フリオ・イグレシアス、インタビュー「人間はみな学ぶために生まれてくるのだ」
3億枚を超えるレコード・セールスを記録し、ギネスブックで「史上最も多くのレコードを売ったアーティスト」として認定されているフリオ・イグレシアスが、ここにきて更なる成功を収めているという。これ以上ない成功を収めながらも、現在68歳にして新たな偉業を達成中だ。
日本国内でも6月27日に発売されたベスト・アルバム『1』が、先行販売されたラテン圏にてiTunesなどを含む多くのチャートでNo.1を獲得しており、本人曰く、過去最大の成功作となっているという。アナログレコード、CD、デジタル配信…と音楽のメディアが変わっても、いつの時代もフリオ・イグレシアスは頂点を極める至高な存在のようだ。
とはいえ、彼はミュージシャンとしての輝かしい成功が始まる前、サッカー選手として大きな挫折を経験している。フリオは決して元からミュージシャンを志していたわけではなく、サッカーの名門レアル・マドリードのユース・チームでゴールキーパーを務めていた選手だった。彼は、晴れて1軍選手に登録された矢先、交通事故で全治約5年の瀕死の重傷を負い、選手生命を断たれた。療養中にリハビリとしてギターをはじめ、それがミュージシャンとしての活動が始まるきっかけとなったのだ。
一度は大きな挫折を味わいながらも、立ち上がり、成功をおさめ、それを継続させているフリオだけに、「人」として考えや生き様にもスポットは当たってしかるべきであろう。新たな偉業を打ち立てたアルバム『1』は、自身の選曲によって名曲の数々を再レコーディング・リマスタリングし、今求められる最高のクオリティーで収めた2枚組のベスト盤である。本作品について掘り下げていく最新のインタビューの中で、フリオの成功の理由、そしてその継続の秘密などが明らかになった。
――素晴らしい曲の数々を再録音、リマスタリングされた経緯と心境を教えてください。
フリオ・イグレシアス:40年前に録音活動を始めた頃は、音に今ほど深みがなかったような気がずっとしていたんだ。そもそもデジタル録音でもなかったからね。そんな感じで、長年の間に、もっといいものにできるんじゃないかと思うようになってきたんだ。それに、自分のためにも録っておこうと思ってね。もしかしたら将来的には、若者たちが私の曲を聴いてみたいと思ったときに、昔のままではサウンドが適切でないと思うかも知れないから。うちには4歳、10歳、14歳の子供がいるけれど、少なくともこの子たちがアルバムを聴いたら、「(息子の)エンリケみたいな音じゃないけどちゃんとした音に聞こえる」と思ってもらえるはずだよ。「昔のヴァージョンの方が好きだ」という人もいるだろうとは思うけれど。今私に訊かれたら、比較は存在しない、比較の問題じゃないと答えるね。しかしながら音には100倍深みが出ている。また、自分の60年代、70年代、80年代、90年代、2000年代のアルバムを紐解いてみると、サウンドが100倍良くなっているのが分かる。声も100倍良くなっているんだ。40年前の魂が書いた曲にはまたチャンスが与えられるべきだと思う。だからこそ今回こうしてみたんだ。私がクレイジーだと思う人もいるかも知れないけれど、それは構わないよ。
――長年の間にご自身はどのように変化、進化されたと思われますか。
フリオ・イグレシアス:ほら、私は生まれながらのシンガーではないだろう?青年…大学に通うスポーツ青年として育っていたんだ。シンガーになるとは全く思ってもみなかった。交通事故にあって、サッカー選手としての選手生命を断たれてからギターを弾くようになったけれど、本当に、自分はシンガーには向いていないと確信していたんだ。ところが皆が長年の間に私に運を与えてくれた。それで…本格的に学んで本当のプロらしく歌えるはずだと本気で思うようになった。そうして長年の間に様々なチャンスを与えてもらった結果、今はようやくプロだと自信を持って思えるようになった。無理だったものを少しずつ克服して積み重ねていったんだ。
――新しい世代についてはいかがでしょう?このアルバムは、スペインのiTunesなどで1位になっていますね。今の若者はiTunesで曲を購入しますが…ご自身の音楽と若い世代とのこのような繋がりについては満足していらっしゃいますか。
フリオ・イグレシアス:離れた世代に自分の音楽が届いたとき、アーティストは天国にいるような気持ちになるものだよ。40年前には考えもつかなかった気持ちだね。レコード会社に「iTunesはご存知ですよね?」と訊かれて、改めて気づいたんだ。私はiTunesが何か知らなかったのだよ!それで「iTunesとは何だね?」と尋ねたら、iTunesというのは若者がアルバムを買うところで、あなたが1位になりました、と教えてくれた。「信じられないね」と言ったよ。私は最後まで全うしきって死ぬ。もっと向上できるはずだと思いながら。人生は常にチャンスの連続だからね。私には常に素晴らしいチャンスが与えられてきたんだ。だからiTunesも、その人たちのお父さんやおじいさんも…常に私にチャンスを与え続けてくれているんだ。私は何てラッキーな男なんだろうと思うよ!人間はみな学ぶために生まれてくるのだ。学ぶことができないとアルバムが売れなくなる。様々なものごとが止まる。情熱も止まる。人生のあまりにも多くのことが止まってしまうんだ。だから、私の人生は何事も止めたくないと思っているよ。
今回のベスト盤『1』はまさにフリオの生き様を表現した作品となった。ギネスブックで世界一となった成功の裏には、謙虚な気持ちと絶えることのない情熱が息づいているようだ。
フリオ・イグレシアス『1』
2012年6月27日発売
SICP 20385~6 [2CD] 高品質Blu-spec CD ¥3,500(税込)
※歌詞&対訳付/コメント:フリオ・イグレシアス/特別寄稿:湯川れい子/解説:村岡裕司
* Re-recording Version
Disc-1
1.クレイジー
2.ホエン・アイ・ニード・ユー
3.ビンセント(スターリー・スターリー・ナイト)
4.L.A.より99マイル
5.アンド・アイ・ラヴ・アー
6.オールウェイズ・オン・マイ・マインド*
7.クレイジー・イン・ラヴ
8.フラジャイル (duet with スティング)
9.カルーソ (feat. ルーチョ・ダッラ)
10.かつて愛した女性へ (duet with ウィリー・ネルソン)
11.オール・オブ・ユー(feat. ダイアナ・ロス)
12.ムーンライト・レディ
13.好きにならずにいられない
14.マイ・ラヴ (duet with スティーヴィー・ワンダー)
15.ザット・ユー・ラヴ・ミー(duet with ドリー・パートン)
16.マイ・ウェイ (duet with ポール・アンカ)
17.サマー・ウィンド (duet with フランク・シナトラ)
18.レット・イット・ビー・ミー (feat. アート・ガーファンクル)
19.煙が目にしみる (duet with オール・フォー・ワン)
20.「カサブランカ」~時の過ぎゆくまま/アズ・タイム・ゴーズ・バイ [Live Version](duet with ステファニー・スプライル)
Disc-2
1.ヘイ*
2.ひとりの女の愛のために*
3.メバ・メバ*
4.マヌエラ*
5.ガリシアの歌*
6.愛に死す*
7.想いのとどく日*
8.人生を忘れて*
9.コラソン・パルティオ(壊れた心)
10.少女から大人へ*
11.ラ・カレテーラ*
12.アモール・アモール*
13.デローチェ
14.ラ・クンパルシータ
15.黒い瞳のナタリー*
16.バンボレオ*
17.エル・アモール(愛)*
18 愛しき女性よ*
◆フリオ・イグレシアス・オフィシャルサイト
日本国内でも6月27日に発売されたベスト・アルバム『1』が、先行販売されたラテン圏にてiTunesなどを含む多くのチャートでNo.1を獲得しており、本人曰く、過去最大の成功作となっているという。アナログレコード、CD、デジタル配信…と音楽のメディアが変わっても、いつの時代もフリオ・イグレシアスは頂点を極める至高な存在のようだ。
とはいえ、彼はミュージシャンとしての輝かしい成功が始まる前、サッカー選手として大きな挫折を経験している。フリオは決して元からミュージシャンを志していたわけではなく、サッカーの名門レアル・マドリードのユース・チームでゴールキーパーを務めていた選手だった。彼は、晴れて1軍選手に登録された矢先、交通事故で全治約5年の瀕死の重傷を負い、選手生命を断たれた。療養中にリハビリとしてギターをはじめ、それがミュージシャンとしての活動が始まるきっかけとなったのだ。
一度は大きな挫折を味わいながらも、立ち上がり、成功をおさめ、それを継続させているフリオだけに、「人」として考えや生き様にもスポットは当たってしかるべきであろう。新たな偉業を打ち立てたアルバム『1』は、自身の選曲によって名曲の数々を再レコーディング・リマスタリングし、今求められる最高のクオリティーで収めた2枚組のベスト盤である。本作品について掘り下げていく最新のインタビューの中で、フリオの成功の理由、そしてその継続の秘密などが明らかになった。
――素晴らしい曲の数々を再録音、リマスタリングされた経緯と心境を教えてください。
フリオ・イグレシアス:40年前に録音活動を始めた頃は、音に今ほど深みがなかったような気がずっとしていたんだ。そもそもデジタル録音でもなかったからね。そんな感じで、長年の間に、もっといいものにできるんじゃないかと思うようになってきたんだ。それに、自分のためにも録っておこうと思ってね。もしかしたら将来的には、若者たちが私の曲を聴いてみたいと思ったときに、昔のままではサウンドが適切でないと思うかも知れないから。うちには4歳、10歳、14歳の子供がいるけれど、少なくともこの子たちがアルバムを聴いたら、「(息子の)エンリケみたいな音じゃないけどちゃんとした音に聞こえる」と思ってもらえるはずだよ。「昔のヴァージョンの方が好きだ」という人もいるだろうとは思うけれど。今私に訊かれたら、比較は存在しない、比較の問題じゃないと答えるね。しかしながら音には100倍深みが出ている。また、自分の60年代、70年代、80年代、90年代、2000年代のアルバムを紐解いてみると、サウンドが100倍良くなっているのが分かる。声も100倍良くなっているんだ。40年前の魂が書いた曲にはまたチャンスが与えられるべきだと思う。だからこそ今回こうしてみたんだ。私がクレイジーだと思う人もいるかも知れないけれど、それは構わないよ。
――長年の間にご自身はどのように変化、進化されたと思われますか。
フリオ・イグレシアス:ほら、私は生まれながらのシンガーではないだろう?青年…大学に通うスポーツ青年として育っていたんだ。シンガーになるとは全く思ってもみなかった。交通事故にあって、サッカー選手としての選手生命を断たれてからギターを弾くようになったけれど、本当に、自分はシンガーには向いていないと確信していたんだ。ところが皆が長年の間に私に運を与えてくれた。それで…本格的に学んで本当のプロらしく歌えるはずだと本気で思うようになった。そうして長年の間に様々なチャンスを与えてもらった結果、今はようやくプロだと自信を持って思えるようになった。無理だったものを少しずつ克服して積み重ねていったんだ。
――新しい世代についてはいかがでしょう?このアルバムは、スペインのiTunesなどで1位になっていますね。今の若者はiTunesで曲を購入しますが…ご自身の音楽と若い世代とのこのような繋がりについては満足していらっしゃいますか。
フリオ・イグレシアス:離れた世代に自分の音楽が届いたとき、アーティストは天国にいるような気持ちになるものだよ。40年前には考えもつかなかった気持ちだね。レコード会社に「iTunesはご存知ですよね?」と訊かれて、改めて気づいたんだ。私はiTunesが何か知らなかったのだよ!それで「iTunesとは何だね?」と尋ねたら、iTunesというのは若者がアルバムを買うところで、あなたが1位になりました、と教えてくれた。「信じられないね」と言ったよ。私は最後まで全うしきって死ぬ。もっと向上できるはずだと思いながら。人生は常にチャンスの連続だからね。私には常に素晴らしいチャンスが与えられてきたんだ。だからiTunesも、その人たちのお父さんやおじいさんも…常に私にチャンスを与え続けてくれているんだ。私は何てラッキーな男なんだろうと思うよ!人間はみな学ぶために生まれてくるのだ。学ぶことができないとアルバムが売れなくなる。様々なものごとが止まる。情熱も止まる。人生のあまりにも多くのことが止まってしまうんだ。だから、私の人生は何事も止めたくないと思っているよ。
今回のベスト盤『1』はまさにフリオの生き様を表現した作品となった。ギネスブックで世界一となった成功の裏には、謙虚な気持ちと絶えることのない情熱が息づいているようだ。
フリオ・イグレシアス『1』
2012年6月27日発売
SICP 20385~6 [2CD] 高品質Blu-spec CD ¥3,500(税込)
※歌詞&対訳付/コメント:フリオ・イグレシアス/特別寄稿:湯川れい子/解説:村岡裕司
* Re-recording Version
Disc-1
1.クレイジー
2.ホエン・アイ・ニード・ユー
3.ビンセント(スターリー・スターリー・ナイト)
4.L.A.より99マイル
5.アンド・アイ・ラヴ・アー
6.オールウェイズ・オン・マイ・マインド*
7.クレイジー・イン・ラヴ
8.フラジャイル (duet with スティング)
9.カルーソ (feat. ルーチョ・ダッラ)
10.かつて愛した女性へ (duet with ウィリー・ネルソン)
11.オール・オブ・ユー(feat. ダイアナ・ロス)
12.ムーンライト・レディ
13.好きにならずにいられない
14.マイ・ラヴ (duet with スティーヴィー・ワンダー)
15.ザット・ユー・ラヴ・ミー(duet with ドリー・パートン)
16.マイ・ウェイ (duet with ポール・アンカ)
17.サマー・ウィンド (duet with フランク・シナトラ)
18.レット・イット・ビー・ミー (feat. アート・ガーファンクル)
19.煙が目にしみる (duet with オール・フォー・ワン)
20.「カサブランカ」~時の過ぎゆくまま/アズ・タイム・ゴーズ・バイ [Live Version](duet with ステファニー・スプライル)
Disc-2
1.ヘイ*
2.ひとりの女の愛のために*
3.メバ・メバ*
4.マヌエラ*
5.ガリシアの歌*
6.愛に死す*
7.想いのとどく日*
8.人生を忘れて*
9.コラソン・パルティオ(壊れた心)
10.少女から大人へ*
11.ラ・カレテーラ*
12.アモール・アモール*
13.デローチェ
14.ラ・クンパルシータ
15.黒い瞳のナタリー*
16.バンボレオ*
17.エル・アモール(愛)*
18 愛しき女性よ*
◆フリオ・イグレシアス・オフィシャルサイト