御喜美江、日本初演「6台のアコーディオン」
2010年9月18日14:00。浜離宮朝日ホールで行なわれた<御喜美江アコーディオン・ワークス2010>。2010年は彼女にとって記念の年。<御喜美江アコーディオン・ワークス>が今回で20回。そして、ドイツの音楽大学で教え始めて30年。また、アコーディオンを習い始めてから50年という数字が見事に揃った年なのだ。
◆<御喜美江アコーディオン・ワークス2010>画像
最初は、独奏での演奏。アコーディオンといえば、庶民的な楽器と捉えていた自分が恥ずかしくなるくらい偉大で高尚な楽器だった。一つの楽器から出ているとは思えない音の厚み、存在感がある。
これまでアコーディオン以外では聞いたことがあるけれど、アコーディオンで聴くのは初めてという曲もいくつか。
そして、曲と曲の合間に行なわれる御喜美江によるミニミニ・インタビューは、彼女の人柄を象徴するようなとてもカジュアルでキュートなもの。クラシックコンサートというと敷居が高く感じるが、彼女のキャラクターのおかげで、とってもリラックスして聴くことができる。
「雪・風・ラジオ」は、本来はロッコ・アンソニー・ジェリーの依頼で書かれた曲。ホワイトハウス近くの教会で演奏するということで、反戦俳句をもとにつくられた3楽章だ。彼の初演よりこのワークスが先だったため、演奏許可をとり今回の演奏となっだ。この二重奏は、椅子を向かい合いに置いて俳句を英語と日本語で詠み上げ、その後演奏するというスタイル。とても重い内容。心が引き締まる。
休憩をはさんで、最初の曲は9月12日に行なわれたJAA第5回国際アコーディオン・コンクールの優勝者による演奏。今回の優勝者は、もともとこのワークスに出演予定だったヘイディ・ルオスイェルヴィ。そのため、とても話が順調に進んだとか。演奏曲はコンクールの課題曲。
そして、続く曲は、アコーディオン奏者としてテレビにも多数出演しているcobaの曲。とてもポップ。アコーディオンは非常に重く、座って演奏するのだが、この曲は立っての演奏。踊りたくなるような軽やかさだ。
ラスト曲は、日本初演になる「6台のアコーディオン」。1973年に作曲、初演された「6台のピアノ」のアコーディオン版。また、6台のマリンバでもこの曲は演奏されている。パートの担当は、以下の通り。
Part1:柴崎和圭
Part2:御喜美江
Part3:荒木奈緒子
Part4:松原智美
Part5:大田智美
Part6:ヘイディ・ルオスイェルヴィ
この曲は、アコーディオンの楽曲にしては、非常に長い約18分の曲。また、Part1~3は、終始同じ8ビートをリズム・パターンを演奏し続けるというもの。6人の息が合わないと成立しない曲だ。演奏は見事だった。引きこまれる感覚。刻まれるビートの心地良さと正確さに、背筋が伸びる思いだ。曲の最後も、見事ピタリと終わり、圧巻だった。
アコーディオンへの知識が非常に低かった自分。身近でありながら、こんなにも偉大な楽器はない。
今回の<御喜美江アコーディオン・ワークス>では、20回を記念して銀座の甘味処「立田野」が出店。その理由は、彼女のマネージメントを13年続けた女性が、3年前自分の好きな道へということで和菓子の世界へ。その彼女が今は銀座の甘味処「立田野」の店長。御喜が好きであるバター入りのどら焼きやあんみつなどを販売した。
<御喜美江アコーディオン・ワークス2010>
・C.F.ヘンデル/ハープシコード組曲第5番ホ長調より「調子の良い鍛冶屋」変奏曲
・J.コズマ/枯葉
・P.グラス/モダン・ラブ・ワルツ
・M.K.オギンスキ/さらば祖国よ
・J.ティエンスー/「ムッタ」3台のアコーディオンのための(1987)
・高橋悠治/「雪・風・ラジオ」2台のアコーディオンのための(2010)※世界初演
・吉松隆/オニオン・バレエ組曲 作品104(2008)より第3曲「アリア1」、第5番「ダンス」
・coba/F.ツァーベル編曲─「SARA」3台のアコーディオンのための(2010)
・S.ライヒ/6台のアコーディオン(1973/2010)※日本初演
<2010輝きフェスタ御喜美江アコーディオンコンサート>
2010年9月24日(金)19時開演
@かめありリリオホール
http://www.k-mil.gr.jp/calendar/lirio.html
<旧朝香宮邸東京都庭園美術館コンサート>
2011年3月31日(木)15時開演
@東京都庭園美術館・大広間
※終演後ティータイムつき
http://www.crystalarts.jp/topics/topics.php?code=1264469188
◆御喜美江オフィシャル・ブログ「道の途中で」
[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/