【ライブレポート】ドレスコーズというバンドの底力を印象づけた“怪演”

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ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「オール・トゥモローズ・パーティーズ」が流れはじめると、ライヴの始まりを今か今かと待っていた観客がステージに向かってぐうぅぅぅぅっと前進。会場内に心地いい緊張が張り詰めた。

◆ドレスコーズ 画像

12月5日にセルフタイトルの1stアルバム『the dresscodes』をリリースしたドレスコーズのインストア・ライブ。昨年(2011年)、毛皮のマリーズを解散させた志磨遼平(Vo)が新たに結成した4人組。その彼らが結成から1年足らずで完成させた1stアルバムを、この日12月22日(土)、タワーレコード渋谷店B1F<CUTUP STUDIO>で改めてファンにお披露目する。

ステージ下手からメンバーがどかどかと足早にステージに登場し、それぞれの楽器をセッティングする。そして、最後に現れた志磨がいきなりマイクスタンドを掴み、演奏はスタート。1曲目は1stアルバムのオープニングを飾る「Lolita」。主人公のロリータに歌いかけながら、その言葉一つ一つがバンドの新たな決意の表れにも思える疾走感満点のロックンロールだ。

ステージから身を乗り出して、観客にアピールする志磨。客席を睨みつけるように印象的なフレーズを奏でるベースの山中治雄。細身の体躯からパワフルなビートを繰り出す菅大智。黙々とギターをプレイする丸山康太はサングラスで表情を隠している。

早くも大きな盛り上がりが生まれ、バンドはそれを煽るように「Lolita」の演奏の余韻が消えないうちに「1-2-3-4!」と「SUPER ENFANT TERRIBLE」をたたみかける。

「こんばんは。タワーレコードにようこそ! 短い時間だけど、最後までよろしく!!」

志磨の簡潔な挨拶を挟んで、バンドは「レモンツリー」「Automatic Punk」と曲をつなげていく。前者は産み落とされたときすでにスタンダードになることを約束されたような珠玉のポップ・ソング。彼らはそれをライブにふさわしい、若干つんのめるようなテンポで演奏。一方、後者はアバンギャルドという言葉も思い浮かぶポスト・パンク・ナンバー。それまで丸みを帯びた音色を奏でていた山中のベースがバキバキと唸る。激しいフラッシュライトの中、志磨が原始のダンスを披露。そしてパーカッションのループに挑むように菅がドラムを叩き、丸山がギターの凶暴なフィードバック・ノイズを唸らせる。

ドレスコーズというバンドの底力を印象づける熱演、いや、まさに怪演だ。タイトルが連想させる機械のイメージを、バンドが放つロウ・パワーが凌駕してしまったようなところがおもしろい。

そして、その混沌を一気にポップな幸福感に変えた「(This Is Not A)Sad Song」の歌の力。それまで黙々とギターを弾いていた丸山がそこで志磨と見せた絶妙のコンビネーションは、一番良かった時のニューヨーク・ドールズのデヴィッド・ジョハンセンとジョニー・サンダース(なんて実際には見たことはないけれども)を彷彿とさせ――いや、そんな例えはともかく、華やかなシンガーとクールなギタリストのコンビというアピールは、いわゆるロックンロールが本来持っているべきかっこよさとロマンチシズムを求めている人達からは大歓迎されるにちがいない。

「さあ、始まりの歌だ」と紹介した「ベルエポックマン」、そして最後の最後に持ってきた「Trash」で観客の盛り上がりは最高潮に達した。「(ワン)まだ足りない。(ツー)まだ足りない。(スリー)まだ足りない」と語りかけるように歌った「Trash」の終盤。興奮した一人のファンがステージに乱入し、志磨に激突(抱きつこうとした?)。その衝撃で思わずマイクを落としてしまったものの、志磨は咄嗟に山中のコーラス用のマイクを掴み、最後まで歌いきった。

計7曲40分ほどのライブは、彼らの曲が持つ魅力をしっかりと印象づけながら、マリーズの頃と変わらない終始、全力投球を思わせる志磨の激しいアクションも含め、荒々しいという表現がふさわしいものだった。それがライブにおけるドレスコーズの在り方なのか、それとも今後、ライブを重ねることで洗練に向かうのかそれはわからないものの、彼らが持っているさまざまな可能性はこの日、表現しきれなかった未知数も含め、十分に感じ取ることはできたと思う。

来年1月23日から始まる<the dresscodes TOUR“1954”>が楽しみだ。そのツアーを通して、ドレスコーズはどんな進化を遂げるのか早くも興味はそこに向かっている。

取材・文●山口智男



1st Album
『the dresscodes』
2012年12月5日発売
【初回限定盤】
COZP-735~6 ¥3,360(税込)
【通常盤】
COCP-37693 ¥2,940(税込)
M-1. Lolita
M-2. Trash
M-3. ベルエポックマン
M-4. ストレンジピクチャー
M-5. SUPER ENFANT TERRIBLE
M-6. Puritan Dub
M-7. Automatic Punk
M-8. リリー・アン
M-9. レモンツリー
M-10. 誰も知らない 
M-11. (This Is Not A)Sad Song
M-12. 1954

<the dresscodes TOUR“1954”>
2013年
1月23日(水) 京都磔磔
1月24日(木) 渋谷O-WEST
1月27日(日) 札幌cube garden
2月2日(土) 広島ナミキジャンクション
2月3日(日) 福岡DRUM Be-1
2月9日(土) 仙台darwin
2月10日(日) 新潟RIVERST
2月16日(土) 梅田QUATTRO
2月17日(日) 高松DIME
2月22日(金) 名古屋QUATTRO
3月8日(金) 日本青年館

◆ドレスコーズ オフィシャルサイト
◆コロムビア内ドレスコーズ サイト
◆タワーレコードUstreamチャンネル
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