【ライヴレポート】摩天楼オペラ、“音楽から生まれる人間の生命力を表現する”ツアー初日公演@新宿LOFT

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フロア中から沸き起こる歌声が、新宿LOFTを熱く揺さぶり、そして命の波動を迸らせた。昨年10月より“喝采と激情のグロリア”なるテーマを掲げ、“合唱”をキーワードに一連のリリース&ライブ活動を行ってきた摩天楼オペラ。期間中3度目のツアーとなる<GLORIA TOUR sceneIII>は、本テーマにおける“音楽から生まれる人間の生命力を表現する”という目標を、4月24日の初日公演から完璧に叶えてみせた。何よりハッとさせられたのが、その圧倒的な演奏スキルはもちろん、楽曲とバンドが纏う艶やかな風情。それが場内をドラマティックなストーリーで満たして、観る者の胸を祝福と感動で震わせてくれたのだ。

◆摩天楼オペラ~拡大画像~

栄光を謳った「GLORIA」、そこに到るまでの苦悩と葛藤を描いた「Innovational Symphonia」という2枚のシングルを経て、テーマの集大成ともいえるアルバム『喝采と激情のグロリア』を今年3月にリリース。それを引っ提げて全国14箇所を回る本ツアーは、3度にわたり行われた<GLORIA TOUR>の中でも最大規模のものであり、各都市とも比較的小規模なライヴハウスが選ばれているのが特徴だ。初日の新宿LOFTにせよ550というキャパシティは、彼らの動員力に対しては小さすぎるものであり、当然、当日のフロアは完全ソールドアウトのスシ詰め状態。壮大でスケールの大きい楽曲が多く、過去のインタビューでも“大きい会場で鳴っているのが想像できる曲を描いてきた”(Anzi)と語っていただけに、天井の低い小ぶりな空間で摩天楼オペラがどう魅せるのか?という点に懸念もあったが、そんな心配はまったく無用だった。

過去2回の<GLORIA TOUR>と同じく、荘厳なオーバーチュアがライヴの幕を切って落とすと、“飛ばしていくぞ!”との苑の号令に応え、フロア一面からメロイックサインと拳があがり、サビ前から歌声が沸いて大合唱を形作ってゆく。さらに構造上、死角の多い会場であることを考慮して、ギターのAnziとベースの燿は可能なかぎりステージ前方に迫り出して煽動。メンバーのパッショネイトなプレイが客席とゼロ距離から鳴り響き、オーディエンスの歌声と重なり合って、頭から熱い“生”のパワーを迸らせてゆく様は、間違いなく小会場だからこその効果だ。「前回の初日を超えたぜ、LOFT!」と苑が歓喜するのも無理はない。

また、“喝采と激情のグロリア”の名のもとに発表されたアルバムと2枚のシングルを軸にしたセットリストが、繰り出される楽曲の流れに統一感を与え、ライヴ自体をより引き締まったものにしていたのも特筆すべき点。そこで痛感させられたのが、摩天楼オペラというバンドが持つ“官能的”とも呼べる独特の空気感だ。テクニカルなソロで観客のテンションを上げ、「RUSH!」では頭の裏でギターを弾いてみせるAnzi。鍵盤前の立ち姿も華やかに、豊かな音色を奏でて楽曲面でも巧みに色を添える彩雨。得意のツーバスで高揚感を掻き立て、中盤、渾身のドラムソロで熱狂の渦を呼ぶ悠。そこからのセッションでライトハンドも交えつつ、“オイ!オイ!”と声を出して勇ましく斬り込んでゆく燿。極めつけに苑は、艶めくヴォーカルとセクシーな視線で会場の隅々まで魅了して、「最近、壇蜜さんに似てるって言われます」というMCすらも納得させてしまった。シンフォニックなへヴィメタルを基軸にしたメニューを具現化する完成度の高いパフォーマンスは、聴覚のみならず視覚をも十二分に刺激して、得も言われぬ色香を場内に振り撒いてゆく。ステージからの距離が近いぶん、それは高い濃度でフロアを満たし、性別年齢を問わずオーディエンスの心を鷲掴み。「もっと混ざって来いよ!」と苑に煽られた後方の男性客が、女性の黄色い声に負けじと野太い声でメンバーの名を絶叫する様は、一種の快感すら呼び起こしてくれた。

「メンバーみんな叫ぶ気満々だぞ!」(苑)ということで、この日は5人全員分のマイクが用意されており、後半戦ではステージからのシャウトやパワーコーラスも炸裂。当然、オーディエンスも負けじと、アルバム随一のメタル曲でありながらキャッチーなメロディが際立つ「SWORD」、場内が一斉にジャンプする定番曲「ANOMIE」と、大合唱を巻き起こして鼓膜を揺らす。そこに漲る“生きる力”こそ、今回のテーマでバンドが求めていたものにほかならない。

「なぜ自分は生きているんだろう? なぜ地球って存在してるんだろう? そんな疑問も遠い未来には解明されているかもしれない。そのときまで残したい曲であり、そのためにも今、バンドとして大きくならなきゃいけないっていう覚悟も詰まった曲です」(苑)

“命”に焦点を置いたアルバム、そしてツアーだけに、そんな言葉を前置かれたバラード「永遠のブルー」からのクライマックスは、神聖なまでの感動で聴く者の胸を濡らしてくれた。静謐な楽曲の中に秘められたエモーションから弾ける光、そして――。その結末は会場で、ぜひ貴方自身の目で確かめてほしい。

ちなみに、この日はドラムの悠がスマホのゲームアプリ“ひたすら寿司”で世界1位を獲得したとのことで、「いつか世界ツアーをやりたいね」とのコメントも飛び出した。その野望の第一歩となるのが、6月8日に<GLORIA TOUR-GRAND FIALE->として行われるZepp Tokyoワンマンであろう。バンド史上最大キャパシティで行われる公演は、苑が「僕たちが経験した過去から、未来への希望までを描いた人生の物語」と語る“喝采と激情のグロリア”の終着点であり、彼らが踏み出す新たなるステージへの第一歩である。密室空間で得た熱い生命力を糧に、そこで摩天楼オペラ特有のスケール感が最大限に発揮され、祝福に満ちた光景が繰り広げられるだろうことに、疑問を挟む余地はない。

取材・文●清水素子
撮影●寒川大輔

<GLORIA TOUR -scene III->
5/8(水) 金沢 vanvan V4
5/9(木) 新潟 RIVERST
5/12(日) 札幌 KRAPS HALL
5/14(火) 盛岡 CLUB CHANGE WAVE
5/15(水) 仙台 MACANA
5/23(木) 岡山 IMAGE
5/24(金) 広島 NAMIKI JUNCTION
5/26(日) 福岡 DRUM Be-1
5/29(水) 松山 SALON KITTY
5/31(金) 神戸 VARIT
6/1(土) 京都 MOJO
<GLORIA TOUR -GRAND FINALE->
6/8(土) 東京 Zepp Tokyo

◆チケット詳細&購入ページ
◆摩天楼オペラ 『喝采と激情のグロリア』スペシャル・サイト
◆摩天楼オペラ オフィシャルサイト
◆摩天楼オペラ キングレコード レーベルサイト
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