MAMALAID RAG、待望の3rdフルアルバム『SPRING MIST』&初ベスト同時リリース特集

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MAMALAID RAG ママレイド・ラグ待望の3rdフルアルバム『SPRING MIST』 初のベストアルバム『the essential MAMALAID RAG』 2010.4.7同時リリース

創作意欲がポジティブに向かい 溢れるがごとく生み出された みずみずしい14曲と ママラグの20代の歴史を伝える 初ベストが同時リリース

INTERVIEW-2-

――『SPRING MIST』の曲作りは、どの曲から始めたんですか。

田中: 最初に作ったのは「春から春へ」です。その前までは、僕は非常に落ち込んでたんですよ。精神的にも辛くて、体調もよくなくて、そういう最悪の時に、ニュースで加藤和彦さんが亡くなったことを知って、どん底に落ち込んだんです。でも人間は落ちるところまで落ちると、波のようになっていて、次は上がっていくんですね。細野さんがよく言う「崩壊と再生」ですけど、どん底に落ちた時に、1週間ぐらい断食をしたんですよ。そしたら、ものすごいナチュラルハイになって、やる気に満ち溢れて、言葉もメロディもあふれ出てくる状態になった。ただショックな状態はずっと引きずっていて、その気持ちを歌詞にしたのが「春から春へ」です。加藤和彦さんとは立場もスケールも全然違いますけど、同じミュージシャンとして気持ちがわかるところがあって、すごく悲しかったんですよね。

――シングルとして先行配信された「GO ON」は、アルバムの中でも最もフレッシュな前向きさを感じさせる曲です。

田中: 「GO ON」は宣言ですね。すごく落ち込んでた時期から、気持ちが前向きになって、「もうやるしかない。続けていこう」という宣言です。ビートルズの「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」にある「LIFE GOES ON BRA=人生はそれでも続いていく」というフレーズが非常に好きで、それを使ってます。

――優しいバラードやミドルテンポの曲調が多い中で、「GO ON」「涙あふれて」と最後の「恋を抱きしめよう」。このあたりがアルバムで最もポップで軽快な曲ですか。

田中: ゆったりした曲ばかりでもアレなんで、「涙あふれて」はちょっとバランスをとろうと思って最後あたりに書き下ろした曲です。「恋を抱きしめよう」は、最後まで入れるかどうか迷ったんですけど、1曲ロックンロールを入れたいと思っていたし、一番気に入っている曲でもあるので、入れました。非常にポピュラリティーのある曲だと思います。

――1曲、歌詞で怒ってる曲がありますよね。「The Crazy World」。ラテンロックのような熱い曲調で。

田中: 特に何かあったわけではないんですが…(笑)。詞の書き方の傾向がだんだん変わってきて、美しい情景を描く叙情的な詞が僕の得意とするところだったんですけど、それにちょっと飽きてきたところもあって、わりとストレートな言葉使いの曲も書きたくなってきた。そのひとつですね。初めて曲中で「俺」という言葉を遣いました。これまでは遣えなかったし、そういうところでもいろんなことが自由になって、そういう言葉を入れることができるようになったと思います。

――そしてアルバムタイトル『SPRING MIST』。これは1曲目の曲名からとったんですか。

田中: いや、アルバムタイトルが先で、曲はあとから書きました。意味としては、ママレイド・ラグの1stミニアルバムが『春雨道中』で、自分の中でその4曲が最高傑作で、それを超えられないなという思いがずっとあって…。それを超える、もしくはそれと同等のものを作るというのが今回のアルバムの裏テーマとしてあって、そういう意味で「春雨」に対して「春霧=SPRING MIST」というふうにしたんです。それプラス、僕は創作意欲がすごく湧いてきて、曲ができるようになった状態の体の感じを「SPRING MISTに包まれているような…」って、個人的に思うんですよ。もやがかかったような、何か興奮した、ちょっとしたトランス状態みたいな、そういう状態のことをそう呼んでるんですけど、それもあってタイトルにしました。

――このベスト盤とオリジナルアルバムで、ママレイド・ラグを初めて知る人もいると思います。あらためて自己紹介というか、この音楽がこんなふうに届けばいい、というイメージがあれば教えてください。

田中: 今は、音楽の聴かれ方がよりイージーになってきている気がするんです。ママラグの音をマスタリングしてもらっている、バーニー・グランドマン・スタジオの田中三一さんがおっしゃっていたんですけど、「音楽が使い捨てになるぶんにはまだいい。ただ、今はひまつぶしになってる」と。聴いて飽きて捨てられるのはまだよくて、今はそれ以下になってしまっている。それは僕もすごくわかる気がして、音楽家としてはそれが一番怖いところなんです。そこで僕の音楽というのは、わりと聴き込める音楽だと思っているので、そういう意味では…作る側にも感性は必要ですけど、聴く側にも感性は必要だと思うんですよ。それを磨いてほしいし、それを捨てないでほしいし、そういう気持ちでこのアルバムを聴いてもらったら、きっと何か訴えかけるものがあるアルバムなんじゃないかなと思います。みんな時代に迎合して、イージーに聴ける音楽ばかり作っている中で、「こういう音楽もあるんだよ」ということを、小さいながらもなんとか提示していきたいなという気持ちはあります。

取材・文●宮本英夫

INFORMATION


ケータイサイト

【ライヴ・インフォメーション】<SPRING MIST TOUR 2010>
5月7日(金)大阪 RUIDO
5月14日(金)東京 下北沢 GARDEN
5月22日(土)佐賀 GEILS
5月23日(日)福岡 ROOMS

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