the studs、桜に棘が芽吹く全国ツアー・レポ

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待望の1stアルバム『and hate』を引っさげ、全国ツアー「Tour'08 桜の棘」をスタートさせたthe studs。『and hate』はライヴで演奏するために作られ、ライヴをやる中で成長させてきた曲ばかりが詰め込まれた一枚なだけに、アルバムの持つ“熱さ”に触れるには、やはりライヴ会場という空間が一番だろう。3月18日・HEAVENS ROCK宇都宮VJ-2公演に足を運んだ。

開演を告げるBGMが流れる中、まずは楽器隊の3人がステージに現われた。ギターのaieとベースのyukinoがオーディエンスに背を向けてドラムの響と一瞬アイコンタクトをとると、アルバムとはアレンジの異なる「intro」が始まった。この何気ないジャム・セッションのようなインスト・ナンバーが素直にかっこいいと思える。そこにヴォーカルの大佑が飛び出し「宇都宮~!」と一言叫び「disclosure」へと突入した。大佑の感情剥き出しのヴォーカル、aieの切れ味鋭いギター、yukinoの凶暴にうねるベース、響のタイトで重いドラムが場内の心拍数を上げていく。オーディエンスはサビで「オイ!オイ!」と拳を振り上げて叫び、続く「dread」で早くも盛り上がりは頂点に達した。the studsにはライヴハウスという空間が本当によく似合うのだ。

荒々しいロックンロールだけがthe studsの魅力ではないと言わんばかりに、中盤には聴かせるナンバーが用意されていた。この日はアルバムの中盤に配置されていた「漂流の花」「ある朝」「灼熱は零度」の3曲が、アルバムの曲順通りに演奏されたのだ。改めて感じるのはthe studsの演奏能力の高さと、バンドの一体感だ。隙間の多い曲だからこそ、yukinoのなめらかで独創的なベース・ラインや、響のセンスの良いドラム・フレーズなどリズム隊の個性も浮き彫りとなる。この3曲の流れは絶品で、the studsの4人にしか出せないグルーヴにたっぷりと酔うことができた。そして、ダメ押しとばかりに演奏されたのは「missing vain」。aieのノイジーなギターが“絶望”と“希望”を交互に描いていく狂おしい展開に思わず息を呑む。曲の世界に完全に入り込んで歌う大佑の頬には、汗ではなく涙が光っていた。

後半は再び激しいロックンロールが連発された。「咬みついてこい!宇都宮!」と大佑が叫び、演奏されたのは最新曲の「吐血」だ。ライヴで無条件に盛り上がれる曲がほしいということで、ツアー前に急遽作られた爆走ロックンロール・ナンバーである。大佑はサビで“血を吐くまで叫べ 血を吐くまで吼えろ”と中指を立てながらオーディエンスを挑発する。メンバーとしては「こういう曲は簡単に作れてしまうので、これまで逆に避けてきた」とのことだが、ファンの反応は最高で、結果としてはバンドのレパートリーを広げる曲が生まれることとなった。「吐血」は会場限定販売CD「flow blow」に収録されているので、ぜひ各会場でゲットしてほしい。さらにアルバム収録の「intro」に歌詞をつけた強烈なヴァージョンの「weak end」も披露されたのだが、こちらも異常な盛り上がりをみせた。この2曲だけでも、ライヴによって曲とバンドを成長させてきたthe studsというバンドの本質とさらなる可能性を見た気がする。

約2ヶ月にわたるハードな<Tour'08 桜の棘>の様子は、and hate特設サイト内に随時アップされているので、そちらもチェックしてみてほしい。このツアーでメンバー自身が予想しなかった収穫を得るのは間違いないように思える。ツアー・ファイナルは5月9日のLIQUID ROOM。その日、桜にないはずの“棘”が芽吹く瞬間をオーディエンスはきっと目撃することになるはずだ。

文●田辺 純

●and hate特設サイト
http://www.the-studs.com/andhate/
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