【インタビュー】吉川友、2ndアルバム『Two YOU』と真摯に向き合い、語る

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吉川友が2枚目のオリジナルアルバム『Two YOU』を4月24日にリリースした。生粋の“あのキャラクター”により、いろんな意味でファジィに見られがちなきっかだが、今作には、彼女が「こんな曲が歌いたい!」と、オファーした楽曲も収録。吉川友のアーティスト的自我の萌芽も感じられる作品となった。

今回のインタビューでは、そんなアルバムについて、なんと1曲ずつ本人がじっくり解説してくれた。しかも笑いもほとんどなければ、都合の悪いことやよくわからないことに対してお得意の「そんな感じー!」を使った逃げもなし(ゆえに、張り詰めた空気の中で、悲壮感を漂わせて「助けて……」と、インタビュー中につぶやくこと2回)。

あの吉川友が、ただただ真摯に自分の作品と向き合い語ったインタビュー。これはある意味、衝撃かつ貴重である。

  ◆  ◆  ◆

── 2ndアルバム『Two YOU』を作る上で、どんな作品を目指しましたか?

吉川友(以下、吉川):前作を超えるものを作らなきゃなぁというのは頭にありました。でも、制作時期がちょうど舞台と重なっていたので、かなり切羽詰まった感じだったんですよ。公演が終わってすぐスタジオに移動して、すぐ録って。

── 今回は一曲ずつじっくり制作秘話を聞かせてもらおうと思うので、まずは一曲目の「ドラマチック」から聞いていきたいと思いますが、曲を歌う前はどうやって世界観をつかんで行くんですか?

吉川:この曲はSmileRさん(人気ボカロP。4枚目のシングル「ここから始まるんだ!」からきっか作品に携わっている)の曲なので、デモが初音ミクの声だったんですよ。その声で覚えているから、歌い方もそっちに寄ってしまうんですよ。アニメチックっていうか。歌詞の世界観的には「ブランコ」とか「メロディー」とか「ふわふわ」とか可愛い感じの言葉がこの曲には多かったので、可愛い雰囲気になったらなぁと思いましたね。

── 全体的に可愛い恋愛模様が描かれている曲だけど、自分で比べてどうです?

吉川:こんなにドラマチックなことはないですよね(笑)。

── 自分の中にあまりないものを自分のものにするにはどうするの?

吉川:そこらへんは自然にやっているので深く考えず、あまり意識しないですね。でもこの曲にはラップっぽいところがあるじゃないですか。そっちのほうが難しかったです。「♪So Baby,I want you~」のところが英語なので、それが大変だったんですよね。英語の歌詞が苦手なので。あとラップをすることがないから恥ずかしかった。

── 「ダーリンとマドンナ」は2012年9月リリースのシングルですね。これをレコーディングした頃と、今の自分、進化は感じますか?

吉川:どうかな? 今回、レコーディングが久々だったということもあって、なかなかメロディーが入らなかったりしたんですよ。難しい曲ばかりだったということもあるかもしれないけど。だから、進化したかどうかはわからないですね。

── 続いて「ずっとずっとずっと君がスキだ」は、軽快なロックチューンですけど、似合いますね。

吉川:これ、私も大好きなんですよ。「ずっと」を連呼するところは歌ってて気持ちがいいですね。作ってくれたのはサカノウエヨースケさんなんですけど、初めて聞いたときはサカノウエさんっぽい曲だなぁと思いましたね。デモがサノウエさんの声で入ってるんですけど、それもすごくかっこ良かったですよ。

── サカノウエくんは、シンガーソングライターだもんね。歌詞は一途な女のコを描いてますけど、自分でイメージしたのはどんな子ですか?

吉川:自分ですね。基本は全部きっかです。この曲には「スリーポイントシュート」とか出てくるんですけど、きっかもバスケをやってたので、この感じの雰囲気もなんとなくわかります。共感もしながら歌いましたね。

── きっかはこの子みたいに一途だと思う?

吉川:どうなんですかね(笑)。基本、何事にも飽きっぽいんで、そんな感じなんじゃないですかね。

── 曲調的にはロックでしょ? エレクトロポップチューンみたいなのが多いけど、ロック的要素はきっかの中にありますか?

吉川:ロック……かはわからないですけど、最近、実は洋楽を聴くようになったんですよ。ケイティ・ペリーとテイラー・スウィフト。だいたいどっちかを聞いてますね。友達がテイラー・スウィフトをカラオケで歌ってたんですけど、テレビで流れてて聞き覚えがあったから、いいなぁと思ったのがきっかけで。それまではアイドルかK-POPしか聞かなかったのに。

── じゃあ、これまでにない要素、これまで聴いていた音楽よりもロックに近い要素は、最近、自分の中に入って来たものだったんだね。

吉川:そうなんです。洋楽を聞くことも増えたから、英語の歌詞っていうのも入ってくるようになって。だから、こういうロックな曲が自分でも歌えて嬉しかったし、コンサートではファンの子と一緒に歌いたいですよね。「ずっとずっと」ってたくさんあるから、そこはファンの方と一緒にコール&レスポンスで。「君がスキだ」って歌詞も、ファンの方に誓ってもらえるように。ファンの方の言葉で、きっかに言ってもらいたいなって。

── すごくたくさんの思いがこもってるんですね。

吉川:これからコンサートに向けて、アルバムの曲を覚えなきゃならないっていうのもあるけど、何回も聞くうちにさらにこもってきますよね。

── 次の「恋愛遠慕」もロックチューンですね。和テイストもあるけど。

吉川:これ、大好きなんです。きっかがリクエストして出来た曲なんですよ。和ロックをやりたくて。いろんな方が和ロックに挑戦してますけど、私なりの和ロックっていうのを歌ってみたいなと。だから、曲が完成したときは自分の想像通りだったのですごく嬉しくて。実際に歌ってみたら難しかったですけどね。激しい曲調だから、体力も喉も使うし、表現力も必要ですしね。特にサビが難しかった。

── ちょっとツンデレも感じるラブソングですね。

吉川:なんかいいですよね。例えばLINEを既読にしちゃうかどうするか……みたいな(笑)。見てるって思われたくないから、ちょっと放っておくって感じっていうか。私はこういうのは無理です。思った事もすぐに全部言っちゃうし。でも、こういう風に素直に出来ない女の子もいると思うから、そういう子に対して「頑張って!」って気持ちで歌いました。

── 「遠慕」って造語ですよね。

吉川:そうなんです。調べても出てこないんです。だから、きっかだけのものなんですよね。四文字熟語で漢字だけなのも和な感じですよね。サウンドも琴みたいな音が入ってたり、和楽器の音がするし、歌詞を見たときにも「ひらり」とか「募っていく」っていうのも和っぽいなぁって。すごくサウンドに合ってますよね。

── ロックチューンが続いたあとにミディアム調の「世界中に君は一人だけ」ですね。この曲はシングルでもあって。

吉川:はい。「世界中に君は一人だけ」は難しいんですよね。最新シングルなので、歌う機会もあるので、歌うたびに難しさを感じる曲です。「♪まるでガラスみたい 私の心」っていう比喩とか、すごく好きなんですけどね。きっかみたいで。

── 繊細なんですね(笑)。

吉川:疑ってますね……。私、ガラスなんですよ。影響もされやすいし、傷つきやすいんです。そういうところを人には見せたくないんですけど。

── なるほど。最初の「I Love You」の台詞もコンサートやイベントでちゃんと言えています?

吉川:「ラヴ」の「ヴ」にどうしても力が入っちゃって……。

── そこは吐息でお願いします(笑)。きっかの繊細さを出す部分ですよ。

吉川:そうなんですよね。もうちょっと大人になって歌ったら、もっと味が出てくるのかもしれない曲ですよね。
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