ナイトメア:鍛錬と挑戦の結晶が詰め込まれた勇往作『majestical parade』特集

ポスト
ナイトメア 10th Anniversary Eve 鍛錬と挑戦の結晶が詰め込まれた勇往作
INTERVIEW RUKA(Dr)
「矢島美容室の曲をテレビで聴いてて、ああいう嘘くさいダンス・ナンバーっていいな~って思って」

――個人的には、「MELODY」よりも「MASQUERADE」のほうが、かなりツボを刺激されたんですけど。

RUKA:俺もです(微笑)。

――こっちのほうがRUKA君としても自信作?

RUKA:でも「the LAST SHOW」(2008年発売アルバム『Killer Show』収録)のほうが俺的にはもっと自信作だったけどね、一般ウケという部分を考えると。曲全体の雰囲気を含めて。

――「MASQUERADE」は「the LAST SHOW」があったからこその曲?

RUKA:元々俺自身、POTSHOTとかSNAIL RAMPとかスカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)とか、そういうの全部ひっくるめて聴いてて。ホーンとバンドの相性がすごい好きだったのね。で、だんだん生ホーンを入れられるぐらいのレコ-ディング予算を出してもらえるようになってきたから、それで「the LAST SHOW」で初めてやってみて。そしたら"合うね"ってのが分かったのね。それで、今回もやってみた。

――最初からホーンを入れることを意識して書いたんですか?

RUKA:最初は(微笑)……矢島美容室の曲をテレビで聴いてて、ああいう嘘くさいダンス・ナンバーっていいな~って思って。きっかけはそこ(笑)。

――なるほど、分かりやすいっ!(笑)この曲では、耽美だけど艶かしい歌詞をYOMI君に歌わせてみたかった?

RUKA:一度も歌ってないような歌詞を歌わせてみたいなって思ったの。それは、これに限らす毎回思うかな。この曲に関しては、ゾジーさん、歌舞伎町が大好きだからさ。キャバレーとか行くじゃん?

――知りませんよ、そんなの私に聞かれても(笑)。

RUKA:行くんだけど(笑)。その世界を俺なりに想像して書いてみた。ああいうところでは、こういう葛藤があるんだろうな~って。

――曲調的にはこの曲も「MELODY」も「Lost in Blue」もそうなんですけど、いま、RUKA君は日本の懐メロ、そういうメロディをすごく意識して追求してるような気がするんですけどね。

RUKA:なんかね、「Lost~」の頃だったかな? "和"っていうことを考えるようになったの。それは、着物とかそういうベタベタの和じゃなくて、日本らしさとか日本人とはってところなんだけど。そこから戻ったのかな、昔の歌謡曲が好きだった思考に。例えば、「MELODY」であれば、最初のアコギのアルペジオ。あそことか、すごい日本っぽさがある。1ヵ所、和が感じられるものがある曲って、日本人は好きなのかなって思うんだよね。

――うんうん。なのにこの曲、いきなりスパニッシュな哀愁ギターが出てきちゃうという仕掛けもあってね。

RUKA:そうそう(笑)。

――「MELODY」は全体的に見るとせつない雰囲気の楽曲なんだけれども、アコギのアルペジオ、キーボードの音で透明感が施されている。その透明感がすごく効いてる曲だと思うんですよ。

RUKA:これ、キーボードは3回ぐらい録り直したな。その場(レコーディングの現場)だと正確な判断ができないから、俺、録ったものをいったん家に持ち帰って、何回か聴くのね。最初録ったものを聴いてたら、だんだん違和感が出てきて。「もう1回録り直して下さい」っていって録った。

――なるほど。「MELODY」は、歌詞も昭和の匂いがありますよね。

RUKA:そう。昔の父ちゃん母ちゃんとか、爺ちゃん婆ちゃんの時代の恋愛を想像して書いた。

「清春さんと対談する機会があって、それがいい流れになりました」

――「Mr.trash music」はまた、そういう和の流れとはまったく違うところにあるタイプの曲でしたけど。

RUKA:これは今回、どうしても書きたかった曲。

――この歌詞は、いまの音楽シーンに向けてのアンチテーゼ?

RUKA:ううん、全然そんなことないよ。もっと小さな話。今回、曲書きに煮詰まってた時期があって。まあ、そういうのは毎回あるんだけど。今回もやってきて。そうなると、もう何を作っていいか分かんなくなるのね。その頃、知ってるライターさんのなかにパンクに詳しい人がいて。その人といろいろパンクの話をしてたら、すごいパンクが聴きたくなって。やっぱりこうい曲が好きだから、こういうのをナイトメアで1曲作ってみようって作った曲。

――これって……パンクなの?

RUKA:そう!(微笑)俺がやるとこういう風になる。

――なるほど。しかもパンクで"子猫ちゃん"。このフレーズにはとにかく度肝を抜かれましたけどね。

RUKA:そう?(あっさり)ライオンとかチーターとかさ、牙があるから強いだけで、牙を抜かれたらただの猫でしょ? だからなんだけど。

――でも、そこで"子猫ちゃん"呼ばわりするなんて。

RUKA:ふははっ。ねっ! 完全にバカにしてるよね(笑)。

――明らかにターゲットがあって書いてるでしょう。これ(微笑)。

RUKA:ターゲットがいて書いてたけど、書いたらもうどうでもよくなった(笑)。こういう曲調だと歌詞を選ぶからさ。ハマらないと全然カッコ悪くなっちゃうんで、歌詞を書くまでの段階ではすごい悩んだの。そのタイミングで清春さんと対談する機会があって。清春さんは、自由にいいたいことをいうじゃないですか? それで敵作ろうが、好きな人がいてくれるならそれでいいって。そういうのを見ていて、自分的にはそれがいい流れになりました。

――この曲は、RUKA君の好きな王道のド派手な展開も作らず、最初から最後までストレートにズタズタズターでいっちゃう。ドラマーとしては、相当疲れそうな曲ですよね。

RUKA:うん、疲れる!(断言)

「今回、Ni~yaは最後まで自分で作って、その一歩を踏み出したんだよね」

――ドラマーというところでは「Parade」でのマーチング・ドラム。あれも新しかったですよね。

RUKA:簡単そうに聴こえるけど、難しいんだぞ~、あれは! 俺、(ドラムの)基礎を知らないからさ。鼓笛隊とか経験してないし。だから、難しくてしょうがなかったよ。

――でも、これを作曲した咲人君は鼓笛隊出身。だから"よっしゃ、きたー!!"って、大喜びしながら書いてたんでしょうね。この曲(微笑)。

RUKA:がはははっ(笑)。だろうね。

――この曲は久々に、咲人君ナンバーにRUKA君が歌詞をのせるというものだったけど。

RUKA:アルバムのタイトルができたときに、咲人の頭の中でこの曲がでてきたらしくて。タイトルを聞いて浮かんだ曲だから、歌詞は任せるっていわれて。俺が"majestical parade"というものを1曲に込めて書いた。

――あと、今回はNi~ya君が初めて曲を書いてきたじゃないですか?

RUKA:Ni~yaは前から書いてたんだけど、やっと(曲出しのときに)持ってきたよね。

――せっかく5人全員曲を書けるバンドなんだから、もっと他のメンバーも書けばいいのにって思いません?

RUKA:俺と咲人にもあることなんだけど、なにか一つ捻ったものがないと、曲として成立しないっていう、変な邪念があるんだよね、それぞれ。ストレートなものはよくない、あとギターもメロディもすべて作り込んでないといけないってのがみんなのなかにあると思うんだ。それのせいで(曲制作を)狭めてるってのは、正直あると思う。だから、そこはこれから変えてかなきゃいけない! 本来、曲出しなんかラジカセにポロッと入れてくればいいんだから。そういう簡単なものでいいから1曲作って持っけばいいんだよ。1フレーズだけ作ってきて、俺とか咲人がその後を形にしちゃったら、ナイトメアの曲のカラーになっちゃうから、とにかく最後まで作る。今回、Ni~yaは最後まで自分で作って、その一歩を踏み出したんだよね。

――じゃあNi~ya君、今回はめちゃくちゃ頑張ったんだ。後で褒めとこっ!(微笑)

RUKA:うん、たくさん褒めてあげて!

取材・文●東條祥恵

>> 特集TOPに戻る

この記事をポスト

この記事の関連情報