Dragon Ash、今はまだ旅路の途中で……IKUZONEの追悼ライヴ初日公演

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4月21日に急逝したIKUZONEを追悼するDragon Ashのツアー<Dragon Ash Live ~REST IN PEACE IKUZONE~>。SHIBUYA-AXで行なわれた初日公演のオフィシャルレポートが届いたので紹介しよう。

◆Dragon Ash 画像@<Dragon Ash Live ~REST IN PEACE IKUZONE~>

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「誰かさんに届くように、飛び跳ねろー!」

ぶっきらぼうだが愛あるKjの声に、場内のボルテージが一気にあがる。4月に急遽したDragon Ashのベーシスト、IKUZONEの追悼ライヴ<Dragon Ash Live ~REST IN PEACE IKUZONE~>ツアー初日のSHIBUYA-AXは、涙と汗に彩られた熱く美しい弔いの宴となった。

開演前のステージには、生前と同じく、IKUZONEの定位置に電源が入ったアンプがおかれ、その前には彼の愛用ベースがセッティングされている。少しでも彼を感じようとIKUZONE前にクラウドたちが押し寄せる。

場内が暗転し、スクリーンにIKUZONEのやわらかな笑顔が映し出される。Kj、桜井誠、IKUZONEの3人だった頃から、年代順に映されていくさまざまな映像や写真……初めて公開されるデビュー前のレコーディング風景やミュージックビデオのメイキング映像、ライヴハウスで演奏していた頃の映像などなど。そして最後に映し出されたのは、IKUZONEの最期のステージとなったROTTENGRAFFTYとの対バンライブでの姿と、その時のバンドミーティングの風景。

「悲しみに来たんじゃないだろ?!」

ステージからKjの声があがる。必殺的なライブチューンの1フレーズを「IKUZONEのように♪」と歌い変えてみせた彼の肩には、IKUZONEのシンボルである赤と青の百合のタオルがかけられている。ギターのHIROKIも腰にIKUZONEを思わせる赤と青のチェックのシャツを巻き、ダンサー2人が各々着ているのも赤と青のチェックのシャツ。ターンテーブルのBOTSの傍らには献花式の際に配られたIKUZONEの写真が飾られ、ドラムの桜井の足元もこの日は赤と青のVANSのスリッポン。スタッフも全員、IKUZONEのイラスト入りのR.I.P.Tシャツを着ている。

そんなメンバーの演奏にシンクロして、スクリーンにIKUZONEの姿が映しだされる。場内に鳴り響くベース音は生前にIKUZONEが演奏した音源であり、今回のツアーではメンバーがそこに各々の音を重ねていく。目の前にIKUZONEの姿は見えないが、その音はきちんとベースアンプを通して鳴らされ、曲毎にローディがベースを入れ替える。サポート・ベーシストを迎えず、あえて音楽的に難易度の高いこのスタイルでステージに立つことを選んだのは、IKUZONEへの6人の愛とリスペクトがあればこそ。そして、生の演奏×シーケンスサウンドに挑み続けてきたDragon Ashだからこそ実現できたことでもある。

初期の名曲「The day dragged on」から、IKUZONEが最期に演奏したナンバーであり、この日急遽配信され、7/5現在もiTunes総合チャート1位を爆走中の最新曲「Walk with Dreams」まで。皮肉にもこの日のライブは、デビューからのDragon Ashの15年の軌跡を振り返る濃密な内容となった。

「こういう形のライヴは二度とやりたくないけど……こうやってライヴが出来たのはお客さんみんなのおかげなんです」

IKUZONEがそこにいないことをこの日誰よりも実感していたであろう、彼とともにバンドのリズムをささえてきたドラムの桜井がいう。かけがえのない仲間を失ってもなお、Dragon Ashがこうして前を向くことが出来たのは、間違いなく、求めてくれるオーディエンスがいてくれたからこそである。

<今はまだ旅路の途中で>

IKUZONEが愛した名曲「陽はまたのぼりくりかえす」を彷彿させる新曲「Walk with Dreams」の1フレーズのように、悲しみに打ちひしがれてとどまるのではなく、Dragon Ashは旅を続けることを選んだ。IKUZONEもきっとそれを願っているはずだ。

text by 早川加奈子
photo by 橋本塁(SOUND SHOOTER)

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Dragon Ashは、15周年企画ベストアルバム『LOUD & PEACE』を2012年8月22日にリリースすることが決定。このベスト盤には、誰よりもファンを愛しファンへの感謝を忘れなかったIKUZONEが特典用音源として制作を提案し、その制作途中段階で残した音源を用いて完成した「Something in view -L&P eternal session-」などを収録する。

◆Dragon Ashオフィシャルサイト
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