[クロスビート編集部員リレー・コラム] 荒野編「面影ラッキーホール」

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夜中にCS放送をチラ見していると、不意にエログロでヴァイオレントな昭和の日本映画に出くわす時がある。先日も東映チャンネルでスケ番が血闘を繰り広げる映画を放映しており、キャロル時代の矢沢永吉が熱唱するシーンまであって何これ?と思ったら、故・大和屋竺が脚本を書いた『番格ロック』だった。そんな昭和の混沌としたエネルギーを、日本のロック・バンドから感じなくなって久しい。唯一、面影ラッキーホール(おもかげらっきーほーる以下、面ラホ)を除いては。

初期こそ、じゃがたらなどパンク/ニュー・ウェイヴ勢の影響を強く感じさせた面ラホだが、作品を重ねるごとに個性が煮詰まり、昨秋リリースした最新作『Why-dunit?』では、ほぼ“ソウル・バンド”と呼んでいいサウンドに到達。人間の暗部(と陰部)ばかりを題材にした歌詞はますます度を越え、電波媒体で放送できそうな曲がまるでない。

10月12日、O-Eastで行なわれたワンマンではaCKy(Vo)が冴えに冴えていた。「あたしゆうべHしないで寝ちゃってごめんね」などスロー曲での熱唱はスタジオ録音を遙かに凌駕するド迫力。元ビブラストーン、メトロファルスなど腕っこき揃いのバンドが奏でる南部ソウル調の演奏に全く負けていない。何せソウルフルにならざるを得ない状況設定の歌詞ばかり。一見突飛な言い回しも自然と熱を帯び、得も言われぬリアリティを醸し出す。今まで誰もうまいことできずにいた「日本語によるソウル」を完成させるのは、意外と面ラホなのかもしれない。いや、マジな話。

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