【インタビュー】DJ PMX、ジャパニーズ・ウェッサイ・シーンを切りとる映像集『LocoHAMA CRUISING DVD MIX III』

ポスト
USウエスト・コースト・ヒップホップの洗礼を受けた日本のシーンのパイオニアとして数多くプロデュースを手がけてきたDJ PMX。DS455のメンバーとして、あるいはソロとしても活躍する彼の最新作は、ミックスDVD+CD2枚組『LocoHAMA CRUISING DVD MIX III』。自身の関連曲をはじめAK-69やOZROSAURUS、TWO-JからDJ☆GOやJOYSTICKKらまで新旧楽曲のPVをミックスした本作は、まさにジャパニーズ・ウェッサイ・シーンの一端を切りとる映像集だ。

■曲だけだとわからないアーティストのファッションなんかを楽しんでもらって、気に入ったアーティストの音源を買ってみてほしいね

――DVDミックスも数えてシリーズ第3弾ですね。

DJ PMX:元々同名の洋楽・邦楽のミックスCD2枚組シリーズをやってて、その邦楽の映像版としてミックスした作品です。ウエスト・コースト・ヒップホップの影響を受けた人たちのPVでも最近クオリティの高い映像を作る人が増えてきた。今回は80分ぐらいあるんですが、過去3作で一番長いものになりました。

――今回もご自身の新曲を一曲収めたCDとの2枚組となりました。

DJ PMX:ミックスDVDにシングルをつけるっていうよりは、シングルに壮大なミックスDVDがついてるっていう発想もありかなっていう。

――その新曲「Groovin' Party Night feat.Kayzabro,HOKT,G.CUE」の曲のアイディアを聞かせてください。

DJ PMX:これまでのリードは若手フック・アップをかねてのアーティストを多用したんですが、今回は初期に戻って上の世代のアーティストばかりを使おうと。みんな大人になってるんで、歌詞の内容もストリート感というよりはアーバンな大人のパーティの曲にしました。

――トラックのゆったりとしたグルーヴは、まさにそうしたムードですね。

DJ PMX:ヒップホップ以外にもいろんな音楽を聴いてるんですが、新しいサウンドというよりは、'90年代ぐらいのサウンドをベースにしたものがやっぱり好きなんだなって確認して。それで最近のダフトパンクみたいな70年代テイストなファンクを聴いたり、'80年代流行ったシャカタクのライヴをちょっと前に観に行ったりしたら、ヴォコーダー使ってたりしてて。そこら辺に影響されて今回はヴォコーダー使って自分で歌って、ファンク的なアプローチを増やしました。

――そうした背景もうかがえる作りかと。ミックス全体の制作に過去作との違いはありましたか?

DJ PMX:若干機材もヴァージョンアップして、前は試行錯誤しながらで時間もかかってたけど、今回は3回目なんでだいぶこなれた感じで、イメージしたものに限りなく近くなったかな。時間かからなくなった分、エフェクトかけたりいろんなことができるようになったし、全体の作業もスムーズに行ったって感じですね。

――全体の選曲はどのように進めたんですか?

DJ PMX:自分の好きなメロウ感を中心としたものなんですが、リード曲がPV作品になりがちなところで熱く派手な曲も多いから、そこを考えてバランスを取った。あとは各地のラッパーだったり、自分の曲を多めに入れたり、今まで使ってなかった曲とか。こんだけ毎回曲使うと前に使ったの忘れて使いそうになる時もありますが、そこは確認しながら、ベストなものを作るつもりで進めてます。

――ミックスについてはどうですか? クラブのDJプレイとは違うミックスDVDならではのポイントなどもあるかと思うんですが。

DJ PMX:洋楽をクラブでミックスする時は(曲の)テンポを極端に上げたりすることもあるんですが、PVのミックスの場合だとBPMは全く変えず、カットインのタイミングだけでSEも使ってつないでいく。そこら辺がクラブのDJとは全然違うかなと思います。それぞれ内容も全然違うPVをつなげていくので、どの道つながりにくい部分も出てくるので、ミックスCDを作る感覚で曲と曲のつながりだけを重視しましたね。

――ミックスの流れとしてはどんなものが作れたと?

DJ PMX:最初の方はアーティストがつながっていく感じを重視したんですが、あとはテンポ感が近いものを並べて、自分のイメージに近づけていきました。曲のケツの方でディレイをかけて飛ばしながら次に行くとか、普通クラブプレイでやらないようなミックスをすることによって映像も変わっていくようにしたんで、派手に変わっていくカット・インも見せられたかな。

――音源にしてもそうですが、機材やバジェットの違いで映像も質感一つからバラつきが出ますよね。その分、どうつないでいくかで印象も変わってくるわけで。

DJ PMX:今回で言えば「SUMMER PARADISE~Risin' To Tha Sun~(feat.青山テルマ)」(DS455)はだいぶ前の映像で、あの頃はフィルム使ってたのかな? よく覚えてないけど、今はデジタルですごくキレイに録ってるから、差も結構出てくるかなっていうのはありますね。

――その時代からするとシーンのすそ野も広がったし、大げさにいえば映像一つにも時代の変遷を感じます。

DJ PMX:その時代時代がわかるというか。毎回毎回作っててやっぱりこの地域が人気あるなとか思うし、今だと名古屋や岐阜のラッパーが熱くなってるって感じはします。あとは若手も増えてきてるのでPV監督も若くて、センスでカッコいいPVを作ってきてるのが新鮮ですね。最近だと普通のカメラとパソコンのソフトさえあれば誰でも作れちゃう部分があるんで、センスがいい人ならかっこいいのが簡単に撮れちゃう。

――今回DVDの最後に収録された「ヨコハマシカ feat.OZROSAURUS」(サイプレス上野とロベルト吉野)は、いわばその新鮮な部分を今回のミックスで担う曲ですよね。彼らはPMXさんと同じ横浜の2人組ですが、厳密に言えばウェスト・コーストの枠の外のアーティストだし。

DJ PMX:そういえばサイプレス上野とは今まで曲やってなかったなって。実際どうなるかわかんないけど、(2人は)こっから変わってくのかもなっていうのを感じたし、曲自体も後半トークボックスが出てきたりウェッサイの要素も入ってるメロウでいい曲だし。このシリーズも3作目で次を考えても、いろんなことにチャレンジしていくものが欲しいっていうところで入れましたね。

――なるほど。では改めて今回の『LocoHAMA CRUISING DVD MIX III』とシリーズ全体について一言いただけますか?

DJ PMX:このシリーズはもちろん続けていくし、映像だから曲だけだとわからないアーティストのファッションだったりいろんなものがわかりやすく出てる。それを楽しんでもらって、気に入ったアーティストの音源を買ってみて欲しいと思います。

――今回の作品を離れて、ウェッサイヒップホップのシーンで今後どういう活動を見せていきたいですか?

DJ PMX:世代によって見せ方の違いがある。若い世代のストリートの感覚とは違うものをやっていこうと思ってるし、その違いが面白いかなと思うから、そういう大人の余裕を見て欲しい。DS(455)については、新しいことやるかって一瞬思ったこともあったけど、やっぱり'90年代デスロウ黄金時代のサウンドを変えないのがDS。機材や時代が変わっていく中で音のニュアンスを変えないようにそこへ近づける難しさはあるけど、自分のソロはウエスト・コースト・ヒップホップっていうベースがブレないかぎり、新しいこともやっていこうと思う。プロブレムとかタイガしかり、実際ニュー・ウエストって言われる最近の新しい流れは今までのウェストコーストのトラックの流れと違いすぎるけど、DJマスタードの作る曲とかにしてもかっこいいなと思うから、ソロや人の曲でやってみたいですね。

取材・文●一ノ木裕之


『LocoHAMA CRUISING DVD MIX III』
9月18日(水)発売
VIZL-588 \3,150(tax in)
CD
01. Groovin’ Party Night feat. Kayzabro, HOKT, G. CUE / DJ PMX (新曲)
DVD
01. INTRO
02. Cruising feat. GIPPER, GAYA-K, JOYSTICKK, mai / DJ PMX
03. My Beauty Queen feat. JOYSTICKK, KOWICHI, ZANG HAOZI, JAY’ED / DJ PMX
04. 何をGET -REMIX- feat. Kayzabro (DS455), DJ TY-KOH, AKASHINGO / enmaku
05. SUMMER PARADISE ~Risin’ To Tha Sun~ feat. 青山テルマ/ DS455
06. Myself... feat. 大地 / MUROZO
07. SLEEPIN’ MAD DOGG / DAZZLE 4 LIFE
08. BAYSIDE CRUISIN' feat. RICHEE (GHETTO INC.) & DS455 / BIG RON
09.異次元ポケット / OZROSAURUS
10. BUBBLE feat. DJ☆GO / G. CUE
11. DREAM ON DREAM feat. AK-69 / KJI
12. GIRLICIOUS feat. DJ☆GO / 詩音
13. GIFT / EXTRIDE
14. Rollin’ My 63 / HOKT
15. PUBLIC ENEMY / AK-69
16. Krazie Klub feat AK-69 / JOYSTICKK
17. My Angel feat. Kayzabro (DS455), GAYA-K, BIG RON, 詩音 / DJ☆GO
18. I sing for you feat. ERIKA & CROVER / TERRY
19. MEMoRIES feat. MoNa / Mr. Low-D
20. 夢の途中 feat. ARIA, DESTINO / EL LATINO
21. Sparkling Drive feat. DJ☆GO / HI-D
22. SUMMER GROOVE feat. MK THE CiGAR / MoNa a.k.a SAD GIRL
23. Miss Luxury (P.V. Version) feat. MACCHO (OZROSAURUS), GIPPER, KOZ, HI-D,Foxxi misQ / DJ PMX
24. Alright Alright feat. DAZZLE 4 LIFE / HI-D
25. BOYZ N DA HOOD / TWO-J
26. 渚 / S.T.M
27. Summer Breeze feat. Kayzabro (DS455), mai / DJ☆GO
28. HELL YEAH!! / N.C.B.B
29. ヨコハマシカ feat. OZROSAURUS / サイプレス上野とロベルト吉野

◆DJ PMX オフィシャルサイト
◆ビクターエンタテインメント
この記事をポスト

この記事の関連情報