日本×ノルウェイ、エレクトロ・ガールの競演

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<DIESEL:U:MUSIC 2009>のJAPAN WINNERとして一身に注目を集めるエレクトロ・シーンの才媛、AMWE(アムウィ)。10月7日にリリースされたばかりのデビュー・アルバム『I AM AMWE』をひっさげ、<SYNCA presents AMWE Release Party>が11月7日、麻布十番のWAREHOUSE702で開催された。

◆日本×ノルウェイ、エレクトロ・ガールの競演 ~写真編~

AMWEは多彩なカルチャーがクロスオーバーする今の時代を象徴するようなキャリアの持ち主であり、それが彼女自身の個性を構成している。

作曲、作詞、デザインなど、全てを自ら手がけていく彼女が注目を集めはじめたのは、なんと文化も環境も全く異なる北国スウェーデンから。同国の人気アーティスト、JUVELEN(2009年の同国グラミー賞にノミネートされている)との競演をきっかけに、彼女はMySpaceを使って作品の発表を本格化。すると今度はその音源を耳にしたエレクトロ・シーンの火付け役でもあるフランスのプロデューサー・チーム、Kitsuneが彼女に直接コンタクトを取り、有名ファッション誌『JALOUSE』にTOWA TEI、片山正道と共に掲載されるなど、フランスでも大きな注目を集めていく(ちなみに2009年11月発売KITSUNEの人気コンピ『Kitsune Maison 8』に彼女の曲が収録されている)。

そして2009年に入ると、AMWEに大きなチャンスが訪れる。世界規模で気鋭のアーティストたちをフックアップしサポートしているファッション・ブランド、DIESELが開催する<DIESEL:U:MUSIC 2009>のJAPAN WINNERに選出されたことを契機に、<SUMMER SONIC 2009>、<WIRE09>へ出演、その後<DIESEL:U:MUSIC 2009 WORLD TOUR>のロンドン、パリ公演に出演するなど、より大きな舞台での活動が実現。その勢いはデビュー・アルバムとなる『I AM AMWE』をリリース後の現在も続き、ファンを巻き込みながら本イベントに繋がっている。

ネットワークの普及によって、世界のリスナーたちのトレンドのギャップが埋まりつつあること、アーティスト同士、レーベルとの音のやり取りが容易になったことで、近年、国内を飛び越え海外から人気に火の付くアーティストも出てきているが、コンセプトや楽曲を自ら手がけ、カッティングエッジな形でプレゼンテーションできるAMWEもそんな環境の変化が生み出した新しいタイプのアーティストと言えるだろう。

パーティは“渋谷発”らしいヒップホップとエレクトロがクロスするファンキー・スタイルが人気のKazuNocoからスタート。Royksoppと共に2000年代に盛り上がりを見せた北欧ダンス・ミュージックを世界に広めたANNIEがスパンコールの華やかな衣装に身を包み、その美しい容姿とは裏腹なエキセントリック&トライバルなセットからポップでキャッチーな選曲でダンスフロアをラヴリーに盛り上げる。そして、まるで童話の世界やニューミュージックをダンス化したような、郷愁を感じさせる独特のメロディラインで人気のDE DE MOUSEは、ノスタルジックな映像とタフなビート、そしてドリーミーな旋律の三重奏でドラマチックなライヴでフロアを一気にヒート・アップさせ、続くTOWA TEIはエレクトロにオールドスクールなヒップハウス的なノリを巧みに折り込んだ序盤から、レゲエやジャングルなどオールミックスな展開で大きな喝采を浴びていた。

TOWA TEIの次はいよいよ本イベントの主役であるAMWEの登場。スモークの中から現れた彼女のパフォーマンスは、プラカードを掲げ、拡声器でオーディエンスにアピールしながら歌うロッキンで動きのあるスタイル。エンターテイメント性に富んでおり、人懐っこさを感じさせるMCと、嫌みにならないキュートなセクシャリティの生み出すギャップが既存のディーヴァたちとは異なる魅力を放っていた。また、現行のエレクトロよりもオールドスクールなサウンドや、マイ・ブラディ・ヴァレンタイン「Only Shallow」のエレクトロ・カバーは、彼女の音楽に対する造詣の深さと、海外から火が付いた理由を物語っているようでもあった。

AMWEがステージを終えた後は、ANNIEが再び登場。アップリフティングなプレイを披露し、バトンを引き継いだROC TRAXクルーのホープ、GALBITCHの岡村靖幸からマドンナまで飛び出すエクレクティックかつクイックなDJミックスがフロアをロック。若きホープたちが活躍したこの日のパーティは実に充実した内容で幕を閉じた。

この後、AMWEはライヴ活動のためにパリ、スイスへと向かう。エレクトロの台頭と共にシーンの勢力地図が変わり、ニューカマーが続々と登場してくる中で、世界が目撃した日本のエレクトロ・ガールは、その勢いを増しながら今後もアグレッシヴな活動を繰り広げていきそうだ。

文:佐藤譲
写真:眞鍋孝太郎
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