引していく様は壮観だった。
■ 奥田民生
第1声「お願いしまーす!」とともにグレッチ・ホワイトファルコンをザクザクと刻みながらハードな哀感を歌う「荒野を行く」、アコギにも持ち替えての「それはなにかとたずねたら」と、ブルージィな楽曲が続く。やおらリズムボックスからスローなビートが流れだしたと思ったら、MCが終わると同時にビートも止めるというセンス良すぎな演出が(歌うためのビートではなかったというワケだ)。歌うとは何か? なぜ自分は曲を作るのか? そんなレパートリーが続いた後、ニューシングル「風は西から」を強烈な西日に向かって歌うその姿が、彼には珍しくストレートに前向きなメッセージをよりリアルに響かせる。大きくなる歓声とハンドクラップとシンクロするように「さすらい」では「京都!」と絶叫したり、歌詞をオーディエンスに歌わせる場面も。ラストの「マシマロ」ではギターソロも冴えまくり、エンディングとともに汽笛が鳴るというミラクルにも大歓声が起こった。
■ RIP SLYME
DJ FUMIYAのスクラッチ一発で疲れた身体に再びスイッチが入った感じの会場。抜群のマイクリレーと抜群のファンクネスが今年っぽい「FUNKASTIC」でライブがスタート。2曲目には新曲「ジャングルフィーバー」がラテンな熱気を増幅し、終わりゆく夏を惜しむようだ。RYO-Zが楽屋に岸田繁の父上から生八ツ橋の差し入れがあった旨を述べると一斉に起こる笑い。「京都音博初出演なんですが、初めて見る方、楽しみ方は『自由に踊れ』ってことです。知らない曲でも知ったフリしとけってことです!」とオーディエンスをグッと掴むと、ヒット曲「楽園ベイベー」「熱帯夜」などで会場中がステップを踏み、ラストの「JOINT」ではカラフルなタオル回しが発生。音博初のヒップホップ・アクトはさすがのパフォーマンスでイベントに弾みをつけてくれた。
■ くるり
ようやく陽が傾いてきた17:30、大トリのくるりがクラシカルなジャケットに蝶ネクタイといったいでたちで登場。メンバーはBOBO(Dr)、高田漣(ペダルスチール)、権藤知彦(ユーフォニアム)、鈴木政人(Key)というフルラインナップだ。「グッドモーニング」ではファンファンのトランペットと権藤のユーフォニアムが呼吸するように空間を彩り、高田のペダルスチールが涼しくなってきたフィールドを心地よく流れていく。少し久しぶりのナンバーが続いたあとは、岸田が音博始まって初めて遅刻してしまったと告白。なんでもiPhoneのOSをアップデートしていたらアラームが鳴らず、画面を見ると「ようこそ、新しい世界へ」という表示があったというオチも。人気曲「ばらの花」を挟み、岸田の弾くアコギをはじめ、極上のバンドアンサンブルで進化した印象の「ARMY」も満杯のファンを唸らせていた。
充実した表情の岸田から「毎回、くるりのライブの記憶はないんです。でも、今年はやってて一番楽しくて、あと少しですけど、最後まで楽しんで帰ってください」と感謝を述べ、すでに高い人気を誇りこの秋、メジャーデビュー15周年記念シングルとして10月23日にCDリリースが決定している「Remember me」が慈しむように演奏された。
すっかり夜の色合いに会場が染まる頃には「ロックンロールハネムーン」「WORLD'S END SUPERNOVA」というくるり流ダンスタイムへ突入。特に「WORLD'S END SUPERNOV」のグルーヴとアンサンブルの心地よさは過去最強かもしれない。再びMCで京都の駅から近く住宅も隣接するこの公園で7年もイベントを続けてこれたことを公園関係者やお隣の水族館のイルカにも!感謝の言葉として述べて、「個人的には1000年ぐらい続けたい」の一言に拍手が起こった。
そして本編ラストはそんな思いも込められた「奇跡」で締めくくった。名残惜しそうなステージ上とフィールドの気持ちが呼応して、そのままアンコールの「宿はなし」で約7時間半に及んだ7回目の<京都音楽博覧会>は幕を閉じた。
text by 石角友香
photo by 久保憲司
【<京都音楽博覧会2013>セットリスト】
マイア・ヒラサワ
1.It doesn't stop
2.We Got it
3.太陽
4.Lights are out
5.The Ones(w/岸田繁)
6.Boom
サンフジンズ
1.パン屋さん
2.右から左
3.じょじょ
4.ふりまいて
5.サンフジンズのテーマ
細野晴臣
1.I'M A FOOL TO CARE
2.LAZYBONES
3.HEAVEN IS IN YOUR MIND
4.Gradated Grey(Bass・佐藤征史)
5.傑作を描くとき(Bass・佐藤征史)
6.BodySnatchers(Bass・佐藤征史)
7.POM POM
Villagers
1.Becoming a Jackal
2.Nothing Arrived
3.The Bell
4.The Waves
5.Judgement Call
6.Earthly Pleasure
7.Ship of Promises
奥田民生
1.荒野を行く
2.それはなにかとたずねたら
3.たったった
4.ひとりカンタビレのテーマ
5.風は西から
6.さすらい
7.マシマロ
RIP SLYME
1.FUNKASTIC
2.ジャングルフィーバー
3.AH yeah
4.楽園ベイベー
5.熱帯夜
6.JOINT
くるり
1.キャメル
2.グッドモーニング
3.さよならリグレット
4.ばらの花
5.ARMY
6.TIME
7.Remember me
8.ロックンロールハネムーン
9.WORLD'S END SUPERNOVA
10.奇跡
EN.宿はなし
◆BARKSライブレポート
◆くるり オフィシャルサイト
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