小林太郎、自由な感性で描き出す19歳の生きざまが詰まった1stアルバム『Orkonpood』特集

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小林太郎

全国始動アルバム『Orkonpood』2010.4.14リリース

テレビ朝日系金曜ナイトドラマ『警部補 矢部謙三』(TRICKスピンオフ)主題歌「美紗子ちゃん」収録

愚直なばかりに 自分の感覚を信じて紡ぎだす歌 だからこそ虚飾のない 自分だけの本当の心が現われる

INTERVIEW-2

最初にも書いたように、基本的に彼は、自分の胸から湧き出るものしか形にできない不器用なタイプ。色んなことを飲み込んで、消化するのも遅い。曲が形になり始めたのは曲作りをはじめてから半年後。

「音楽だけじゃなく、全般なんですけど、何をやるにしても、最初は人よりもできるんですよ。でもそこを通り過ぎて、さぁ、本気で始めるぞとなると、他の人の1/10の能力しか出せなくて、それが長く続くんです。でもある時いきなりできるようになるんですけど、そうなると、人一倍できるようになっているってことが多いんです。音楽……曲作りやギターのテクニックに関しては、本当に成長が遅いし、不器用。何もできない。俺なら何かできる気がするっていう根拠のない自信は誰よりも強いんですけどね。それがあったから続けられたんだと思うんです。そう思い続けている時間がとても長いっていうか(笑)」

当時組んでいたバンドメンバーの手助けもあって、7曲ほどの楽曲が仕上がった。

「1stアルバムの『Orkonpood』に収録されてる「安田さん」とか「スノーダンス」はその頃にできたものなんですよ。他も素材は高校時代からあったもの。そうやって素材は結構できるんですけど、1曲にまとめるのが難しいんですよね。だから、『Orkonpood』ができたのも、ある意味奇跡というか。二ヶ月後には完璧にできているはずだというところからはじまり、作っている最中も何もできる気がしなかった。今はヘラヘラしてますけど、思い出せば思い出すほど、ここに作品があることが信じられない。ずっと必死でした」

文字通り「産みの苦しみ」を味わって、彼の楽曲は完成していく。「Orkonpood」は、まさにそんな苦労の結晶なのだ。彼は自分の感覚をとても大切にするアーティストだ。アルバムタイトルにも象徴されるが、曲のタイトルから言葉に至るまで、そこらへんに落ちているものは使わない。ちなみに、タイトルになっている「Orkonpood」とは、オープンコードを「オーコンプード」と聴き間違えたことに由来している。

そんな風に自分の感覚だけで楽曲を構成しつつも、聴き手に届いたときには、受け手の感性次第で楽曲の染み方が変わるのが彼の楽曲の面白いところ。

「できるだけ感覚で作りたいと思ってるんです。そうありたいし、それが一番楽しい。できるだけフィルターを通さず、頭で考えないようにしています。特に作詞はそれが一番難しい部分。何を書いたら良いのかわからないってところから入るから。できるだけ感覚的に歌詞を書きたいし、しかもできるだけ自由に。できてみてからも、自分の歌詞を見て、分析するようなことが出来なくて、誰かに指摘されて、はじめて“あぁ、そうだったの?”ってこともあるんです。自分でも把握できるような歌詞のほうがいいのかなって思うこともあるんですけど、そうなると自分の感覚とはズレてくるんです。説明臭くなるのはイヤなんですよ。そのかわりに感覚的なものを言葉にしたいと思っているんです」

このアルバムを産み落とし、ホッとしつつも、彼はもう次の産みの苦しみに向かって歩み始めている。

「まだ出し切ったって感じではないんですよ。高校時代に頭の中にあったことで形にできそうなところで作ってみた。作り終わったときは“出来たー!”って感じでしたけど、まだまだ出し切るような自分はないって気がしてるので。次は同じようなことはしたくないし、できるだけ成長していたいなってすごく思っていますね。できるだけのことができるように」

取材・文●大橋美貴子

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