UNCHAIN【ライヴレポ】楽しいだけではなく強力なパワーをもらえたアコースティック・ライヴ
2011年からUNCHAINが行っているアコースティックスタイルのライヴシリーズ「Get Acoustic」。今年は「Get Acoustic Soul Special」として、12月12日に行われた。そのライヴの模様と共に、ライヴ終了直後に行われたライヴ・アフター・トークをお届けする。
◆UNCHAIN、アコースティック・ライヴ~拡大画像~
彼らが会場として選んだのは、昭和の香りが残るグランドキャバレーをそのままライヴハウスとして使った雰囲気のある東京キネマ倶楽部。見事にソールドアウトとなったこの日は、11月末から全国5ヶ所を回ったツアーファイナルでもある。オープニング「Aurora」から、アコースティックライヴといえどもアグレッシヴにグルーヴィーにグイグイ押して来るような楽曲を選んだなぁと思っていたら、「Show Me Your Height」を演奏し終えたあと、この日のためのニューアレンジした「0.0025」のイントロに乗せ、案の定、谷川正憲がこちらの空気を察したようなMCを。
「アコースティックだからって、おとなしいだけのUNCHAINって思ってるんじゃないの? おとなしくないぜ!」
客席も自然に体が動くような心地よいリズムで場内が揺れる。続いて「Sugar」では、蝶ネクタイでキメキメの佐藤将文の甘い歌声と、谷川とのスイチヴォーカルやコーラスにうっとりしていると、谷浩彰のラップが入る。一曲の中での色合いを変えるUNCHAINならではの個性を発揮した楽曲だ。
MCを挟んで、「暁のコドウ」はまたしてもアレンジ違いで、アルバム『Eat The Moon』に収録されたバージョンとは雰囲気が違う。7曲目「Tonight's The Night」では谷がウッドベース、「太陽とイーリス」では谷川が鍵盤を担当し、「Quarter」まで、ジックリと歌を聴かせるような曲が続く。「クリスマスの雰囲気作りますか」(佐藤)と「Fly In The Blue Moonlight」「Across The Sky」はクリスマスアレンジで、続いてのマライア・キャリーの「All I Want for Christmas」につなげる秀逸な流れ。この曲では谷川が客席に降りて、観客のすぐ近くまで行くという演出も。
この後、東京キネマ倶楽部のみのスペシャルな見せ場として、「キネマ劇場」なる、4人によるプチお芝居が! 配役は、谷川がサンタクロース、佐藤が菩薩、谷がタニー・タニー・チョッパー(トナカイ)、吉田昇吾が地蔵。サンタクロースに菩薩に地蔵と聞いただけで、どれだけシュールなストーリーだったか想像できるだろう。このお芝居、実は続いての「MR.TAXI」への導入だった。曲名を聞いてピンと来た人も多いと思うが、「MR.TAXI」といえば、そう、もちろん少女時代のカバー。彼らが2月6日にリリースするカバーアルバム「Love&Groove Delivery」に収録されている。その楽曲に乗せ、なんと、サンタクロース、トナカイ、菩薩、地蔵の姿のままでダンスを踊ったのだ。場内はもちろん大爆笑&大盛り上がり!
このテンションのまま、次の「make it glow」をどう演奏するのかと思いきや、再びステージに出て来た途端に谷川が「俺らの知らん間に、ミュージカルみたいなのが行われてたみたいやな」と何事もなかったかのように、再び演奏と歌をしっかり真面目に聞かせてくれた。
アレンジ違いにカバーにお芝居にダンス、色んなことがあった本編だったが、この日のライヴへ込めた彼らの思いを強く印象づけてくれたのは、アンコールでの谷のMCだろう。ラストは「Don't Stop The Music」。このイントロに乗せて谷がこんなことを言った。
「好きな曲書いて、録音して、CD出して、ツアーまわって、好き勝手やって、いま、こうやって、ここに立てているこの現状、嬉しく思う。みんなに感謝してます。CDが売れないとか、音楽では食っていけないとか、でも現に今、俺らもここに立ててることがすごく嬉しいし、今までの道が間違ってなかったったって思っています。あきらめんかったから、止まらんかったから、ここまでこれたと思っています。Don't Stop! Don't Give Up!」
力強い谷の言葉、そして、「Don't Stop The Music」という楽曲に込めた想い、このライヴ自体に込めたもの、彼らの音楽活動に託した情熱が伝わって、全身に鳥肌が立った瞬間。たった二時間だったが、ただ音楽に酔いしれ楽しいだけではなく、強力なパワーをもらったひとときだった。
■ライヴアフタートーク■
――今年のアコースティックライヴはツアーで回ったんですね。
佐藤将文(以下、佐藤):全国で5ヶ所。アコースティックライヴでツアーを回るのは初めてなのでもっと回りたかったんですけど。
谷川正憲(以下、谷川):キネマ劇場だけは今日のスペシャル。脚本監督・佐藤将文で。
佐藤:「MR.TAXI」のダンスはツアーでもやってたんですけどね。
谷浩彰(以下、谷)谷:あのダンスでまた僕たちの新しい切り口が……。
佐藤:切り口にならんけどね(笑)。
谷:新しい才能が!
谷川:まぁ、こういうときしかできないんで思い切り遊んでやろうと思って。
――「キネマ劇場」のところまでの時間が早かったですね。
谷:やっててもそう感じるんですが、時間は結構経ってるんですよね。
――時間が過ぎるのが早く感じるというのは良いセットリストということですね。
谷川:そうですね。ツアー中もすごい短い短いって言ってて。もうマライヤ(12曲目の「All I Want for Christmas」)かって。去年はセットリストが最後まで決まらなくて大変だったんですが、今回はすんなり、結構しっくりきた感じがありました。本当は、今日、もう一曲序盤にやろうかと思ってたんですけど、リハーサルでやってみて、やっぱりツアーでやってきた流れが崩れるなぁと思ったので抜いちゃって、ツアーのままやりました。
――谷くんがアンコールの最後の「Don't Stop The Music」でしたMCがグッと来ましたよ。
谷:絞り出した思っていることを言ったので。
谷川:決まり文句が「与えられた16小節以上にも言いたいことが……」っていうね(笑)。
谷:そこはリズムがあるんで、入って行くための助走がいるわけよ。
――次の曲の「Don't Stop The Music」というタイトルにも通じるような強いメッセージがあったよね。今思ってる、音楽に対する熱い気持ちや愛が伝わったし、今、音楽不況と言われても、音楽は止めてはいけないんだと改めて思いました。今日のライヴはそういうことを言いたかったんだなという印象になりました。鳥肌が立ちました。
谷:そういう深い意味にとってくれると嬉しいっすね。僕らの活動で、少しでも勇気づけられてくれる人がいたら嬉しいですね。
佐藤:うん。自分たちがやりたいことをやるために、じゃあ、何をしなきゃならないのか考えるようになったんですよね。だからこういうツアーもできて。今までは頭でっかちにやりたいことだけやっときゃいいやって思ってた時期もありましたが、それだけじゃなくて、自分らがやりたい音楽を聴いて欲しいから、聴いてもらうために何をすればいいんだろうとか考えますよね。もしかしたら音楽と関係ないことなのかもしれないし、遠回りになってるのかもしれないけど、今日みたいなダンスとか(笑)。ああいうのもちょっと違う部分ですが見せて行って。でも大事な部分としてちゃんと演奏をして音楽でも伝えて。そういうことを今日みたいなアコースティックでもやるようになって。
谷川:突き詰めて行けば突き詰めて行くほど、自分たちが自由になっていくような感じがしていて。すごく楽しいですね。
――アコースティックスタイルっていうのは、普段のライヴとは気持ちは変わりますか?
佐藤:やっぱり変わりますね。空気感もそうですが、椅子席っていうこともあって、お客さんの構える姿勢だったりとか。こっちも普段と違うし。綺麗に並んだお客さんのあの感じとか。でも今回は5ヶ所でツアーをやって、そういうお客さんとのコミュニケーションがとれるようになってきたんで、エレキセットのライヴでも生かして行けるなって感じがしますね。より生っぽいというか、距離が近く感じるので、伝わりやすさではこっちのほうがあるのかもしれないんですけど。
谷川:いつもが表のUNCHAINだったとしたら、アコースティックは裏のUNCHAINっていうか。ちゃんとクッキリさせないとその二面性はわかりにくいと思うんですけど。もっと強い感じで陰影をハッキリさせることで、もっと自由になれるし、もっと面白いことができるんじゃないかと思っています。
佐藤:アコースティックのライヴをやるのも、普段のライヴを観てもらうための手段でもあるので。その手段をガチガチに本気でやって、アレンジも全部変えて。こういう形のほうが、歌とか演奏とかコーラスとかも聴いてもらういやすい形になると思うので。それで本来の自分達のところにお客さんを引っ張って行けたらという気がしますね。
――吉田くんはこのツアーのためにドラムセットも新調したしね。
吉田昇吾(以下、吉田):あれ、安いんですよ。ツアー先が小さいハコが多かったのでミニドラムのほうが都合が良いと思ったら、意外に音も良くて。
谷川:ミニドラムって聞いた時は、吉田くんの体がでかいから、三輪車に大人が乗るみたいな感じになるかと思ったんですけど。でも思ったよりもちゃんとしたドラムだったので(笑)。
佐藤:今日は本当は普通のドラムセットでやるはずだったんですが、やっぱりツアーと同じほうがいいかなってことで。思いのほか良い音だったので最後の今日も。
――2013年2月6日には配信限定でリリースしていたカバーシリーズ「Love&Groove Delivery」の集大成として、それを一つにまとめて、4曲の新録を入れた作品「Love&Groove Delivery」も発売されるんですよね。
谷川:相変わらず、「丸の内サディスティック」が好調で。「丸の内サディスティック」は一年前に配信を開始したので、いまだにツイッターで毎日、「いいです!」ってつぶやかれるんですよ。
――その作品にライヴで踊った、少女時代のカバー「MR.TAXI」も収録されるんですね。とても意外だったけど、すごく良かった。
谷川:K-POPもそうだし、アイドルの曲にも良い曲が多いんですよ。
佐藤:アコースティックアレンジにしたので。
谷:CDで、またアレンジをじっくり聴いて欲しいですね。
――では、最後に、2013年に向けてひとことお願いします。
谷川:このタイミングで、もう一回、UNCHAINが作る良い曲というのをファンのみんなにもう一回届けたいという思いがあるので、来年は今まで一番良い曲を作りたいですね。
佐藤:それに繋がると思いますが、今年はそのための準備みたいなことができた気がして。もちろんそれは後付けなんですけど。今年ももちろん、良い曲を書くつもりでずっとやってきたんですけど。でももっともっとって想いがあるので。2012年は『Eat The Moon』っていうアルバムを出して、こういうアコースティックツアーも回って、いろんな聴いてもらうための手段はいっぱい見付けてこれたと思うんです。来年は一番良い名曲を描いて、一番良いUNCHAINを見せられたらなと思います。
谷:来年も続けていられればいいなと。みんな元気で。このバンドが解散するのは、誰かが体調とかを崩すときっていう覚悟でやっているので……。
佐藤:死んだ時って話じゃなかった?(笑)
谷:(笑)まぁ、元気でやっていれればなと思いますので、来年もよろしくお願いします。
吉田:来年も元気いっぱいでやっていきます。僕が元気いっぱいでやります!頑張っていきます!
取材・文●大橋美貴子
撮影●江隈麗志(Reishi Eguma)
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