【ライブレポート】石月努、嗚咽混じりの歌声をむせぶように熱唱
2012年夏に音楽活動を再開した元FANATIC◇CRISISの石月努が、1月27日渋谷公会堂を舞台にソロとして初となるワンマン・ライブ<TSUTOMU ISHIZUKI the FIRST LIVE 2013~遠い日の約束~たとえ、鬼が笑っても~>を開催した。演奏メンバーに野村義男(G)/桜村眞(G)/仁村学(B)/LEVIN(Dr)を迎えてのライブとなったその日の模様を、ここにお伝えしよう。
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この日のライブも、止まっていた時計の針が動き出す映像からスタート。きっと彼は、歌を通して想いを伝えていたあの頃の自分に立ち返り、途絶えていた歌のレールを繋ぎ直したうえで、改めて車輪を左回転させたかったのかも知れない。だから、<何事も自分次第>と歌った「GAME」や、「新たに生まれよう」と声を投げかけた「DROP」を冒頭で唄いながら、みずからの決意を宣言。前へ進むための意志表示を、渋谷公会堂に足を運んだ満員の観客たちへと示したのだろう。
これまでに石月努は、「365の奇跡」「I.S./銀の雨。」と2枚のシングル、『DROP』と題した1枚のミニ・アルバムを発売、それらを合わせても全部で10曲にしかならない。でもそこへは、「唄うべき理由」が。明確な"想い"を詰め込んだ歌ばかりが並べられている。
心地好い緊張を持って聞き手の胸を、身体を昂らせた「I.S.」を通したスリリングな演奏。今にもむせび泣きそうなくらいに、嘆きの表情で歌いあげた「銀の雨。」。冬の季節にピッタリなバラード歌「ララバイ」では、込み上げる気持ちをグッこらえながら唄いあげてゆく姿も。
アコギとのセッション・コーナーでは、切々とした哀愁味漂わせた「秋桜」や、剥き出しの激しい感情のもとアグレッシブなセッションを繰り広げた「ブラッボックス」を演奏。さらには、FANATIC◇CRISIS時代の楽曲も披露。<すべては友のために きっと明日は来るから>(「すべての友のためにきっと明日はくるから」)と歌い、客席と心をひとつに繋げれば、<君よあるがままに 君であればいいぜ>と歌いかけた「LIFE」では、誰もが目頭を熱くしながら、その想いに、嬉しい心の握手を交わしていた。他にも、「火の鳥」や「ONE-you are the one-」も登場。今の彼の心境や伝えたい想いにリンクする歌たちを選び、唄い、届けてくれたのもファンには嬉しいこと。客席には、涙を流しながら、それらの歌に熱狂する人たちも多かった。出来ることなら、これからもFANATIC◇CRISISとして作りあげた語り継ぐべき名曲の数々を、石月努として唄い紡ぎ続けて欲しい。それが、心に残る歌を産み出した人が生涯背負うべき使命だと僕は思っている。
もちろん彼は、ノスタルジーに浸るような男ではない。身体を嬉しく、激しく揺さぶってゆくファンキーなディスコロック・ナンバー「DANCE DANCE DANCE」を通し、場内を熱狂渦巻くパーティ空間へ導けば、ロックンロールなビートが炸裂した「青ノ翼」を通し、満員の観客たちと熱狂の中へと巻き込んでいった。
何よりも心を揺さぶられたのが、本編最後に届けた「勇気」の演奏だった。彼の身近に居る、自分で意志を発することの出来ない15歳の少年。彼が見たいと望んでいる、"争いのない心の平等を願う美しい世界"を、石月努が想像のもと代弁した「勇気」は、「石月努が歌う理由をとても明瞭に現した」楽曲だ。
何度も想い詰まるあまり、涙が目頭を濡らし、歌えなくなっていた。それでも彼は、必死に想いを届けようと嗚咽混じりの歌声を咽ぶように上げていた。心の叫びが胸を痛く揺さぶった瞬間、もっともっと石月努の産み出す"心の言葉(音楽)"に触れたいと、素直に思っている自分がいた。
ソロ活動を始めるきっかけとなった「365の奇跡」を通した、温もりを持った温かい心模様。明るく開放的に弾けたロックンロール・チューン「LOVELESS」では、みんなが心ひとつに熱狂しながら<I LOVE YOU 愛>と大合唱。この「LOVELESS」を聞きながら、じつは昔から彼の"伝えたい/届けたい芯となる想い"は何も変わってないことを再確認。そう、臭いくらいに実直な想いを堂々と真正面からぶつけてゆく姿勢こそが、石月努の心のスタイルなんだと。
「ようやくデザイナー石附努とアーティストの石月努がひとつになれた」とMCで語っていたように、1月27日の渋谷公会堂のステージを持って、石月努は、正式に(デザイナー活動と並行しながら)「生涯音楽活動も続けていくこと」を、みずからの言葉を通して宣言した。この日のライブは、その決意を述べるための。アーティスト石月努としての決意を表明する場でもあった。
「これからもマイペースで」と語っていたように、けっして足早に駆けてゆくことはないかも知れない。でも、彼自身の胸に、何かしらの想いが強く響くたび、きっと石月努は、僕らの元へ音楽を通した「想い」を届けてくれるに違いない。その新しい便りを、ゆっくり待ち続けようじゃないか。
そうそう、7年半ぶりと言いながらも、この日に披露した歌声は、全盛期と遜色ない声色だった。むしろ、心にねっとり絡みつく歌声は、やはり石月努特有のもの。あの歌声を聴くと嬉しい安堵感を覚えるのも、きっと彼の歌との付き合いの長さから来るものか?これからも、ズッと付き合い続けるけどね、その歌声に。
TEXT:長澤智典
◆石月努オフィシャルサイト
◆石月努オフィシャルFacebook
◆石月努オフィシャルTwitter
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