Dolly、ツアーファイナルで見せた濃密な2時間半
結成してから5年間、独自の道を追求し続けてきたDolly。その“今の姿”を見せつける2ndフル・アルバム『CUPSULE』が9月に発売され、2010年10月30日、赤坂BLITZにて『CUPSULE』ツアーのファイナルが行なわれた。
◆Dolly画像
アルバム『CUPSULE』の世界観をなぞっていくかのように、SE「-Enter-」からライブはスタート。まるで不可思議な夢の入口に立っている感覚の中、オーディエンスはcapsule worldに促され、トランス状態へと落ちていった。
続いて、恍惚とした脳を刺激したのは「PLAY」の一撃。重低音が衝動を掻き立て、一気に縦ノリへと変化すると、赤坂BLITZは大きく波打った。「派手に揺らして行くよ!行けるかっ!?」蜜の煽りに触発され、「1999-Last Judgement-」もそのままの勢いで駆け込んでいく。とは言え、メンバー達のパフォーマンスは至ってスマート。やたらとキャラクターを作り込むことはなく、それでいて、ただ必死に演奏しているわけでもない。高ぶる想いを抱えながらも、5年間で徐々に形成された自らの色をストレートに表現しているといった様子だ。
しかし、『「R」』で帽子を脱ぐと、蜜が上手・下手へと突如疾走。「蜜の帽子は、コンセプトの象徴であると共に、理性の証でもあるのか?」そう思わざるをえないほど、感情の温度は急激に上がっていった。
台風の影響で、土砂降りの中行われたこの日のライブ。それでも、続く「紫陽花」では、雨の持つノスタルジックな美しさを伝え、Dollyはオーディエンスの心をがっちりと捕らえていた。繊細で硬質な音の欠片が、雨粒と共に降り注いでいる。小道具を遣わずとも、そんな幻想的なシーンが目に浮かぶ、彼らのライブ。夢か現か、その狭間で揺れている気分に、その場にいた誰もが陥っていたに違いない。
そして、聖のギターが腹の底を抉るように唸ると、ハードナンバー「天体逃避行」へ。蜜は頭を振り、はちと聖は立ち位置を変えながら全身でリズムを刻んでいく。ステージに向かってギュウギュウに押し込まれたオーディエンスがヘドバンを繰り返す様は、まさしく圧巻…というより、脅威に感じられた。でも、ただ暴れるだけじゃないのがDollyの魅力。激しさを加速させながらも、サビではキャッチーなメロディを響かせ、気持ちの良いギャップを見せる。その絶妙なコントラストが、Dollyの独創的な世界観を引き立てているようだ。
「落下する世界へ…。アルビノ」鼓動の音が共鳴するフロアに蜜がそっと呟くと、スクリーンには、歌詞とリンクした映像が次々に流れていく。演奏と自らの脈の音が重なり、すっと身体に沁み込んでいく4人の音。忘れていた想い出を呼び起こす、優しくも切ない「アルビノ」の世界。最後に告げた「ありがとう」の一言さえも歌詞の一部に聴こえてきたのは、それほどまでに、曲の生み出す空気感に自らが飲み込まれていたからなのだろう。
しっとりとしたナンバーから始まった本編後半は、「Vertigo」で助走をつけると、「シャイニーメリー」を皮切りにラストへ向けてヒートアップ。色とりどりのサイリウムが彩るフロアを見つめ、メンバーは満面の笑みを浮かべていた。
だが、表情とは裏腹に、発せられるのは挑発的な言葉の数々。「この5年間の中で1番でかい声をこの曲にぶつけてこい!」そう煽られると、「オレンジ」ではオーディエンスとメンバーのシャウトが激しくぶつかり合った。振付もあり、ヘドバンもあり…とあらゆる要素が集約されたこの曲。ライブの醍醐味を味わいながら、5周年という節目を身体全体で祝うオーディエンスの姿からは、“Dollyへの愛”が溢れてやまない。
そうは言っても、ライブのタイムリミットは刻一刻と迫ってくる。その想いを汲み取り、蜜が「こんな素敵な夢のような時間が、これから先もずっとずっと続きますように…」と言葉を添えると、本編ラストは「星の砂時計」を披露。バンドでありながら、4人の紡ぐ音楽は、オルゴールが奏でる、少し哀愁を帯びた柔らかな音色のよう。そこにオーディエンスの歌う声が時折重なり、5年間Dollyを支えてきた存在の大きさを伝えていた。
アンコールを終えると、ファンには嬉しいサプライズが。2011年3月に9thマキシ・シングルを発売することが決定。そのシングルを引っ提げての単独公演ツアー<THE 5COASTER'S CABARET Vol.2>を行なうことが発表されたのだ。
その後、狂気乱舞するオーディエンスの前にメンバーが再登場。5年間を思い起こし、「全てが想い出。」(亜樹)、「以前、ライブの日に、父親の訃報が届いたことがあって。それでも、ライブに出たらみんながいつもと変わらずニコニコしていて、そこで勇気をもらった感じがしたんだよね。それからは、みなさんの顔をすごい見るようになりました。」(はち)、「こういうワンマンの時って、いつも温かみを感じる。そのお陰で曲が出来たりもしたし、それをまたみんなに届けられるので、やめられませんですよ。ずっとやっていきたいなと思います。」(聖)、「こうやってステージの上で歌い続けられるっていうのは、本当に幸せです。感謝してます。」(蜜)とコメント。
「クロゼットレター」と「四季彩グラデーション」に5年分の感謝を込めて、ツアー・ファイナルは華やかに幕を下ろした。
2時間半もの間、さまざまな景色を映し出しながら走ってきたDollyという名の「時の列車」。「この先も走り続けていきたい」と話す蜜の言葉を信じて、この先も、みなさんには是非同乗していただきたい。きっと、まだ見たことのない景色を見せてくれるはずだから。
TEXT:斉藤 碧
PHOTO:YAMAGISHI SHIN OFFICE