「群青」にみる、スピッツの普遍の清涼感
聞くところによると一部の高校生の間では、草野マサムネを「日本一清涼感のある声」と評しているという。
いやもちろん、以前からあらゆるシーンで彼のボーカルは「清涼感」という表現で紹介され続けてきた。彼を紹介する決まり文句であったひとつのキーワードは、草野マサムネを表現するいち要素を通り越して、いまやスピッツ・ワールドを言い表すにもっとも近い、スピッツと同義語とも言える言葉となっているということだ。ここには、世相のなかで十代の感性が納得した重みがあり、言葉遊びではないしなやかな強さがある。
カラオケで熱唱したい気持ちには、曲や詞に傾倒する想いに加え、そこに流れる清涼感に重ねる憧れもあるのだろう。流行り廃りの激しい音楽シーンの中で、安心と安らぎを求めて多くのリスナーがスピッツの作品を愛聴し続けている。
さて、そんな高校生に問題です。「普遍の魅力/決して崩れることのないスピッツの世界観と醸し出される清涼感…そこに新たなエッセンスを加えるとしたら?」
答はきっと、最も多い回答が「無添加が一番!」ではないのだろうか。
既に完成の域に到達したスピッツの世界観に手を加える必要はないだろう。20年に及ぶ心地よいスピッツ感に、変化を求めるオーディエンスがそうたくさんいるとは思えない。その世界観の居心地の良さ=限りなく心地よい清涼感でこそスピッツ、なのだ。スピッツはスピッツでいて欲しい。そして、自分が決めたスピッツ像に気持ちよくハマる新曲を聴かせて欲しい…それが、リスナーの常だったから。
2007年8月1日シングル「群青」のリリース。そこには、これまでのスピッツ・ワールドを構築してきた普遍の黄金率に、過激な変化が見て取れる。そう、ボーカルは常に3声。草野マサムネに絡みつくように、バックを声が包む。彼のボーカルに絡むのは、スキマスイッチの大橋卓弥とシンガーソングライターの植村花菜である。スピッツ結成20年目の夏にドロップされる33枚目のシングルは、これまでの作風にメスが入るエポックメイキングな作品となった。
「常々3声で、しかも自分でハモるんじゃない感じの曲をやりたいと思ってて。やっと実現しました。もとからピーター・ポール&マリーみたいなのが好きだし、ティーンエイジ・ファンクラブとかもハモりが良い感じじゃないですか。スピッツでもそういうのをやりたかったんです。でも俺の声が高いこともあって、なかなかバンドでは実践できなくて(笑)。しかも、ハモリ癖を持っていない3人(メンバー)なんで、そういうふうにはなかなか行かなかったんですよね」
■スピッツ コメント映像
なるほど、密かなる新機軸と誰もが思ったこのアプローチは、実は昔から草野の胸の中で息づいていたごく自然なものだったという事実。
3人のボーカルは、絶妙な統率感と自由さのぎりぎりのバランスで、曲頭からエンディングまでぴったりと並走するように響いていく。柔らかな弾みをもつ磁力のような距離感が、聴いていて気持ちよく、実は聴けば聴くほどクセになってくる。“コクのある清涼感”は、初めての食感だ。
無添加ではなかった新作なのに、結果、清涼感が全く失われていないのには、王道のハモリを前面に出すシンプルなメロディーラインという、3声を徹底的に意識した作品作りによるところが大きい。そしてなによりヴォーカリストの選定だ。
自分と区別が付かなくなる瞬間すらあったという、草野と大橋の持つ声の倍音特性。そしてその絡みに溶け込みながら、やさしく包んでくれるのは植村花菜のトーン。この人選こそが、無意識の清涼感の創造をつかさどる、スピッツが自らに律するエネルギーである。そこに最大の繊細さでアプローチを重ねるその体質こそが、スピッツがスピッツたるゆえんだったのだ。
「いい意味で裏切ります」…アーティストの発言でよく聞くセリフのひとつである。もちろんスピッツはこんな発言はしてはいないけれど、期待を裏切りながら、さらに上回る満足をリスナーへさらりと返すスピッツは、やはり日本のバンドの最高峰であることを、この「群青」はさりげなくみせつけてくれた。
そんな想いをもって、このプロモーションビデオをみれば、いかに彼らが屈託なく音楽を楽しんでいるかが分かるというものだ。スピッツのサウンドに気持ちよく寄り添った大橋卓弥と植村花菜の存在は、ウサギ/アンガールズに具象化されている。スピッツの4人は何も変わらない。そこにウサギ/アンガールズが寄り添って、夢のような楽しいひとときが実現した。これが、33作目の「群青」なのである。
■「群青」PV視聴【期間限定】
◆リリース情報
ニュー・シングル「群青」
UPCH-5485 ¥1,000(tax in)
2007年8月1日発売
スピッツ オフィシャル・サイト
http://spitz.r-s.co.jp/
スピッツ ユニバーサル公式サイト
http://www.universal-music.co.jp/spitz/
いやもちろん、以前からあらゆるシーンで彼のボーカルは「清涼感」という表現で紹介され続けてきた。彼を紹介する決まり文句であったひとつのキーワードは、草野マサムネを表現するいち要素を通り越して、いまやスピッツ・ワールドを言い表すにもっとも近い、スピッツと同義語とも言える言葉となっているということだ。ここには、世相のなかで十代の感性が納得した重みがあり、言葉遊びではないしなやかな強さがある。
カラオケで熱唱したい気持ちには、曲や詞に傾倒する想いに加え、そこに流れる清涼感に重ねる憧れもあるのだろう。流行り廃りの激しい音楽シーンの中で、安心と安らぎを求めて多くのリスナーがスピッツの作品を愛聴し続けている。
さて、そんな高校生に問題です。「普遍の魅力/決して崩れることのないスピッツの世界観と醸し出される清涼感…そこに新たなエッセンスを加えるとしたら?」
答はきっと、最も多い回答が「無添加が一番!」ではないのだろうか。
既に完成の域に到達したスピッツの世界観に手を加える必要はないだろう。20年に及ぶ心地よいスピッツ感に、変化を求めるオーディエンスがそうたくさんいるとは思えない。その世界観の居心地の良さ=限りなく心地よい清涼感でこそスピッツ、なのだ。スピッツはスピッツでいて欲しい。そして、自分が決めたスピッツ像に気持ちよくハマる新曲を聴かせて欲しい…それが、リスナーの常だったから。
▲「群青」 |
「常々3声で、しかも自分でハモるんじゃない感じの曲をやりたいと思ってて。やっと実現しました。もとからピーター・ポール&マリーみたいなのが好きだし、ティーンエイジ・ファンクラブとかもハモりが良い感じじゃないですか。スピッツでもそういうのをやりたかったんです。でも俺の声が高いこともあって、なかなかバンドでは実践できなくて(笑)。しかも、ハモリ癖を持っていない3人(メンバー)なんで、そういうふうにはなかなか行かなかったんですよね」
■スピッツ コメント映像
なるほど、密かなる新機軸と誰もが思ったこのアプローチは、実は昔から草野の胸の中で息づいていたごく自然なものだったという事実。
3人のボーカルは、絶妙な統率感と自由さのぎりぎりのバランスで、曲頭からエンディングまでぴったりと並走するように響いていく。柔らかな弾みをもつ磁力のような距離感が、聴いていて気持ちよく、実は聴けば聴くほどクセになってくる。“コクのある清涼感”は、初めての食感だ。
無添加ではなかった新作なのに、結果、清涼感が全く失われていないのには、王道のハモリを前面に出すシンプルなメロディーラインという、3声を徹底的に意識した作品作りによるところが大きい。そしてなによりヴォーカリストの選定だ。
自分と区別が付かなくなる瞬間すらあったという、草野と大橋の持つ声の倍音特性。そしてその絡みに溶け込みながら、やさしく包んでくれるのは植村花菜のトーン。この人選こそが、無意識の清涼感の創造をつかさどる、スピッツが自らに律するエネルギーである。そこに最大の繊細さでアプローチを重ねるその体質こそが、スピッツがスピッツたるゆえんだったのだ。
「いい意味で裏切ります」…アーティストの発言でよく聞くセリフのひとつである。もちろんスピッツはこんな発言はしてはいないけれど、期待を裏切りながら、さらに上回る満足をリスナーへさらりと返すスピッツは、やはり日本のバンドの最高峰であることを、この「群青」はさりげなくみせつけてくれた。
そんな想いをもって、このプロモーションビデオをみれば、いかに彼らが屈託なく音楽を楽しんでいるかが分かるというものだ。スピッツのサウンドに気持ちよく寄り添った大橋卓弥と植村花菜の存在は、ウサギ/アンガールズに具象化されている。スピッツの4人は何も変わらない。そこにウサギ/アンガールズが寄り添って、夢のような楽しいひとときが実現した。これが、33作目の「群青」なのである。
■「群青」PV視聴【期間限定】
◆リリース情報
ニュー・シングル「群青」
UPCH-5485 ¥1,000(tax in)
2007年8月1日発売
スピッツ オフィシャル・サイト
http://spitz.r-s.co.jp/
スピッツ ユニバーサル公式サイト
http://www.universal-music.co.jp/spitz/
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