【インタビュー】木村大「いろいろなジャンルのギタープレイを演奏して“クラシックギタリスト”というよりも“ギタリスト木村大”になれた」

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■オリジナル曲は伝説的な作品に仲間入りしたいっていう意欲作
■どのくらい自分の曲がリスナーの心に残るかという挑戦です

──曲順に関して言えば、英国三大ギタリストのジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックが並んで収録されているところがいいですね。

木村:きれいにね(笑)。曲順のそういう裏設定はありましたよ。それに「BECK'S BOLERO」はジミー・ペイジがベックに書いた曲じゃないですか。でね、最初にこの曲をコピーしたとき、ボレロ=水戸黄門か?と思ったのね。途中でウルトラマンが出てきたりもする曲だし、これはやっぱりヒーローの曲だなって思いました(笑)。

──アレンジの方法は、一度コピーして、コード感とメロディ、リズムの相性をチェックしつつ、自分で消化したものを演奏していくという感じですか?

木村:そう。なるべくカバーというカタチにとらわれないように。自分のプレイとして曲として、ということは意識しました。

──クラシックを演奏するときの方法論と異なる発見もあったと思うのですが?

木村:まずクラシックの場合はイントロやアウトロ、AメロとかBメロっていう呼び方をしないんですよ。わかりやすく言うと、基本的には形式だったり、組曲になってたりするんです。そこのなかにダンスや歌があったりの組み合わせで。ひとつのテーマをどんどん発展させていくっていう。

──場面場面で切り替わっていくような?

木村:その切り替わりが激しいので、ポップスと比較するとメロディが覚えづらいんです。よほどクラシック音楽に対する教養だったり、自分の間口を広げて、知りたいっていう欲求がないと、なかなかすべてを把握するのが難しい。そういう意味では今回改めて、ポピュラー音楽の良さは何度も反復させることだと思いました。

──サビの繰り返しだったり、Aメロ→Bメロ→サビという構成の繰り返しだったり、ギターのリフレインだったりが、キャッチーでポップな要素となっているという?

木村:まさにリフレインの力ですね。バッキングひとつ、リフひとつとっても、グッと持っていくという、その強さがある。最近のクラシックギターのシーンでも、ジャズやロックなテイストがどんどん入ってきているのが現状で。だから今回、楽曲の良さも手伝ってくれて、アレンジをすることでギターの可能性をすごく知ることもできました。

──アルバムのエンディングとオープニングには、木村さんのオリジナル曲が1曲ずつ収録されています。曲順も含めて、この2曲にはどのような想いが?

木村:実は、自分のオリジナル曲をすごく重要視していて。名曲たちがズラッと並んだなかに入れることによって、僕のオリジナルがどの位置にあるのかを客観的に知りたかった。それに、リスナーが木村大のオリジナル曲だということを知らないで聴いたとしたら、どのくらい自分の曲が心に残るか、それはひとつの挑戦で。だから、本当に良い曲を書こうと頑張りましたよ、やっぱり(笑)。オリジナル曲は、伝説的な作品に少しでも仲間入りしたいっていう意欲作であり、好奇心が勝ってこういう並びにしようと。

──「Ayers Rock」は、オープニングにふさわしい始まりを感じさせるナンバーです。

木村:3年前のアルバムリリースのときくらいにできていた曲で、早く発表したくてしょうがなかったんですよ。テーマはオーガニックな作品。土地の匂いというか、大陸感というか。エアーズ・ロックって宇宙へ続くと言われていたりしますよね。宇宙から俯瞰して地球を見るとか、逆に大地から空を眺めるとか。そういった多面的なエネルギーの源であったり本質的な部分から、今回のアルバムが始まるのは非常に良いことだなって。だから、ナチュラルで飾りっ気がないけど、良い音を響かせた曲ですよね。ま、タイトルからして“ロック”だし、アルバムの始まりとしての、僕のオリジナルのロックかな(笑)。

──それに対して、最後の締めとなるのが「earth」。とにかくいろいろな要素が詰め込まれた8分49秒のロングスケールなナンバーですが?

木村:これはもう僕がやりたいことをやるっていう。でね、まず今回のアルバムは過去の作品以上に、ギターやピックアップマイクのセレクトから録り方まで、すべてにこだわっているんです。

──3本のギターを使用したそうですね。

木村:トリビュートする曲の雰囲気に合った、良い音で録るというサウンド面がすごく重要で。プレイ面で「earth」は、過去の伝説的な名曲たちをアレンジしてレコーディングするということを総括した曲でもあるんです。いろいろな試みを1曲で全部出し切った僕の集大成。だからアルバムの最後に持ってきたという。

──3月から開催される<DAI KIMURA GUITAR RECITAL“HERO”>も、木村さんのいろいろな側面が見られそうですね?

木村:コンサートホールがメインになってくるので、クラシック好きのお客さんも、このアルバムを聴いてくれたロック好きのお客さんも満足してもらえるような内容にしたいですね。だから二部構成で臨もうと。まぁ、結局は弾きまくることになると思うんですけどね(笑)。特に『HERO』の曲を演奏する第二部は。

──『HERO』を制作したことによって、木村さん自身の新たな展望も見えましたか?

木村:本当のギタリストになれたと思っているんです。僕自身のギタリストとしてのルーツはクラシックですが、このアルバムを制作したことで、アコースティック、フラメンコ、ボサノバ、ブルース、ポップス、そしてロックと、いろいろなジャンルのギタープレイを演奏して、“クラシックギタリスト”というよりも“ギタリスト木村大”になれたというか。ひとりのアーティストとして、ギタリストとして、30代で一歩踏み出した、ひとつの追求のカタチなのかな。僕のなかでは“新生”ですね。自分のやりたい方向性をしっかり示すことのできた一枚になったので、これからもどんどん幅を広げていきたいと思いました。

取材・文●梶原靖夫

『HERO』
2013年3月21日発売
KICS-1898 \3,045(tax in)
1.Ayers Rock (木村 大)
2.SPANISH FLY (VAN HALEN)
3.PURPLE HAZE (JIMI HENDRIX)
4.FRAGILE (STING)
5.DEE (RANDY RHOADS[OZZY OSBOURNE])
6.INSPIRATION (GIPSY KINGS)
7.LOVIN'YOU (MINNIE RIPERTON)
8.BRON-YR-AUR (LED ZEPPELIN)
9.CHANGE THE WORLD (ERIC CLAPTON)
10.BECK'S BOLERO (JEFF BECK)
11.THE SAGE (EMERSON,LAKE & PALMER)
12.earth (木村 大)

<木村大ギターリサイタル“HERO">
3月22日(金)京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ
[問]otonowa 075-252-8255
4月20日(土)北海道・旭川/アーリータイムズ
[問]アーリータイムズ 0166-22-2461
4月21日(日)北海道/札幌コンサートホールKitara小ホール
[問]オフィス・ワン(平日 10:30~18:00/土日・祝は休業日) 011-612-8696
5月18日(土)茨城・水戸/B2(ビーセカンド)
[問]ビーセカンド 029-291-4282
5月26日(日)東京/東京文化会館小ホール
[問]東京音協(平日 10:00~17:30/土日・祝は休業日) 03-5774-3030

<『HERO』発売記念イベント>
4月28日(日)トレッサ横浜 南棟1Fイベント広場
http://www.tressa-yokohama.jp/
14:00~
[問]キングレコードイベント係 TEL:03-3945-2192(平日10:30~18:00)
6月8日(土)タワーレコード新宿店10F クラシックフロア内イベントスペース
16:00~
[問]タワーレコード新宿店 TEL:03-5360-7811

<購入者限定イベント>
6月4日(火)銀座山野楽器本店7FイベントスペースJamSpot
http://www.yamano-music.co.jp/
18:30(OPEN) 19:00(START)
[問]山野楽器イベント係 TEL:03-3861-8775

<沖 仁 コンサートスタイル・フラメンコギター Vol.2>
~スペシャル・ゲスト:木村 大を迎えて~
出演:沖 仁(フラメンコギター)、木村 大(クラシックギター)6月7日(金)東京/ヤマハホール
[問]ヤマハ銀座ビルインフォメーション TEL:03-3572-3171(11:00~19:30/第2火曜定休)
詳細:http://www.yamaha.co.jp/yamahaginza/

◆木村大 オフィシャルサイト
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