【ライブレポート】サンボマスター、Zepp DiverCityワンマンで“愛”を叫ぶ

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「こんなとこに2000人以上集まってよ、お通夜みてーなライブやるわけにはいかねーんだよ!こんなとこに2000人以上集まった以上はね! 宇宙一のロックをやらなきゃいけないわけですよ!」──山口隆。

◆サンボマスター画像

いよいよ大団円を迎えようとしている、ニューアルバム『ロックンロール イズ ノットデッド』を引っさげた全国ツアー<ロックンロール イズ ノットデッド ツアー>のステージから、いきなりの大絶叫が突き刺さる。サンボマスターの“ロックンロール”を余すところなく叩き込んだ会心作の勢いそのままに、ライブ本編が始まる前からまくしたてるアジテーションにファンは大熱狂だ。

そして、まさに“衝動”まる出しなサウンドでアルバム中でも強烈なインパクトを放った「衝動バケモノ」で幕を開けた、Zepp DiverCity2デイズの一日目・2012年11月15日。オープニングナンバー同様に荒々しい爆音の中で大合唱が響き渡った「恋する季節」など、『ロックンロール イズ ノットデッド』収録の新曲群が軸となったセットリストの中で、山口は歌いながら隙あらば「おめーらそんなもんじゃねーだろ!」と煽りまくる。それはまるで、オーディエンスにケンカを挑んでいるかのようにも思える挑戦的なアジテーション。しかし、同時にリスナーへの愛情も感じさせるその口調に、フロアは笑顔の花が咲く。そう、サンボマスターは衝動的なロックンロール・バンドであるとともに、その芯にはたっぷりの温もりが宿るソウル・バンドだ。激しさと優しさを合わせ持つ音楽とメッセージが、この日も聴き手の胸を打つ。

そんな圧巻のテンションが充満するステージに加わったのは、『ロックンロール イズ ノットデッド』の制作にも参加した真心ブラザーズの桜井秀俊とレキシの池田貴史。山口が叫ぶ「い・け・ちゃん!」「さ・く・ら・い!」コールに会場はすぐさま反応し、大合唱が巻き起こる。「すごい二人が揃ったときに何なんですけど……木内に捧げる曲やっていいすか?(笑) アルバムにも入ってなくて、このツアー用に作ってきた曲なんですけどやっていいですかね?」(山口)。二人のプレミアム・ゲストとともに、このツアーでしか観られないプレミアムなシーンを演出したのは「スイートソウル ドラマー」だ。ギターがブルージーに、そしてアダルトなムードを漂わせ…かと思えば、ドラム連打が爆裂! まさに木内の“スイートソウル”を込めたリズムに、池田はきらびやかな音色でそれを包み込み、かと思えばキーボードの上に飛び乗る! そこから「泣いてばかりじゃ見つからないぜ」へと流れるように続いた、激しくもソウルフルな音色のセッションに拍手喝采だ。

さらにその後も、桜井と池田を再び加えた豪快、かつソウルフルなインストから、「静かに光り続けるもの」でフロアを踊りに踊らせる。かと思えば、山口がギターをかなぐり捨てて「ハンドマイクで歌ってもいいですか!」と絶叫だ。近藤と木内も同調しマイクを手にする姿は、まるで3MCのヒップホップ・チームのよう(笑)。さらに、スタッフから渡された金のマントをはおり、一輪の真っ赤なバラをフロアに投げ入れる木内に場内は爆笑&大歓声。「見て!この恥ずかしい感じ!(笑)」と山口に指差されながらも、「歌ってもいいですか!」と木内も絶叫だ。桜井と池田に演奏を託して3人で歌う「静かに光り続けるもの」は、普段の3人のみの演奏とは異なる遊び心たっぷりの一幕だった。

激しさ、楽しさ、そして尋常じゃない熱気が充満する、サンボマスターの真骨頂的魅力が出し尽くされたこの日のステージ。そして、もうひとつ、彼らに欠かせない魅力もファンの胸をわしづかみにした。それは、前述もした、優しきソウル。自らの思いを朗読するかのような、山口の語りを交えたメロディが印象的だった「青春のかけら」。そして、「もう1曲ラブソング歌っても良いですか?」と曲紹介した「あなたのことしか考えられない」などのラブソングからは、サンボマスターの“ソウル”がストレートに伝わってくる。

「やっぱ、去年のこともあったからね。東日本のこともあったからよ、なんか…。『ラブソングってどれだけ本気で書いてんのか?』って、自分の中で思ったわけですよ。“アイ・ラブ・ユー”の意味ってどれだ?”と思ったのよ。“アイ・ラブ・ユー”って、俺、恋人だけじゃなくてもいいと思ってんのよ。キミの大好きなばあちゃんに“アイ・ラブ・ユー”って言ったって、それは“アイ・ラブ・ユー”だと思うんだ。じいちゃんに言ったって“アイ・ラブ・ユー”だと思うんだ。“アイ・ラブ・ユー”ってよ、“好き”だけじゃ、“会いたい”とかだけじゃなくてよ、“アイ・ラブ・ユー”の本当の意味ってな……。あなたのことしか、考えらない……」(山口)

「あなたのことしか考えられない」は、いわゆる“惚れた腫れた”を歌う恋の歌なだけじゃない、大きな大きな“愛”を歌うラブソングだ。それぞれの心の中にある大切なものへの、“アイ・ラブ・ユー”。そして、そのことしか考えられくなるほど大切な“あなた”への、“アイ・ラブ・ユー”……。<I love you baby ふくしま I need you baby ふくしま I want you baby 僕らは ふくしまが好き……>。彼らも参加した猪苗代湖ズの1曲をこの日はサンボマスターとしてファンへ届けた「I love you & I need you ふくしま」も、何物にも代えられない大切な故郷への“アイ・ラブ・ユー”を込めた1曲だ。会場全体から巻き起こった「ふくしま!」コールの大きさは、“ふくしまが好き”というワンフレーズからさえもたくさんの熱い思いが聴き手へ伝わっていたことを物語る。「みんなの声がグワァーッとなりすぎて自分の声聞こえねーぐれぇ、歌ってくれてありがとよ! 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ!」(山口)。大切なもの、大切な人、そして何より、音楽への“愛”をファンと一緒に高らかに叫んだこの日のステージ。これもまた彼らの“愛”をストレートに描いた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」、和田アキ子の名曲のカバー「あの鐘を鳴らすのはあなた」などを披露したライブ後半も、“愛”の歌声のボルテージはまったく落ちない。

「俺はな、今日、あったりまえなことに気づいたんだ。それはおめぇらが、“生きてる”ってことよ。あたかも、もう日本は終わってしまったみてぇな、閉塞感だとかなんだかわけ分かんないこと言って、どん詰まりの日本だとかわけ分かんないこと言って…。こんな目ぇキッラキラさせてるキミらのどこが終わったんだべな? こんな目ぇキッラキラさせてるあんたがたがいつ死んだんだべな? キミたち生きてんのか! 死んでねーな! それ証明しに来たんだよ! キミたちが“生きてる”って、“生きてる”キミたちとまた会いてぇって、キミたちが美しいって、それ言いに来たんだ!」(山口)

J-POP、アイドル、アニソン、K-POP、R&Bにダンスミュージック、etc…。様々なスタイルの音楽が響く日本で、ロックンロールだって死んでない。そして、悲しい出来事でたくさんのものを失ってしまったけれど、日本はまだ死んでない。サンボマスターの音楽で誰もが目をキラキラさせて歌って、踊って、叫んだZepp DiverCityの美しい光景を見た人なら、そんなことを言ってもきっと頷いてもらえると思う。そして、2デイズライブの2日目を控えているが、エネルギーの出し惜しみは一切無し。アンコールでも「あなたといきたい」で再び爆音を走らせ、最後の最後は……。「結局このお台場に、最後は……。ロックンロールの歌声よおこれ──!」(山口)。この日何度目になるか分からない高らかな大合唱とともに爆発した「歌声よおこれ」には、“生きている”からこそ表現できる音楽のパワーと、“生きている”からこそ感じることができる熱さが確かにあった。来年、2013年にメジャーデビュー10周年を迎えるサンボマスター。キャリアと年齢を着実に重ねていく中でも、落ち着くどころか、“衝動”と“愛”のパワーでますます意気盛んに突っ走ってくれるだろう。そして、僕達の心も、今の日本も、“ロックンロール”で明るくしてくれることをこの先も変わらず期待しようじゃないか。

取材・文:道明利友
写真:山本倫子
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