増田勇一の師走ライヴ日記(1)エクストリーム
いよいよ2008年も最後の月に突入。12月はただでさえ慌しいうえに、見逃せないライヴが目白押しだったりもする。で、必然的に睡眠時間を削って原稿書きにいそしむことになるわけなのだが、観たいものを我慢することはストレスに繋がるけども、素晴らしいライヴというのは観た側の自分にとっても活力となり得るもの。12月の幕開けと同時に観たエクストリームの来日公演が、まさにそれだった。
12月1日、約13年ぶりとなる復活アルバム『サウダージ・デ・ロック』を引っさげての、エクストリームの通算6回目のジャパン・ツアーが幕を開けた。会場となった東京・渋谷C.C.Lemonホールは満員の盛況。ライヴの具体的な内容については、まだまだこれから公演を観ることになる読者も多いはずだからあまり詳しくは書かずにおくが、過去すべてのアルバムからまんべんなく選曲された演奏メニューは、まさに文句のつけようのないものだった。
僕としては、客観的に考えたときに間違いなく代表作ということになる『ポルノグラフィティ』(1990年)や『スリー・サイズ・トゥ・エヴリ・ストーリー』(1992年)からのヒット曲群ばかりじゃなく、1989年発表のデビュー・アルバム『エクストリーム』の収録曲たちをフィーチュアしたメドレーや、なかには「あのアルバムだけは好きじゃない」というファンもいるはずの『ウェイティング・フォー・ザ・パンチライン』(1995年)からの楽曲も披露してくれたことがとても嬉しかった。僕は、彼らのすべてのアルバムが、すべて異なる理由で好きなのだ。もちろんそれは、『サウダージ・デ・ロック』についても同じことだ。
結果、この夜のステージは比較的コンパクトな時間枠に現在と過去をバランス良く詰め込んだ、実に密度の濃いものとなった。正直、アンコール終了時には、開演から2時間近くを経ていたことが信じられないほどだった。演奏の完璧さやパフォーマンスの充実ぶりについては言うまでもないし、ファン・サービスも万全。「モア・ザン・ワーズ」をはじめとする代表曲でのオーディエンスの大合唱も見事だったし、実際、あのヌーノ・ベッテンコートに「日本のファンは特別」なんて日本語のメッセージを吐かせたのは、ちょっとした快挙ともいえる。かつて何度も彼らを取材してきた人間として言わせてもらえば、このスーパー・ギタリストには、ちょっとシニカルで“どこまでが本気で、どこからが冗談なのか”がわかりにくいところがあるのだ。実際この日も、ゲイリー・シェローンが客席に向かって「次の曲はみんなにも歌って欲しい」と言うと、ヌーノは「だけどなるべく音程は正確に」と一言。ま、取材者としてはそういうところも面白かったりするわけだが。
そんなことはともかく、こうしてまさに理想的なカタチで幕を開けたエクストリームの来日公演は、本日以降も各地で繰り広げられる。彼らが“まったく同じセットリスト”で全公演を消化するとは考え難いところもあるし、僕自身ももう一度くらいは観ておきたいところなのだが……果たして年末の締め切り地獄のなか、そうした願いはかなうのだろうか? しかし、僕自身のことはどうあれ、かつてエクストリームを聴きまくっていた人たちのみならず、これまで彼らのライヴに触れたことのない人たちにも、是非この機会に、彼らの体現する極上のロック・エンターテインメントに触れてみて欲しいものだ。
ところで最後に余談プラス私信。このライヴの入場時、会場前で見知らぬ男性に「増田さんじゃないですか」と声をかけられ、「ああ、きっとまた例によって“酔っ払ってたときに会って顔を憶えてない人”だな」と思って、正直に「誰だっけ?」と訊いたら、「いや、誰でもないっす」との回答。彼はDIR EN GREYのファンで、先日、横浜BLITZでのJのライヴでも僕を目撃していたらしい。ここまでライヴ趣味の重なる人、業界内にもあんまり居ないんですが。また今度、見かけたら声かけてやってください。
増田勇一
<エクストリーム 日本公演>
12月1日(月)東京渋谷C.C.Lemonホール(終了)
12月2日(火)東京渋谷C.C.Lemonホール
12月4日(木)東京渋谷C.C.Lemonホール
12月5日(金)東京渋谷C.C.Lemonホール(追加公演)
12月8日(月)大阪厚生年金会館
12月9日(火)名古屋市公会堂
12月10日(水)広島ALSOKホール
[問]ウドー音楽事務所 03-3402-5999
◆ウドー音楽事務所ウェブサイト
◆iTunes Store エクストリーム (※iTunesが開きます)
12月1日、約13年ぶりとなる復活アルバム『サウダージ・デ・ロック』を引っさげての、エクストリームの通算6回目のジャパン・ツアーが幕を開けた。会場となった東京・渋谷C.C.Lemonホールは満員の盛況。ライヴの具体的な内容については、まだまだこれから公演を観ることになる読者も多いはずだからあまり詳しくは書かずにおくが、過去すべてのアルバムからまんべんなく選曲された演奏メニューは、まさに文句のつけようのないものだった。
僕としては、客観的に考えたときに間違いなく代表作ということになる『ポルノグラフィティ』(1990年)や『スリー・サイズ・トゥ・エヴリ・ストーリー』(1992年)からのヒット曲群ばかりじゃなく、1989年発表のデビュー・アルバム『エクストリーム』の収録曲たちをフィーチュアしたメドレーや、なかには「あのアルバムだけは好きじゃない」というファンもいるはずの『ウェイティング・フォー・ザ・パンチライン』(1995年)からの楽曲も披露してくれたことがとても嬉しかった。僕は、彼らのすべてのアルバムが、すべて異なる理由で好きなのだ。もちろんそれは、『サウダージ・デ・ロック』についても同じことだ。
結果、この夜のステージは比較的コンパクトな時間枠に現在と過去をバランス良く詰め込んだ、実に密度の濃いものとなった。正直、アンコール終了時には、開演から2時間近くを経ていたことが信じられないほどだった。演奏の完璧さやパフォーマンスの充実ぶりについては言うまでもないし、ファン・サービスも万全。「モア・ザン・ワーズ」をはじめとする代表曲でのオーディエンスの大合唱も見事だったし、実際、あのヌーノ・ベッテンコートに「日本のファンは特別」なんて日本語のメッセージを吐かせたのは、ちょっとした快挙ともいえる。かつて何度も彼らを取材してきた人間として言わせてもらえば、このスーパー・ギタリストには、ちょっとシニカルで“どこまでが本気で、どこからが冗談なのか”がわかりにくいところがあるのだ。実際この日も、ゲイリー・シェローンが客席に向かって「次の曲はみんなにも歌って欲しい」と言うと、ヌーノは「だけどなるべく音程は正確に」と一言。ま、取材者としてはそういうところも面白かったりするわけだが。
▲ライヴがいいと買わずにいられないのがTシャツ。というわけで終演直後、「Tシャツ買いに行ってきます!」といって走り出したら、同業者のY口さんに「頑張ってね」と笑顔で励まされました。 |
▲Tシャツの裏を見てみたところ、広島の次はソウル公演であることが判明。2008年7月からずっとツアーを続けてきたエクストリーム。2009年も観たい! |
ところで最後に余談プラス私信。このライヴの入場時、会場前で見知らぬ男性に「増田さんじゃないですか」と声をかけられ、「ああ、きっとまた例によって“酔っ払ってたときに会って顔を憶えてない人”だな」と思って、正直に「誰だっけ?」と訊いたら、「いや、誰でもないっす」との回答。彼はDIR EN GREYのファンで、先日、横浜BLITZでのJのライヴでも僕を目撃していたらしい。ここまでライヴ趣味の重なる人、業界内にもあんまり居ないんですが。また今度、見かけたら声かけてやってください。
増田勇一
<エクストリーム 日本公演>
12月1日(月)東京渋谷C.C.Lemonホール(終了)
12月2日(火)東京渋谷C.C.Lemonホール
12月4日(木)東京渋谷C.C.Lemonホール
12月5日(金)東京渋谷C.C.Lemonホール(追加公演)
12月8日(月)大阪厚生年金会館
12月9日(火)名古屋市公会堂
12月10日(水)広島ALSOKホール
[問]ウドー音楽事務所 03-3402-5999
◆ウドー音楽事務所ウェブサイト
◆iTunes Store エクストリーム (※iTunesが開きます)
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