SING LIKE TALKING、7年半ぶりの新アルバム『Empowerment』大特集
SING LIKE TALKING
7年半ぶりの新アルバム『Empowerment』 2011.5.18リリース
INTERVIEW
佐藤竹善(以下、佐藤):あっという間でしたよね。いつはじめるかって決めていたわけでもなかったので、気づいたら……という感じだったんですけど。きっかけは、一昨年前にFM802のイベントにSING LIKE TALKINGとして出演したことだったんですよ。そこで久しぶりにライヴをしたらとても楽しくて。一緒に出演した方や、観に来てくださった方の歓迎ぶりもとても嬉しかったということもあって、SING LIKE TALKINGを再始動しようと。
佐藤:それは良かった。あの曲が1曲目になる予定ではなかったんですよ。“これを1曲目にしよう”って言った(藤田)千章さんの感性が素晴らしかったんじゃないでしょうか。アレンジ自体はファンクなので、楽しく遊び心いっぱいでと思って。ただ、頭についているボサノバの部分は飛び道具みたいなものじゃないですか。これをアルバムの1曲目にするっていう発想は僕にはなかったんです。1曲目というのはアルバムの顔になりますからね。
藤田千章(以下、藤田):ふふふ(笑)。欲張りなんですよね。
西村智彦(以下、西村):そう、節操がないんですよ。
佐藤:色んな音楽が好きですからね。それが×3人ですから、そこが出ますよね。
西村:カテゴリーが広いんですよね。映画音楽が好きだったり、ロックだけではなく民族音楽も好きだから、一つのカテゴリーじゃないんですよね。
佐藤:デビューしたときからそうだけど、自分が普段聴くCDがあるでしょ。聴く音楽とやる音楽の差ができるのが嫌なんですよね。SING LIKE TALKINGは生業としての音楽。で、普段楽しむのはこれって、そういう風になるのがすごく嫌なんです。それなら音楽をやる意味合いを感じない。
佐藤:うん。音楽って趣味が反映されるじゃないですか。趣味から始まって、それが仕事になったときに、趣味から始まったということを誇れるような作品でいないと。今作も“これカッコいいね!”っていう積み重ねで作品を作っていったというところはありますね。経験値が増えていくと、みんなやること成すことが既知感になっていきがちなんですけど、それに埋没することもなく、新しい発見があったり、新しいアイデアがあったり。何しろ、予想もつかない音が生み出されたりっていうのは何度もありましたので。それがあるうちは大丈夫だなと思いましたね。
佐藤:僕らはいつも言いたいことをタイトルに集約するんですけど、『Empowerment』の意味合いが全体像なんですね。今作は、どんな状況の人でも、必ず自分の力で越えて行けるんだっていう能力を持っているという気持ちをどこまで喚起できるかということを、千章が色んな角度から表現してくれました。
佐藤:いま言ったような意味合いを一つの単語で表す言葉がないかって半年くらい考えていたんですよ。いろいろ探しては違うなぁって。その中で出会った単語なんです。辞書にも載ってないんですけど、ここ2~3年の間で“自己の力による、各個人それぞれの内面的可能性の開花”という解釈で、介護の分野から出て来た言葉なんですけどね。
佐藤:そうそう。今や国連の会議でも使われる。色んな国が、アフリカのような国を支援するときに、お金だけをあげるのではなく、自分たちで頑張れるように下支えしていくのかどうかとか、あくまで頑張るのは本人たちであって、彼らの可能性をいかに引き出すのかが本当の意味での支援だということで使われる言葉なんです。
佐藤:結局、震災前から、日本でだけではなく、景気も悪くて、就職もないという状況だったでしょ。それに追い打ちをかけるような震災ですから。ある意味、震災前も震災後のような精神状態に近い状態の人たちがいたと思うんです。震災前のそういう世界を見つめながら、どんな立場の人でも前に進めるようになるために、どういう思いで歌を伝えようかなって。時に励ます曲も必要だし、時には励まさないで、ただ側にいるだけの曲も必要だし。きっと大変な被害に遭ったところの人はまだ聴く余裕はないかもしれないけど、日本中、元気がないですよね。でも、被害に遭っていない人が元気にならないと、現地の人を支えられない。音楽の役割というのは、その時々の場所、タイミングで違うなと思います。
佐藤:いい年ですからね(笑)。僕らは頑張っても駄目だった人をいっぱい見て来ているんです。頑張ればいいってものではないということは100も承知なんです。若いときの僕らの作品には“頑張ろう!”って曲も多いんですよ。それは僕らも若かったからそれでいい。今は年齢なりに色々見て来たうえで、頑張ろうって言葉よりも大丈夫って言葉のほうが何十倍も力になったりすることを知っているので。
藤田:今必要なものというか、生きてて楽しいこと、気持ちいいこと、感動して面白いこと、そういう喜び。思い出すと辛いこともあるけど、とりあえず、そういう喜びの感覚を自分の中で思い起さないと。思い起せばそれが元気につながるから。そういう風なことが今必要なんだと思う。その一端を音楽が担って行ければいいんじゃないかなと思うんです。それは音楽に限らず、美味しいものでもなんでもいいんですよ。温かいお風呂でもいいし。でもそういうことが大切なんじゃないかなって。
佐藤:そうそう。心のきっかけを作るのが僕らの仕事なんですよね。音楽では世の中は変わらないけど、変える人を生み出す力は死ぬほど持っているので。なるべく良質のきっかけを作るっていうことですよね。
佐藤:西村さんの思いつきで(笑)。
西村:「Do-Nuts?」というのはですね、あまりよろしくない意味なんですよね(笑)。“Nuts”という言葉はスラングで、“いかれてる”というような意味もあって。アメリカでトラックダウンをしていたときに、この曲のタイトルが思いつかず。僕は家電マニアなんで、アメリカでも家電量販店に行ったんですよ。向こうって、変なものがいっぱいあるんですよね。なんとかマシーンとか。その中にドーナツを作る、ドーナツマシーンみたいなものがあったんです。まさにこのスペルで、“Do-Nuts”って書いてあって、これはいただきだ、と(笑)。
西村:そうそう。ずっとヘラヘラしているような。ちょっとシュールでもあるなぁと思ってね。そんな深い意味はないんですよ。
西村「“Dog Day”っていうのは日本でいう土用の丑の日のことなんですね。真夏の一番熱い盛りの。去年、すごく暑かったじゃないですか。それこそ、日中は“俺を殺す気か!?”っていうくらいに。蜃気楼じゃないけど、空気もモヤモヤしている感じの昼間、青山通りをサラリーマンが次の現場に向かうために歩いているわけですよ。本当にもうグダグダな状態で。それが頭に残っていて、絡み付く、ネットリしたうだるような暑さの中を歩いているような曲を描いてしまったんです(笑)。西村:そうですね。僕は景色が見えるような音楽が好きなんです。映画のサントラじゃないですけど、聴いてて心情より景色が見える。そういう感じで作りました。実はこの曲はインタールードのつもりで作ったんですよ。5分くらいあるんですけど、どこかをちょん切って、間に入れようと思ってたんです。でも竹善くんに言わせると間に入れられないって(笑)。
佐藤:居場所がない(笑)。で、どんどん後ろに下がってって、エンディングロールみたいになりましたよね。だったら短くしなくていいよってフルサイズになりました。そうしたらさらにエンジニアのジョンがハマって、フルサイズプラス、編集して、さらに頭につけたので、フルサイズよりも長くなったという。
西村:そんなに大げさな曲じゃなかったのにね。
佐藤:今回のツアーは7年半ぶりのツアーでもあるので、アルバムの内容を詰め込むというよりは、“久しぶり”という感じで、アコースティック編成なんです。その後、フルバンドでツアーを組むことになったとしたら、そっちのほうでアルバムのサウンドを中心にしつつ、昔の曲もバンドサウンドで聴かせられたらと思いますね。震災で被災したファンの方も大勢いるので、そのときは、生活が整った状態で、観ていただけるようになっていればいいですね。
この記事の関連情報
SING LIKE TALKINGが35周年記念EPをリリース、記念ライブには小田和正も参加
KANと馬場俊英、佐藤竹善迎えたトーク&ライブ番組を生配信
チーム コカ・コーラ公式ソングにAI、秦 基博、Perfume、テミン(SHINee)、三浦大知ら14組が参加
SING LIKE TALKING、初の無観客配信ライブ決定
SING LIKE TALKING、30周年イベントの会場限定映像をYouTubeプレミア公開
SING LIKE TALKING、新シングル+西村智彦の5年ぶりソロアルバム発売決定
SING LIKE TALKING、キャリア初のアナログ盤限定セレクトアルバム発売
オフコースの名曲をフルオーケストラで、『オフコース・クラシックス』発売
【ライブレポート】SING LIKE TALKING30周年記念ライブスタート、鏡開き&振る舞い酒も