【インタビュー】やなわらばーの歌を聴くとなぜ涙が出るのか。カバーアルバム『涙唄』から紐解く

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◆私たちの場合は流行りとか関係ない、“いい歌”を歌っていきたいと思ってます。
カバーでもオリジナルでも。(東里)


──そんなやなわらばーも、デビューして今年で10周年を迎えるんですよね。

東里:はい。でもデビューしてからも大変でした(苦笑)。

石垣:基礎がないまま東京に出てきてデビューしたので苦労しました。今もですけどね。

東里:途中でもうダメかなと思って、辞めて石垣に帰ろうかなと思ったこともありました。

石垣:でも、これまでこんな私たちを支えてきてくれた人たちにまだ恩返しできてないので。だから、このチャンスは絶対につかみたい。これまで応援してきてくれた方に“恩返し”をしたいんです。

──自分たちが有名になりたいんじゃなくて?

石垣:はい。恩返しが先。だって、こんなヘタクソでハチャメチャな私たちを“いつか売れる”と信じて支えてきてくれた人たちがいるわけですから。それでもずっと信じてくれる人がいるので、「よかったね。ここまで支えてきて、信じてきてよかったよ」と言ってもらえるようになりたいんです。

──なるほど。では、やなわらばーの音楽で人を癒したいという信念を持つようになったきっかけは?

東里:私自身、音楽で心が癒され救われてきたので、自分の音楽でそういことができたらなんて素敵なんだろうと思ったからです。そのためにも私たちの場合は流行りとか関係ない、“いい歌”を歌っていきたいと思ってます。カバーでもオリジナルでも。

石垣:歌詞の内容も含めて。やなわらばーでカバーしたことで「曲は知ってたけどこの歌はこういうことを歌ってたんだと初めて知りました」とか、みなさんによく言われるので、そういう意味でも歌のメロディーと歌詞が聴いてる人の心の中に届くいい歌を作っていきたい。

──今回リリースされるカバー・アルバム『涙唄』は全10曲“いい歌”が詰まってました。

東里:今回は初のJ-POPカバー集で、私たちがよく聴いてた曲であったり自然にほろっとなる曲を選んで私たちなりにカバーして。今回はJ-POPなので三線もほとんど。

石垣:入ってないですね。

東里:その分、歌の力。沖縄節とハーモニー、ちょっと南国の香りがするアレンジだったりで自分たちらしさを出し、やなわらばーのJ-POPを作りました。

──番組でも歌ってた「ワダツミの木」は本当に号泣。後半のフェイクパートとか、聴いていて震えました。

東里:ロックですよね。竜が昇っていくイメージでやりました。あそこは私も好きです。

石垣:魂を吹き込んで歌いましたね。

東里:コーラスは節回しも全部合わせて入れました。

──「やさしいキスをして」も驚いんたんですよ。

東里:エイサーという沖縄太鼓が出てきたり。歌詞も、前作の「でもね」といういけない恋を描いたシングルでその辺の扉が開いたので。

石垣:今回はそこをこの曲でチャレンジしてみました。やなわらばーが歌うといけない恋の歌もやさしく感じると言ってもらえたので。

東里:「やさしいキスをして」は健気な女の人寄りの歌に聴こえるんじゃないかな。

──やってみて大変だったのは?

東里:「雪の華」のコーラスですね。“はっ、はっ”っていう雪がしんしんと降るイメージの声とかバックは全部コーラスで表現しました。石垣に雪は降らないので、これは雪のイメージも分かってきた今だからこそ歌えた歌ですね。

石垣:私は「蕾」。回数を歌わないと決めて歌ったんで、ものすごい集中力を使いました。

◆歌は押しつけないようにというのは心がけてます。
みなさんが入ってこれるように隙間を作ってる。(東里)


──このカバーアルバム、けしてオシャレなサウンドではないと思うんですね。

石垣:私たちにオシャレなのはダメなんです。

東里:本当に似合わないんです。どこかに土臭さが入らないと。

──サウンドも原曲と違えば、歌も沖縄節が入って独特なんですよ。ちなみに、こういう節回しはどうやって入れていくんですか?

石垣:細かくフルでまず入れてみて、そのあとみんなで聴きながらここを抜いてとかここは入れてというやりとりを何度もして。だから、節回しだけでも何回も作業を繰り返して完成形を決める感じです。

──結果、やなわらばーの色の濃さが出たカバーに仕上がっていて、本当に聴いてて泣けてくるんですよ、このアルバム。なんで泣けてきちゃうのか、改めてやなわらばーの音楽のマジックを探ってみようと思うんですが。

東里:歌は押しつけないようにというのは心がけてます。みなさんが入ってこれるように隙間を作ってる。

石垣:うん、そこ大事かもしれないですね。“泣いて、泣いて”っていうふうには歌ってないので。昔は歌に入り込んで歌ってたんです。すると「歌い上げてるな〜」ってお客さんがちょっと引いてしまったことがあって、歌う人と聴く人の間に距離ができてしまったんです。だから、今は入り込まないで、聴いてくださる方が“自分のために歌ってくれてるんだ”って思えるように、聴く人の心にすっと届くように歌ってますね。

東里:今回のアルバムではそれができた気がします。

石垣:あと、私たちのアルバムは歌がメインで作られてるんですね。全体的な曲のアレンジで作ってるんじゃなく、2人のヴォーカルを邪魔しないサウンド。そういうやり方で毎回作ってるので。そういうのもあって、聴く人の耳元に常に歌、言葉が聴こえてくるからというのもあると思います。

──なるほど。このアルバムを出した後は久々のツアーもありますが。

東里:ライブの歌はまたCDとは違うものがあって。私たち、ゆったりとしたイメージを持たれてると思うんですが、動いて歌う曲もあるので(笑)。初めての方でも私たちのライブは気構えず、気軽な感じで来てもらえれば楽しめると思うので、ぜひ気軽に来てください。このアルバムも日常のなかで気軽にね?

石垣:その人の生活の一部として、ちょっと心が寂しいなと思ったときに聴いたりして欲しいです。

──ライブで泣いちゃってもいいんですか?

東里:みんなの場所なので、自由にしてもらって。泣いてる人を見たら“ああ、やっとここで泣けたんだ”って勝手な想像を巡らせて、こっちまで泣きそうになるんですけど、そういうときは涙をこらえて歌ってます。

石垣:もらい泣きして歌えなくなったら歌詞が途切れてお客さんが入り込めなくなるから、私たちは必死に我慢して歌うので、みなさんは思う存分泣いてください。

インタビュー&文●東條祥恵

Cover Album
『涙唄(なだうた)』
2013年9月4日発売
CRCP-40348 ¥2,500(税込)
1.人魚
2.みんな空の下
3.ワダツミの木
4.雪の華
5.M
6.部屋とYシャツと私
7.木蘭の涙
8.やさしいキスをして
9.蕾
10.たしかなこと

<『涙唄』インストアイベント>
9月4日(水) ダイバーシティ東京プラザ 4Fエンタメスペース(東京)
18:00~
特別ゲスト:具志堅用高
9月7日(土) プレ葉ウォーク浜北 1Fプレ葉コート(静岡)
9月8日(日) イオン佐野新都心 1F セントラルコート(栃木)
9月16日(月) イオンモール岡崎 1Fセントラルコート(愛知)
9月21日(土) モラージュ菖蒲 1F滝のコート(埼玉)
9月22日(日) 小田原ダイナシティ ウエスト1Fキャニオンステージ(神奈川)
9月28日(土) 西宮ガーデンズ 4階スカイガーデン・木の葉のステージ(兵庫)

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