「“恋がしたくなる”がコンセプト」── Floor on the Intelligenceインタビュー
昨今のクラブミュージック界隈で議論に挙がることが多い“ポップであること”と“コアであること”の対立構図。大衆的な音楽にこそ価値を求める前者と、そもそものクラブ文化の出自を尊重する後者の論争は結論に向かうことなく現在に至るわけだが、このアーティストの登場によって風向きが変わるのではないだろうか。
Floor on the Intelligence(以下、FOTI)。話題の作曲 / 編曲家集団agehaspringsに所属し、YUKIやFUNKY MONKY BABYS、伊藤由奈らのJ-POP作品でペンを取るプロデューサー、田中隼人のオルターエゴ(別人格、変名プロジェクト)である。本稿で紹介するFOTIのデビューアルバム『ROMAHOLIC』は前述した「ポップ / コア」といったディスコードをひょうひょうと飛び越えた作品だと言えよう。まさに新世代と呼ぶべきFOTIの音楽哲学、そして『ROMAHOLIC』にまつわる幾つかのエピソードを本人の口から訊き出した。
◆ ◆ ◆
── まず始めにFOTI名義においての活動コンセプトを教えてください。
FOTI:作曲家やプロデューサーとしての「田中隼人」以外の部分を前面に出したのがFOTIってカンジですかね。活動コンセプトとしては、クラブユーザーとJ-POPユーザーのどちらにも受け入れられるようなものを作っていきたいと思っています。
── 現在までに数々のポップ・アーティストの作品を手掛けられていますが、FOTIの音楽とそれらプロデュース業の明確な違いはどのような点でしょうか?
FOTI:音楽的にはそんなに違いがあるとは思っていませんね。大きい括りではどちらも「ポップ」な領域にあるものだと解釈しているので。ただ、自分の中での気持ちや心掛け、そういった部分での違いはあります。まあ、聴いた人がどれぐらいその自分の心情を量ってくれるかはわかりませんけど(笑)。技術的な面で言うなら、楽曲の組み立て方のロジカルな部分が違いますね。プロデュースってやっぱり作品をどれだけ商品としての価値を上げるかっていう視点で作っていくので。FOTIの作品に関してはそういったマーケティング的な部分は意識せずに作っています。
── 現在までの音楽的変遷を簡単に教えてください。
FOTI:中学生のときにリズムマシン付きの簡易シーケンサーとキーボードとMTRで曲を作り始めました。その当時はクラシックのCDをサンプリングしてリズムを乗せたり、変なこともいっぱいしてましたね。バンドとかは組んだことないです。昔からずっと一人で部屋にこもって作業しているのが好きでしたから。一人っ子の属性ですかね(笑)。その頃いちばん好きだったのはジャミロクワイです。その流れでモータウンっぽいものもいっぱいコピーしたなぁ。クラブミュージックというカテゴリーだと色々ありますが、4つ打ちだと高校生のときに聞いたアンダーワールドとケン・イシイですね。「こういうのカッコイイなぁ」と思ってそこから聴き始めた感じ。当時六本木にあったWAVEに行ってワクワクしながらCDを買ったのを思い出します。
── 今作に限らず、主にどのような機材を使用して音源制作をされているのでしょうか。
FOTI:ほぼ100%PCベースで制作していて、ハードの機材はどんどん使わなくなっています。なのでハード・シンセは必要最低限しか置いていなくて。必須の機材や楽器もこれといってないですね。僕、たぶん音楽クリエイターの中でも機材に興味がない部類の人間だと思うんですよ。たまにそれで叱られるんですけど(笑)。僕の中では「何で作るか」より「何を作るか」が大事だと思っています。だって何百万もするシンセで誰も聴かない音楽を作ることに意味を見出せないですから。
── アルバムの制作期間、全体のコンセプト、タイトルの大意を教えてください。また、今作中にはヴォーカル曲が7曲、参加ヴォーカリストが3名いますが、それぞれのヴォーカリストの印象についてもお訊かせください。
FOTI:制作期間は半年弱。レコーディング自体は実質2ヶ月くらいですね。タイトルの意味は「Romanceholic=恋愛中毒」という意味の造語。「恋がしたくなる作品」っていうのがなんとなくのコンセプトだったから、歌モノに関してはすべて恋愛に関係した歌詞になっています。「Fade」他に参加してくれたyolisは一言でいうと不思議ちゃん(笑)。普段と歌ってるときのテンションの差にビックリしましたね。「Undo」で歌ってくれたmeajyuは細い体に似つかないくらい、声がパワフル。すごくソウルフルなヴォーカルを聞かせてくれてます。宮原永海ちゃん(「I LOVE YOU」他に参加)は普段はお姉さんキャラなんだけど、声がすごくキュート。サラッと聴ける声質なんじゃないかな。今回は3人のキャラや声に合った楽曲をそれぞれ割り当てている感じです。
── 今作は 「DJユースであること」に関してどのくらい意識的ですか? また、今作で特にDJ諸氏にオススメしたいトラックを1曲あげるとするなら?
FOTI:クラブでプレイされることをある程度想定して構成や低域感を考えたり、歌モノでもなるべくミニマルなサウンドにしたりといった意識はしています。ただ、あくまでクラブとホームユース、どちらのシーンにも合うようなものが理想だったので、全体的にはそういった作品になっていると思います。オススメしたいトラックは「Undo」。メロディに隙間があるので気持ちよく踊れるかなと。
── リミキサーとして元気ロケッツとSTUDIO APARTMENTも参加していますね。楽曲が上がってきての感想は?
FOTI:元気ロケッツのリミックスを最初に聴いたときはちょっとビックリしましたね。もっとポップなものを想像していたので。すごくフロアライクなリミックスが上がってきたなと。でも今まで何度か元気ロケッツのライブを見ていたので全く違和感なく聴けましたね。STUDIO APARTMENTのリミックスは 良い意味で想像通り。「これぞスタアパ!」っていう感じのサウンドで、とにかく低域の作り方が上手いなあと。どちらのリミックスもすごくカッコよく仕上がっていて個人的には満足しています。
── ご自身にとって「エッジが利いてる」もしくは「尖鋭的」な音楽とはどのようなものだと思われますか。
FOTI:やはり楽曲の構造的な面で新しいものには反応してしまいますね。構成やメロディの譜割、ヴォーカルの声の処理とか。高域がガッツリ耳につくようなものもそうですね。最初に楽曲を聴いて印象に残るものって高域のバランス感だと思うんですよ。だから高域の成分の作り方が上手なサウンドが基本的には好きですね。
── プロデューサーとして「これは絶対やってはいけない」という禁じ手は?
FOTI:うーん。難しいですねぇ…。プロデュースする側の最低限のルールとしてはアーティストを置き去りにしないことだと思います。マーケティングや自分の嗜好に走りすぎてアーティスト本人をおざなりにしてしまったら意味がないんじゃないかな。こういったことがやりたいとちゃんと本人に話して、納得してもらった上で作品を作り上げていくことが大事だと思うので。
TEXT BY KEITA TAKAHASHI
◆iTunes Store Floor on the Intelligence (※iTunesが開きます)
◆『ROMAHOLIC』スポット映像
◆NEW WORLD RECORDSウェブサイト
◆Floor on the Intelligenceウェブサイト
Floor on the Intelligence(以下、FOTI)。話題の作曲 / 編曲家集団agehaspringsに所属し、YUKIやFUNKY MONKY BABYS、伊藤由奈らのJ-POP作品でペンを取るプロデューサー、田中隼人のオルターエゴ(別人格、変名プロジェクト)である。本稿で紹介するFOTIのデビューアルバム『ROMAHOLIC』は前述した「ポップ / コア」といったディスコードをひょうひょうと飛び越えた作品だと言えよう。まさに新世代と呼ぶべきFOTIの音楽哲学、そして『ROMAHOLIC』にまつわる幾つかのエピソードを本人の口から訊き出した。
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── まず始めにFOTI名義においての活動コンセプトを教えてください。
FOTI:作曲家やプロデューサーとしての「田中隼人」以外の部分を前面に出したのがFOTIってカンジですかね。活動コンセプトとしては、クラブユーザーとJ-POPユーザーのどちらにも受け入れられるようなものを作っていきたいと思っています。
── 現在までに数々のポップ・アーティストの作品を手掛けられていますが、FOTIの音楽とそれらプロデュース業の明確な違いはどのような点でしょうか?
FOTI:音楽的にはそんなに違いがあるとは思っていませんね。大きい括りではどちらも「ポップ」な領域にあるものだと解釈しているので。ただ、自分の中での気持ちや心掛け、そういった部分での違いはあります。まあ、聴いた人がどれぐらいその自分の心情を量ってくれるかはわかりませんけど(笑)。技術的な面で言うなら、楽曲の組み立て方のロジカルな部分が違いますね。プロデュースってやっぱり作品をどれだけ商品としての価値を上げるかっていう視点で作っていくので。FOTIの作品に関してはそういったマーケティング的な部分は意識せずに作っています。
── 現在までの音楽的変遷を簡単に教えてください。
FOTI:中学生のときにリズムマシン付きの簡易シーケンサーとキーボードとMTRで曲を作り始めました。その当時はクラシックのCDをサンプリングしてリズムを乗せたり、変なこともいっぱいしてましたね。バンドとかは組んだことないです。昔からずっと一人で部屋にこもって作業しているのが好きでしたから。一人っ子の属性ですかね(笑)。その頃いちばん好きだったのはジャミロクワイです。その流れでモータウンっぽいものもいっぱいコピーしたなぁ。クラブミュージックというカテゴリーだと色々ありますが、4つ打ちだと高校生のときに聞いたアンダーワールドとケン・イシイですね。「こういうのカッコイイなぁ」と思ってそこから聴き始めた感じ。当時六本木にあったWAVEに行ってワクワクしながらCDを買ったのを思い出します。
── 今作に限らず、主にどのような機材を使用して音源制作をされているのでしょうか。
FOTI:ほぼ100%PCベースで制作していて、ハードの機材はどんどん使わなくなっています。なのでハード・シンセは必要最低限しか置いていなくて。必須の機材や楽器もこれといってないですね。僕、たぶん音楽クリエイターの中でも機材に興味がない部類の人間だと思うんですよ。たまにそれで叱られるんですけど(笑)。僕の中では「何で作るか」より「何を作るか」が大事だと思っています。だって何百万もするシンセで誰も聴かない音楽を作ることに意味を見出せないですから。
── アルバムの制作期間、全体のコンセプト、タイトルの大意を教えてください。また、今作中にはヴォーカル曲が7曲、参加ヴォーカリストが3名いますが、それぞれのヴォーカリストの印象についてもお訊かせください。
FOTI:制作期間は半年弱。レコーディング自体は実質2ヶ月くらいですね。タイトルの意味は「Romanceholic=恋愛中毒」という意味の造語。「恋がしたくなる作品」っていうのがなんとなくのコンセプトだったから、歌モノに関してはすべて恋愛に関係した歌詞になっています。「Fade」他に参加してくれたyolisは一言でいうと不思議ちゃん(笑)。普段と歌ってるときのテンションの差にビックリしましたね。「Undo」で歌ってくれたmeajyuは細い体に似つかないくらい、声がパワフル。すごくソウルフルなヴォーカルを聞かせてくれてます。宮原永海ちゃん(「I LOVE YOU」他に参加)は普段はお姉さんキャラなんだけど、声がすごくキュート。サラッと聴ける声質なんじゃないかな。今回は3人のキャラや声に合った楽曲をそれぞれ割り当てている感じです。
── 今作は 「DJユースであること」に関してどのくらい意識的ですか? また、今作で特にDJ諸氏にオススメしたいトラックを1曲あげるとするなら?
FOTI:クラブでプレイされることをある程度想定して構成や低域感を考えたり、歌モノでもなるべくミニマルなサウンドにしたりといった意識はしています。ただ、あくまでクラブとホームユース、どちらのシーンにも合うようなものが理想だったので、全体的にはそういった作品になっていると思います。オススメしたいトラックは「Undo」。メロディに隙間があるので気持ちよく踊れるかなと。
── リミキサーとして元気ロケッツとSTUDIO APARTMENTも参加していますね。楽曲が上がってきての感想は?
FOTI:元気ロケッツのリミックスを最初に聴いたときはちょっとビックリしましたね。もっとポップなものを想像していたので。すごくフロアライクなリミックスが上がってきたなと。でも今まで何度か元気ロケッツのライブを見ていたので全く違和感なく聴けましたね。STUDIO APARTMENTのリミックスは 良い意味で想像通り。「これぞスタアパ!」っていう感じのサウンドで、とにかく低域の作り方が上手いなあと。どちらのリミックスもすごくカッコよく仕上がっていて個人的には満足しています。
── ご自身にとって「エッジが利いてる」もしくは「尖鋭的」な音楽とはどのようなものだと思われますか。
FOTI:やはり楽曲の構造的な面で新しいものには反応してしまいますね。構成やメロディの譜割、ヴォーカルの声の処理とか。高域がガッツリ耳につくようなものもそうですね。最初に楽曲を聴いて印象に残るものって高域のバランス感だと思うんですよ。だから高域の成分の作り方が上手なサウンドが基本的には好きですね。
── プロデューサーとして「これは絶対やってはいけない」という禁じ手は?
FOTI:うーん。難しいですねぇ…。プロデュースする側の最低限のルールとしてはアーティストを置き去りにしないことだと思います。マーケティングや自分の嗜好に走りすぎてアーティスト本人をおざなりにしてしまったら意味がないんじゃないかな。こういったことがやりたいとちゃんと本人に話して、納得してもらった上で作品を作り上げていくことが大事だと思うので。
TEXT BY KEITA TAKAHASHI
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FUNKY MONKEY BΛBY’S
伊藤由奈
YUKI
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