【アルバム詳細レビュー】マキシマム ザ ホルモン、5thフルアルバム『予襲復讐』がとんでもないので特別授業開講
マキシマム ザ ホルモンが7月31日、40万枚以上を売り上げたアルバム『ぶっ生き返す』から6年ぶりとなる待望のニューアルバムをリリースする。タイトルは『予襲復讐』だ。予習復習ではなく、予“襲”であり復“讐”と記したところにマキシマムザ亮君の意図が感じられる。さらに、アルバムリリース発表当時に公開されたアーティスト写真はコンビニ前でたむろする学生服姿のメンバーが中坊を感じさせるものだった。
マキシマム ザ ホルモンをひとつの側面で分析するのは難しい。『予襲復讐』に触れてみたならば、その激しくも楽しい、しかし哀愁と怒りに満ちた多重構造サウンドに多くの共感とロマンを感じつつも、彼らへの謎をますます深めていくことだろう。それほどまでにこのアルバムは深く重い。ロック史上最大級の衝撃作には意外にもこんな事実が隠されている……という特別授業を、マキシマム ザ ホルモンを古くからよく知るライター氏が開講、アルバムをあらゆる側面から解説する。
◆『予襲復讐』予告動画
■<朝の会──「自らの腸を掴み“これどう?”と差し出されたような感覚」>■
素手で自らの腸を掴み“これどう?”と差し出されたような聴後感を覚えた。もちろん、差し出してきた主は、すべての作詞作曲を手掛けるマキシマムザ亮君である。約6年ぶりになるマキシマム ザ ホルモンの5thフルアルバム『予襲復讐』が、とんでもない内容になっている! これまでと聴き応えが、まるで違う。外側から刺激してくるのではなく、内側からエグられるようなヘヴィネスが渦巻いている。
今回のアルバム名、アーティスト写真の学生服姿を見ての通り、ニュー・アルバムのテーマは、ずばり“中学”である。ということで、それにちなんで授業形式で今作をひも解いていきたい。
■<1時限──国語「世界を見渡しても亮君しかいない」>■
さあ、1時間目の授業は国語です。ここでは歌詞について触れたい。リリック面では、亮君が中学時代に慣れ親しんできた漫画やゲーム、異性との距離感や思春期の行き場のない悶々とした感情が綴られた言葉が目に付く。5曲目「中2 ザ ビーム」というどストレートなネーミングセンスにも“中学感”がコンパクトにまとめられているが、特に9曲目「アンビリーバボー!~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~」はブッ飛んでいる。曲の副題は中学時代にやっていた、忘れたくても忘れることができないゲームのパスワードである。実際に聴いても感じることだが、この言葉を自分で口にしてみると、なんとも気持ちいいっ! ゲーム音楽のピコピコ要素をラウドな音像に混ぜ込んで“ニンテンドーコア”と呼ばれるHORSE THE BANDというバンドが海外にいるが、ゲームのパスワードを歌詞に使用するのは、世界を見渡しても亮君しかいないだろう。
■<2時限──理科「エモーショナル度を増幅した実験性」>■
2時間目の授業は理科です。そう、実験性という切り口で見ていきたい。今回のオープニングを飾る表題曲は、かなりの衝撃を受けるだろう。切ないギターのアルペジオからナヲのウィスパーボイスで幕を開け、かつてないほど静ひつなイントロに度肝を抜かれる。それから亮君の言霊ラップが炸裂し、音楽面もそうだが、精神面のヘヴィネスが激しくスパークしている。このディープかつダークな怒りは、今作の精神的支柱になっている。
また、続く2曲目「鬱くしきOP~月の爆撃機~」にザ・ブルーハーツの楽曲を差し込み、3曲目「鬱くしき人々のうた」へと繋ぐ流れも今までになかった試みだ。より楽曲の世界観が深まると同時に、エモーショナル度は増幅されている。他のアーティストの楽曲を丸ごとカバーするのはよくあるケース(過去にホルモンもブルーハーツを丸ごとカバーしている)だが、歌詞とメロディの一部を引用して、自分たちのオリジナル曲に接続するアプローチは斬新だ。なお、サウンド的には「アンビリーバボー!~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~」序盤のアダルトなアプローチはこれまでなかったものなので注目を。
■<3時限──社会「根底に剥き出しのパンク魂が透けてみえる」>■
3時間目の授業は社会です。ここでは歴史、つまりマキシマム ザ ホルモンの過去を振り返りつつ、今作の特徴を掘り下げていきたい。彼らはヘヴィでラウドなもの、ポップでパンクな楽曲をその都度バランスをよく作品に収めてきた。前アルバム『ぶっ生き返す』以降、シングル「爪爪爪/「F」」、「グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011~2011」を経て、「世間的にラウド系バンドのイメージが強くなってきた」と亮君もこぼしている。これは過去の作品の曲解説で本人が語っていることだが、「ホルモンの基本は3コードパンク」なのだ。個人的にも、どれだけ精密に作られた複雑な楽曲構造でも、根底に剥き出しのパンク魂が透けてみえると感じている。シンプルな手法でどれだけインパクトを与えられるか。あるいは、聴き手の固定概念をひっくり返すことができるか。その意志は歌詞のチョイス、言葉の発語感に対する異常なこだわりっぷりにもうかがえる。
そして「え・い・り・あ・ん」だ。従来のセオリーからハミ出した意表突きまくりの曲展開もある意味パンクである。さらにアルバムには「ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~」という楽曲まで収録された。こういう直球のパンクを聴くと、ホルモンはブレてないなぁと妙に安心してしまう。アルバム全体に関していえば、今作は青春パンク系の歌い回しやコーラスワークも耳につき、セピア色の懐かしい香りも随所に感じるのは僕だけだろうか。
■<4時限──保健体育「夢見心地のロマンチックな楽曲ムード」>■
4時間目の保健体育の授業です。これが一番やっかいかもしれない。中学マインドを刺激する楽曲が多いなか、保健というちょっぴりスケベ観点から言えば「my girl」もそうだし……でも極めつけはアルバムの最後を飾る「恋のスペルマ」だろう。そのものズバリ“スペルマ”である。歌詞には詳しく触れないが、こうした題材に極上のメロディを乗せ、鼻歌でフンフン歌いたくなるポップな曲調に仕上げる辺りは、もはやお家芸と言えるかもしれない。夢見心地のロマンチックな楽曲ムードも素晴らしい! 余談だが、この曲でSPACE COMBINEの某曲のベース・フレーズが織り込まれていたところもニヤッとさせられた。
■<給食──腹ペコ諸君に『予襲復讐』予告動画を配給>■
■<帰りの会──総括「泣けるほどグッとくる作品である」>■
アルバムの“予襲”として、あえて全曲に触れることはしていないが、総括すれば過去最高にヘヴィでパンクでポップでディープに振り切れた音源であることは間違いない。最後に告白めいたことを言うが、このアルバムは泣けるほどグッとくる作品である。ぜひ真正面から亮君の腸をキャッチしてほしい。
■<補習──腹ペコ諸君へ再び、表題曲「予襲復讐」ミュージックビデオを配給>■
構成◎BARKS 文◎荒金良介
5thフルアルバム「予襲復讐」
2013年7月31日発売
VPCC-81770 定価¥2,889(ツバ吐き価格)
1: 予襲復讐
2: 鬱くしきOP~月の爆撃機~
3: 鬱くしき人々のうた
4: 便所サンダルダンス
5: 中2 ザ ビーム
6: 「F」
7: 爪爪爪
8: ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~
9: アンビリーバボー!
~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~
10: え・い・り・あ・ん
11: my girl
12: メス豚のケツにビンタ(キックも)
13: ビューティー殺シアム
14: maximum the hormone
15: 恋のスペルマ
※全15曲収録
※配信・レンタル全面禁止作品
※全156ページ 「予襲復讐」解説本付き特別パッケージ仕様
※マンガ5作品収録(脚本/製作総指揮 マキシマムザ亮君)
※マキシマムザ亮君による対談式全15曲楽曲解説収録
<マキシマム ザ ホルモン“予襲復讐”ツアー>
2013年09月29日(日)東京・八王子Match Vox
2013年10月13日(日)福島・郡山CLUB #9
2013年10月14日(月・祝)山形・酒田MUSIC FACTORY
2013年10月16日(水)岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
2013年10月18日(金)青森・青森Quarter
2013年10月20日(日)秋田・秋田Club SWINDLE
2013年10月21日(月)宮城・仙台Rensa
2013年10月30日(水)北海道・HEART BEAT CAFE
2013年11月01日(金)北海道・旭川CASINO DRIVE
2013年11月03日(日・祝)北海道 帯広MEGA STONE
2013年11月05日(火)北海道・Zepp Sapporo
2013年11月07日(木)北海道・函館club COCOA
2013年11月14日(木)福井・響のホール
2013年11月15日(金)富山・富山MAIRO
2013年11月17日(日)石川・金沢EIGHT HALL
2013年11月19日(火)新潟・新潟LOTS
2013年11月21日(木)長野・長野CLUB JUNK BOX
2013年11月27日(水)群馬・高崎club FLEEZ
2013年11月28日(木)埼玉・熊谷HEAVEN'S ROCK VJ-1
2013年11月30日(土)千葉・柏PALOOZA
2013年12月02日(月)神奈川・川崎CLUB CITTA'
2013年12月03日(火)東京・新木場STUDIO COAST
2013年12月05日(木)山梨・甲府KAZOO HALL
2013年12月07日(土)栃木・HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
2013年12月08日(日)茨城・水戸ライトハウス
2013年12月15日(日)山口・周南TIKI-TA
2013年12月17日(火)鳥取・米子AZTiC laughs
2013年12月19日(木)島根・出雲APOLLO
2013年12月21日(土)広島・広島BLUE LIVE
2013年12月22日(日)岡山・岡山CRAZY MAMA KINGDOM
2014年01月11日(土)兵庫・神戸WYNTERLAND
2014年01月13日(月)和歌山・和歌山CLUB GATE
2014年01月15日(水)大阪・Zepp Namba
2014年01月17日(金)京都・KBSホール
2014年01月18日(土)滋賀・滋賀U☆STONE
2014年01月20日(月)奈良・奈良NEVER LAND
2014年01月27日(月)三重・松阪M'AXA
2014年01月29日(水)岐阜・岐阜club-G
2014年01月30日(木)愛知・名古屋DIAMOND HALL
2014年02月01日(土)静岡・SOUND SHOWER ark
2014年02月07日(金)愛媛・松山市総合コミュニティセンター
2014年02月09日(日)高知・高知CARAVAN SARY
2014年02月11日(火)徳島・徳島club GRINDHOUSE
2014年02月12日(水)香川・高松オリーブホール
2014年02月20日(木)大分・T.O.P.S Bitts HALL
2014年02月22日(土)宮崎・宮崎WEATHER KING
2014年02月23日(日)鹿児島・鹿児島CAPARVO HALL
2014年02月25日(火)熊本・熊本Django
2014年02月26日(水)佐賀・佐賀GEILS
2014年02月28日(金)福岡・Zepp Fukuoka
2014年03月02日(日)長崎・NCC&スタジオ
2014年03月24日(月)大阪・なんばHatch
2014年03月26日(水)愛知・Zepp Nagoya
2014年03月28日(金)東京・Zepp Tokyo
2014年04月05日(土)沖縄・沖縄ミュージックタウン音市場
◆マキシマム ザ ホルモン オフィシャルサイト
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