約2年ぶりのアルバムにしてAqua Timezの最高傑作『カルペ・ディエム』完成

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Aqua Timez

4th Full Album 『カルペ・ディエム』 2011.02.16 Release

INTERVIEW

いい曲を作って届ける。シンプルなことをもっともっと増やしていきたいと思いますね。(太志)

――聴き手としては、シングルのこの曲からサウンドが整理されたというか。ピアノやストリングスを筆頭に、耳に入って来る音の感触が変わった気がしていて。

mayuko:まさしく、この曲がアルバムの導入だったというか。Aqua Timezなりのロック感がひとつ、確立できたのかなぁと思いますよね。あとはやはり、太志のこの詞でしょ。

――うん。<僕ほんとうは 独りが嫌いだ 大嫌いだ>って歌った時には、ついに言ったなぁって思ったもんね。真夜中だからこそ、こぼれた本音というか。

太志:そうそうそう(照)。歌いたいことを、歌えた曲です。で、僕のお気に入りは、「MILKY BLUES」。一番最後にレコーディングした曲で。

mayuko:ホントにギリギリ。年をまたぐ勢いだったよね。

太志:なんかこう、必ずしも韻を踏むということが1バースの中で出て来なくても、1サビ、2サビ、3サビというところでも使えるものなんだっていうのが少しずつわかってきて。<ギブス>と<ミルク>と<リズム>。まさに響き先行で、言葉が持つリズムを感じることで、自分でも意図してなかった物語がどんどん生まれて来る驚きと喜びですよね。

――それって歌詞を作るというより、言葉の周りにあるものを見つけていく作業な感じがする。

太志:そう! 一個の言葉の周りにはすごくたくさんの情報であったり、意味であったり、空気感があるから。これはメロディも俺が書いたんですけど。メロディこそギターでなんとなく作ったけど、パソコンの前には一回も座らなかったからね。ハッキリ言ってもう嫌だったんだわ(笑)。ほら、最後の最後だったからさ、制作っていう枠からちょっと出たかったのね。だからノートに向かって落書きみたいに言葉を書いていくと、こういう単純な韻の踏み方になっていって。何も考えない瞬間に出てくるフレーズにドキドキして。作ることって楽しい! って純粋に思えた曲です。

大介(G):僕は「メメント・モリ」。アレンジが史上最強に難航した曲で。

――かなり複雑な構成だから。

大介:そうなんですよ。始めから、ライヴで重要な位置づけの曲になるだろうっていう話をしてて。もちろん全作品妥協はないんだけど、このアルバムだけじゃなくバンドにとっても大切な曲だからこそ、迷いまくったというか。でも仕上がったものを聴くとすごくパワーを感じるし、一人じゃ絶対にできない、バンドならではの曲になったと思うし、ホントに大好きな曲です。

――5人が生きる意味、音楽を鳴らす意味がギュッと詰め込まれた。そして聴き終わった後にはしっかりと光が見えて来る曲だと思います。

大介:うん。やっぱ<嬉しくて歌い続けてきたこと 向き合ってくれるあなたがいる今日>最後のこの2行ですよね。

TASSHI:となれば、僕はもちろん「カルペ・ディエム」です。

――良かったぁ。自分で振っておいて、誰もタイトル曲のこと言わなかったら……とドキドキで。

TASSHI:(笑)。原型は3年前からあって。5人でやったら絶対よくなるって確信もあって。でも曲って完成するタイミングがそれぞれ違うから、やっと今、今だからこそ、ずっとやりたかった世界観を実現できたというか。静と動の対比だったり、激しいサウンドをカオスのような雰囲気まで持って行った先に美しいチェロの音が鳴っていたり。そこにさらに太志がものすごい歌詞を持って来てくれたんでね。うん。ハンパない化学反応が起こって、とてつもなく巨大なものができあがったっていう。個人的な話になりますけど。ビョークだったり、パヴァロッティだったり、特定のアーティストにだけ感じる、音楽が感情に直接訴えかけてきてこう、心臓をグッと握られるみたいな感覚。完成した「カルペ・ディエム」を聴いた時にそういうふうな感覚に陥ったんですよね。ようやくというか、自分たちの成長も感じられた曲です。

――「ものすごい歌詞を持って来てくれた」と言われてますけども。

太志:それはもうTASSHIが素晴らしいオケをアップロードしてくれてたから(笑)。

――アップロード?

太志:曲ができると共有のサーバーにあげるんです。それをダウンロードした瞬間、感じたよ。プロトタイプではあったけど、フッと持って行かれて、自分がどこにいるのかわからなくなるような曲ができる予感を。だから中途半端には作りたくない曲だなって思いましたね。TASSHIも言ってたけど、もちろんまだ完璧からはほど遠いかもしれないけども、目指して来た世界を少し表現できたという手応えはあって。だからマスタリングを終えてから、この曲はすごく聴いてた。練習とかそういうのを抜きにして普通に聴いてましたね。

――「カルペ・ディエム」(今日という日の花を摘め)は、「メメント・モリ」(死ぬことを記憶せよ)と繋がっていて。それはアルバムすべての曲に貫かれていて。そういうことを強く意識するようなことが何かあったんだろうか?

太志:んー、やっぱり年齢だよね。年齢と経験は比例していくから、必然的に別れの回数も増えるし。みんな最期っていうものを持たされて生まれて来て、それがいつかもわからない。人との別れに慣れることはないので。そういう蓄積が自分を作ってると思うし。なので今回のアルバムは、最近の自分そのままを描けたなぁと思いますね。

――けど絶対に来る死をネガティヴに捉えてないのがいいよね。だから今を懸命に生きるんだって、とてもポジティヴだもん。

太志:最近、佐野元春さんとご一緒させていただいて。その時に大ちゃんが質問したんですよ、「ミュージシャンとしてやっておいた方がいいことはありますか?」って。そしたら「30歳には30歳にしか書けない曲がある。だから今でしか作れない曲をたくさん作っておいた方がいいんじゃない?」って言われて。その言葉が心にストンと落ちて来たというか。佐野さんだから、本当のことだから。偶然かもしれないけど、そういう出来事が今起きるのが自分たちにはすごく意味のあることで。いい曲を作って届ける。シンプルなことをもっともっと増やしていきたいと思いますね。今しか作れない僕らの音楽=アルバム『カルペ・ディエム』ができたので、どんな方法でもいいから聴いてほしいんですよね。

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