フジファブリック志村が夢見た15年越しの凱旋ライヴに豪華メンバーが花を添える

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2009年12月24日に急逝したヴォーカル/ギターの志村正彦の遺志を継ぎ、7月17日(土)予定通り実施されたライヴイベント<フジファブリックpresents フジフジ富士Q>。このイベント当日、16,000人の観客が押し寄せた富士急ハイランド コニファーフォレストは、95年8月19日、当時15歳だった志村少年が奥田民生のライヴに衝撃を受け、そこから生涯音楽の道を志すことになった運命的な場所。志村にとって、このステージに立つことは、ひとつの大きな夢が叶う瞬間でもあったはずだろう。

◆<フジファブリックpresents フジフジ富士Q>画像

そうした思い入れの深い会場、志村にとって15年越しの夢の場所であるコニファーフォレストで、フジファブリック主催イベントを実現するために、奥田民生、斉藤和義、吉井和哉、くるり、氣志團、PUFFY、藤井フミヤなど、そうそうたる15組のゲスト・アーティスト達が出演を快諾し、今回のイベント開催に至った。志村が生まれ育った土地でありそれぞれにフジファブリックとの交流があり、バンドと共演する形でフジファブリックにまつわる作品を演奏していくという、1日限りのプレミアム・ライヴ。

オープニングは、2008年5月に行なわれた富士五湖文化センターライヴ同様、志村の母校・下吉田中学校での卒業記念CD(平成七年度)より、志村自身も参加していた合唱曲「大地讃頌」が流れてイベントがスタート。

今回の<フジフジ富士Q>では、かねてからの志村の希望を汲んだ形で、母校である下吉田中学校、吉田高等学校から在学生30人ずつ60人を「志村シート」に無料招待。もしかしたら、かつての志村少年のように、この中から、将来音楽家を志す若者が現れるのかもしれないと思うと胸が躍る。

志村正彦の想いを継いだ粋な演出の後、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)、山内総一郎(G)のフジファブリックメンバーが、サポートドラム刄田綴色(from東京事変)と共にステージに登場。16,000人というコニファーフォレスト最大級の観衆で埋め尽くされた客席からは大歓声と拍手が巻き起こり、待ちに待った夢の舞台のスタートを大いに盛り上げる。

トップ・バッターとしてステージに姿を現したのは、奥田民生。フジファブリックの記念すべきメジャー・デビュー・シングル「桜の季節」を熱唱して、会場のボルテージを冒頭から一気に加速させた。

次に登場した安部コウセイ(HINTO)が「晴れましたねー!」と「虹」を歌うと、急に雲間から太陽が顔を出すマジックも。週末の梅雨明けを宣言するような鮮やかな晴れっぷりを祝しての万歳三唱に続いては、疾走感全開の「モノノケハカランダ」でさらにヒートアップ。

続いてのハナレグミは、2007年の倶楽部AKANEIROでも共演した「ダンス2000」と、シングル「Sugar!!」のカップリング「ルーティーン」をアコースティックでしっとりと披露した。

続くクボケンジ(メレンゲ)は「バウムクーヘン」の後、フジファブリックとの長いつながりを語り、「志村は本当に大親友でした。いや、大親友です。彼の残したものを少しでも多く表現して、みんなと一緒に今日は楽しんで帰りたいと思います」というMCと共に、「赤黄色の金木犀」へ。なかなかライヴで聴けない名曲とあって、会場からは歓声と拍手が起こる。

まるで志村が乗り移ったかのような歌にせつなさを残しつつ、クボがステージを去り、余韻に包まれた中で斉藤和義が登場。フジファブリックの作品の中でもプログレ色の強い展開の「地平線を越えて」を歌い、「志村君の曲、めんどくさい。ギターは難しくて、メロディーはへんてこりんで。なんでメンバー止めなかったの?」とMCで笑いを誘いながら、アコースティックギターに持ち替えて、心に沁みる初期の名曲「笑ってサヨナラ」を披露。

「続いては」という紹介MCでPOLYSICSバイザーをかけた金澤がビジョンに映し出され、会場は大沸き。気づけばステージ上のメンバー全員がPOLYSICSバイザー(しかも本物を借用!)という演出の中、ハヤシ(POLYSICS)がバイザー+オレンジのツナギといういつものユニフォームで登場。「トイス! 半年ぶりのライヴです! 盛り上がっていきましょう!」と客席を煽り「TAIFU」へ。大歓声の中、“さらに盛り上がる曲行きます!”と「B.O.I.P」を絶叫タイトル・コール。やんちゃに暴れまわるフジファブリックの魅力全開のパフォーマンスの後、メンバー全員と客席の「トイス!」コールで会場全体がひとつになった。

志村がお気に入りだったという「トイス!」旋風が一気に吹き抜けた後、一転して呼び込まれたのは藤井フミヤ。「どうも、藤井です。今日は志村君のために歌います」と珠玉のピアノバラード「タイムマシン」を気持ちを込めてしっとりと歌い上げ、会場の空気をがらりと変えていく。ワンコーラス終えたところで会場からは自然な拍手が湧き起こるほどの素晴らしいパフォーマンス。そして「皆で一緒に歌いましょう」と、永遠の名曲「若者のすべて」で前半を締めくくり、しばしの転換休憩へ。

後半最初に登場した氣志團は、フジファブリック・メンバーを従えず、自身のバンド編成で登場。まずは「ダンス2000」で一気に氣志團ワールドを作り上げた後、團長こと綾小路翔のMC独壇場へ。

「元気ーっ? 氣志團ですよろしくー! ちょっとアツイけど、みんな元気出していこうぜ! フジファブリックのみんな、こんな楽しいイベントに呼んでくれてありがとうございます! 一見、なんでおまえらなんだ!?と思う人もいるかもしれません。私達フジファブリック、というか正彦とは縁が長く、たぶん99年かな、あいつが19歳くらいのとき、俺とギターのトミーとランマと一緒に働いてたライブハウスにかわいい男の子が履歴書持って来て。俺は一緒に早番やることになって、あいつの方がライブハウスに近くて、時々タイムカードとか押してもらってました(笑)。今の「ダンス2000」は、「One Night Carnival」って曲を正彦に聴かせたら「ディスコっていいっすね」って四つ打ちで曲作ってきて、この曲すげーなーって。でも、こんなにも軽快な四つ打ちなのに気が晴れない曲はないってことが今歌ってみてわかりました(笑)…ということでもう一曲やらせてもらいますが、この曲を聴いてあいつは本当に天才だと思って。で、あるときあいつが実家帰ろうか悩んでるときがあって、だったらこの曲くれねーかって本気で言ったら、実家帰るのやめますって言いました。そんな曲です。「茜色の夕日」」。という、團長の絶唱と共に、曲の展開に合わせるかのように太陽がどんどん西に傾いていった。

続いては和田唱(TRICERATOPS)。まずは「Strawberry Shortcakes」、そして「僕の大好きな、本当に特別な曲を歌いたいと思います。シムシム聴いてくれ」という曲紹介と共に「陽炎」を披露。不思議なことに、先程傾いたはずの太陽が再び顔を出し、夏の強い日差しがまた照りつける。雲に隠れていた富士山も少しずつ山頂部分の姿を見せ始めるという奇跡的な光景が広がる。アウトロのキーボードソロ直前に、「キーボード金澤ダイスケ!」と叫ぶ志村のおきまりのセリフをなぞる和田に会場から思わず喝采が。「和田唱!」と返す金澤に応え、和田と山内のギターの応酬で曲を締めくくった。

次のアクト、真心ブラザーズの前に、ベース加藤のツアー定例MCコーナー、「カトーク」が。この日は「カトッチ」と題し、「富士山とかけまして、好きな女の子の家と解く。その心は登頂(盗聴)したいのはやまやまですが…」という謎かけを(笑)。待ちきれずに呼び込まれる前に登場してしまう真心ブラザーズの2人。「TEENAGER」でまずは明るく盛り上げた後、スカパラホーンズも加わって、去年の「真心の先輩風でビュービュー!」ライヴでも披露した「線香花火」を貴重なコラボバージョンで。そして真心ブラザーズがステージを去り、スカパラホーンズがそのまま残って「あたくしこう見えてもサーファーですから」(北原)という前フリで、「Surfer King」をホーンズと金澤キーボードをフィーチャーしたインストバージョンとして演奏。サビの「フフーフフーフフー」という印象的なコーラスはもちろん入った状態の、ユニークなインストナンバーとなった。

続いては唯一の女性アーティスト、PUFFYの2人が登場。PUFFYのみ、フジファブリックの楽曲ではなく、志村がPUFFYに提供した楽曲を歌唱。まずは「DOKI DOKI」。2曲目の「Bye Bye」に関しては、まもなく発売となるフジファブリックのニューアルバム『MUSIC』にフジファブリックバージョンが収録されていることに触れ、「うちらちょくちょくそういうことされるんだよねー。本家の方がいいに決まってるじゃん! もうねー、セルフカバー禁止だから」と。さらに、「ラブソングなので、志村君に実体験でしょ? と聞いたら、いやーえっと…とかはぐらかしてたので絶対実体験だと思います」、との暴露話も含めて披露した。

そして、1stアルバム『フジファブリック』のプロデューサーでもある片寄明人がステージへ。1曲目の「花」では全員座りのアコースティック・セットで、当時のレコーディングで使用したハープとギターを持って来ての演奏で。だんだんと茜色に染まる神秘的な空の下、エレキに持ち替え、バンドセットで「サボテンレコード」を。最近、フジファブリックについて一気に何万字も文章を書いてしまい、ブログに載せたというエピソードをMCで語り、想いの強さが伝わってくる内容に胸が熱くなる場面だった。

茜色の夕日が沈み、次第に暗くなってくる時間帯に登場したのは吉井和哉。サングラスに黒シャツ、黒いジャケットというスタイルで、ロックスターのオーラを炸裂さながら「マリアとアマゾネス」を歌う。「何度も富士急には来ているけど、こんなにきれいに富士山が見えるのは初めて」「志村の代わりにはならないけれど、代わりに歌いたいと思います。大好きな曲です」と2曲目の「Anthem」へ。冒頭の歌詞とシンクロするように、本物の三日月が空に浮かぶ奇跡。圧倒的なパフォーマンスで締めくくった。余談だが、吉井は7月10日、志村の誕生日でもある日の自身のブログで、フジファブリックと志村のことに触れ「来週の土曜日に歌う曲を聴いていたら少し泣いてしまった/彼とは同じステージに立てなかったけど、今度のイベントでまた逢えるような気がする」と、彼への想いを綴っている。

そして、本編最後のゲスト・アーティストはくるり。「Sunny Morning」では、くるりの要望で、フジファブリックのベース加藤がギターを弾くという変則スタイル。岸田繁と山内の向かい合ってのギタープレイの応酬も印象的。「フジファブリックは今、日本一かっこいいバンドですよ。日本一輝いてます」というMCに、ちょっぴり照れたような表情のメンバー。そして、初めてラジオで聴いて、なんてヘンな曲だろうとびっくりしたという曲、「銀河」を披露して、くるりの2人、そしてフジファブリックがステージを後にした。

アンコールの拍手が鳴り止まぬ中、フジファブリックのメンバーが再びステージに登場。「とうとうここまで来ました! せっかくなんで、新しいアルバムから1曲、やりたいと思います。「会いに」という曲で、歌はソウ君が歌います」という金澤の紹介で、7月28日にリリースするニュー・アルバム『MUSIC』からの新曲を初披露。

“会いに行くよ”と志村がデモに残したサビの一節をふくらませる形で加藤慎一が歌詞を書き、山内総一郎がヴォーカルを担当するという、フジファブリックの新たな挑戦を、16,000人の観衆が温かく迎えた瞬間だった。なお」、この曲は、<フジフジ富士Q>翌日の7月18日(日)より着うた(R)が先行配信されている。

そして、イベント最後はやはり「このイベントのきっかけにもなった、この人に〆ていただきたいと思います」と、奥田民生を再びステージに呼び込み。「えー、うちの事務所の稼ぎ頭が今日、ここで大きなコンサートを開きまして、こんなにたくさん集まっていただいてありがとうございます。で、私、事務所の顧問という立場でもあるものですから、本当は最後はイヤなんですけど、やらせていただきたいと思います」というMCの後、アンコールのラストナンバー「茜色の夕日」へ。

志村が約10年前、富士吉田から上京して最初に作ったというこの曲の、“東京の空の星は見えないと聞かされていたけど 見えないこともないんだな”という歌詞に、空を見上げると、そこには故郷・富士吉田の星空が。奥田民生の力強い歌声とフジファブリックの力強い演奏が、4時間に及んだイベントをしめくくるにふさわしい説得力をもって響き渡った。この曲で山内が弾いていたのは、志村が愛用していたペイルブルーのストラトキャスター。ステージには志村のMATCHLESSアンプも置かれていて、存在感を放っていた。

15組のゲスト・アーティストとフジファブリックとのこれまでの交流を物語る写真と共に構成された映像が、「若者のすべて」をBGMに上映され、曲が流れ終わると夜空には大輪の花火が何発も打ち上げられた。“最後の花火に今年もなったな、何年経っても思い出してしまうな”という印象的なフレーズと、印象的な花火。歴史に残る志村正彦の夢の実現ライヴ<フジフジ富士Q>は、こうして集まった人々の心に永遠に灯をともしたまま、幕を閉じた。
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