【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】 第8回 「Joni Mitchell とジャケットの魅力」

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D.W.ニコルズの鈴木健太です。

僕は、部屋にレコードを飾っています。そのときどきの気に入っているアルバムや、季節に合ったデザインのジャケットのものなどを1、2枚。レコードのジャケットは大きいし、それにデザインも凝ったものや洒落たものが多いので、そういった楽しみ方もできるのです。


今、部屋に飾っているのはこのアルバム。『Joni Mitchell / Song To A Seagull』。

Joni Mitchellの'68年のデビュー作。溢れる才能。一般に評価されるのは次作以降ですが、この1stからその才能は溢れ出ていて、すでに彼女の唯一無二の音楽性は確立されつつあったことがよくわかります。David Crosbyがプロデュース、Stephen Stillsがベースで参加しているものの、基本的には弾き語りの作品。しかしまったく飽きさせません。メロディ、和音の使い方、コード展開、リズム、どれをとっても個性的で感性が光る。そして歌もこの頃から既に超一級品。

次作からの傑作群に隠れて今ひとつ注目されないこのデビュー作ですが、素朴でパーソナルな作品だけに彼女の根っこの部分をより感じることができる好盤です。

そんな『Song To A Seagull』ですが、リリースが'68年となかなか古い上に、セールスもあまり伸びなかったためか、オリジナル盤は結構いい値がします。このアルバムのオリ盤はずっと欲しくていつも探していたのですが、見つけるたびに値段を見ては我慢していました。しかし2010年の春、ついに手に入れたのです。“キズ有り”ということでかなり安かったのですが、目立つキズはほんの一部で、しかも針とびするほどではなかったので、これは本当に幸運な出会いでした。

こういった弾き語りのようなシンプルな音構成の作品でも(というか、だからこそというべきかもしれませんが)、オリジナル盤の音のよさは格別です。アコースティックギターの音はちゃんと“木の鳴り”がするし、細かなニュアンスまでしっかり聴こえてきます。そして声は伸びやかで、艶やかで、ふくよかで、存在感がありながらもスーッと耳に心に入ってくるのです。また温かみのあるリバーヴ感が彼女の歌声の透明感を一層引き立てます。

本当に気持ちのいい自然な質感なので聴いていてもまったく疲れず、ついつい繰り返し聴いてしまいます。
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