lynch.、全23曲で一気に攻勢をかけた1時間半＠新宿LOFT 2012.7.24

より激しく、より速く、より切なく――。自らの根本にあるその3要素を追求し、創り上げたメジャー2ndアルバム『INFERIORITY COMPLEX』を6月27日にリリースしたlynch.。破壊力抜群の本作を掲げて全国ツアーを展開中の彼らが、27都市28公演で唯一となる東京公演を7月24日、超満員の新宿LOFTで行った。

◆lynch.＠新宿LOFT 2012.7.24～拡大画像～

7月6日に札幌で開幕したツアーも、この日で11本目。ちょうど中盤に差し掛かったあたりということで、お馴染みの「I'm sick,b'cuz luv.u.」による幕開けから一気に場内のテンションを上げるや、「MOMENT」「THE FATAL HOUR HAS COME」とアルバム収録の高速へヴィ・チューンを、驚くほどに手慣れた風情でブチかましてゆく。

それはロックの聖地である此処、新宿LOFTの武骨な空気に相応しい自然体ぶりで、晁直が叩き出す激走ビートに弦楽器隊が一丸となって合わせる「-273.15℃」や「THE BLASTED BACKBONE」では、凄まじいヘッドバンギングの海がフロアに出現。思考停止させるほどの激しさで問答無用に身体を揺らす、このフィジカルなパワーこそlynch.サウンド最大の特色であり、昨年のメジャー進出を経て着実に信奉者を増やしている原動力であろう。

しかし、同時に備えている切なさや憂いこそが、凡百の“激しくてハードなバンド"とは一線を画する位置に彼らを押し上げていることも忘れてはならない。

例えば美メロと熱情が交錯する「UNTIL I DIE」では、野太いベースをうねらせる明徳のシャウトとメロウにギターを炸裂させる悠介のクリーンなコーラスが交互に訪れて、アグレッションとエレガンスの競演を堪能させる。また、タイトルを彷彿させる真っ赤な照明の中で汗だくの葉月が真っ直ぐに歌声を届ける「A FLARE」から、演説調のヴォーカルとシャウトが錯綜して不気味なオーラを放つ「CULTIC MY EXECUTION」では、恵みにあふれた慈悲の光と紅蓮の炎という、まるで性質の異なる“赤"を描写。

そして、最新アルバムのタイトル曲でもある「INFERIORITY COMPLEX」。ライヴならではの迫力ある掛け合いコーラスと、猛烈なビートによって隙間なく敷き詰められた音の圧力を浴びながら、それと同じくらいに力強い葉月の目線に底知れない決意を感じ取ると、彼の“もう暴れるしかないからな。覚悟しとけ!"との煽りにゾクリと背筋が震えるほかない。

あとはラストまでノン・ストップ。「I BELIEVE IN ME」でフロント陣が一列を為して前に迫り出せば、会場全員の魂がひと所に集中していくような高揚感が沸き、ドッ!と熱気が場内に充満。インディーズ時代からの定番曲「unknown lost a beauty」では手拍子から拳へと、一斉に移行するオーディエンスの動きが素晴らしい一体感を生み出し、その様子を見て極悪ギターをかき鳴らしていた玲央が、我が意を得たりとばかりにニヤリと獰猛な笑みを漏らす。

“lynch.というバンドの本質に立ち返り、あえて小さなライヴハウスを回る"ことをテーマにしたツアーだけに、完全なるキャパシティ・オーバーのフロアは人口密度も体感温度も恐るべき高さ。そんな環境で最速最激のアルバム曲を投下されるという、まさに限界ギリギリの状態でしか味わえない恍惚のなか、ラストの「MIRRORS」では独りでに身体と頭が揺れ、フロアから沸く大合唱に胸が熱くなる。

最後に“we're not alone!"と付け加えて葉月が見せた清々しい笑顔――。そう、激しいナンバーを繰り出す一方で、今ツアーの彼は本当に笑顔が多い。本日最初のMCであった“楽しんでって!"という言葉には、どうやら我々が思っていた以上の真なる想いが隠されていたようだ。

事実、ひたすらに暴れ曲だけをブッ放したアンコールを終え、最後に残ったのは身体と心の毒素が全て流れ切ったかのようなデトックス感。それはまさしく“楽しい"と形容するに相応しいものであったし、去り際には悠介から“お前ら、カッコよかったよ。誇りに思え”とお褒めの言葉を頂戴することもできた。しかし、MCらしいMCもなく全23曲で一気に攻勢をかけた1時間半というコンパクトなステージ、しかも公演ごとにメニューが変わるため披露されなかったアルバム曲もあり、“あれも聴きたい!”“この空間にもっといたい!”と感じたのも正直なところ。

だが、心配は無用。本ツアーは9月23日の高知X-pt公演まで絶賛敢行中なうえ、この日のアンコールでは10月からの全国7大都市ツアーも発表された。尽きせぬ“lynch.欲"を満たす機会はまだまだ残されているし、未だ彼らを知らない貴方には、多彩な間口を持つ彼らに触れることで、ぜひ未知なる音楽の歓びを――“THE FATAL EXPERIENCE(=運命的体験)"を味わってほしいと思う。

取材・文●清水素子

＜Set List　＠新宿LOFT 2012.7.24＞
1.I'm sick,b'cuz luv u.
2.MOMENT
3.THE FATAL HOUR HAS COME
4.-273.15℃
5.THE BLASTED BACKBONE
6.UNTIL I DIE
7.EVILLY
8.NEW PSYCHO PARALYZE
9.A FLARE
10.CULTIC MY EXECUTION
11.EXPERIENCE
12.INFERIORITY COMPLEX
13.I BELIEVE IN ME
14.ALL THIS I'LL GIVE YOU
15.59.
16.alien tune
17.ANIMA
18.Unknown lost a beauty
19.MIRRORS-we're not alone-
-encore-
1.THE TRUTH IS INSIDE
2.TIAMAT
3.DAZZLE
4.discord number

＜THE FATAL EXPERIENCE＞
2012/8/24（金） 京都MUSE
[問]夢番地大阪 : 06-6341-3525
2012/8/25（土） 奈良NEVER LAND
[問]夢番地大阪 : 06-6341-3525
2012/9/08（土） 姫路Beta
[問]夢番地大阪 : 06-6341-3525
2012/9/09（日） 山口LIVE rise SHUNAN
[問]夢番地広島 : 082-249-3571
2012/9/11（火） 小倉LIVE SPOT WOW
[問]BEA : 092-712-4221
2012/9/13（木） 長崎DRUM Be-7
[問]BEA : 092-712-4221
2012/9/15（土） 熊本DRUM Be-9
BEA : 092-712-4221
2012/9/16（日） 鹿児島SR HALL
[問]BEA : 092-712-4221
2012/9/18（火） 松江AZTiC canova
[問]夢番地岡山 : 086-231-3531
2012/9/19（水） 広島NAMIKI JUNCTION
[問]夢番地広島 : 082-249-3571
2012/9/21（金） 松山サロンキティ
[問]デューク松山 : 089-947-3535
2012/9/23（日） 高知X-pt.
[問]デューク高知 : 088-822-4488

＜「THE FATAL EXPERIENCE #2」― SEIZE THE MOMENT ―＞
10月29日(月)名古屋THE BOTTOM LINE
11月 3日(土)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
11月 5日(月)福岡DRUM Be-1
11月10日(土)梅田CLUB QUATTRO
11月20日(火)札幌cube garden
11月23日(金・祝)仙台CLUB JUNK BOX
12月 7日(金)恵比寿LIQUID ROOM

◆lynch. オフィシャルサイト
◆キングレコード