ガンズ・アンド・ローゼズ武道館公演速報 上空に弧を描いたマイクの行方は?
7月18日、ついに1988年12月の初来日時以来、19年ぶりに日本武道館のステージに立ったガンズ・アンド・ローゼズ。結果から言えば、アクセル・ローズはこの夜も完璧な笑顔でステージを去ることになった。しかも、ガンズにしては珍しいと言わざるを得ないほどに“時間に正確なショウ”となった。
開演予定時刻の午後6時を待つようにして始まったムックのステージが終了したのが、それからちょうど30分後のこと。前夜の名古屋公演では、そこから場内が再度暗転するまでに50分を要していたが、この夜、その瞬間が訪れたのは午後7時9分のことだった。つまり所要時間39分。今回のツアーにおける転換時間の最短記録が更新されたわけである。どうでもいいことと思われるかもしれないが、これは無視できない事実だ。
聴こえてきたのは、“来るぞ、来るぞ”とわかっていても興奮を抑えることのできない、あのギターの響き。そしてアクセルの「You know where the fuck you are?」というけたたましいシャウト。大歓声のなか、ショウはこの夜も「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」で幕を開けた。
冒頭からお馴染みのキラー・チューン4連発を経たところで、アクセルはオーディエンスに最初の挨拶。そのなかで彼は、世界的に有名なこの由緒正しいアリーナを「BUDOKAN!」でも「ブトカン!」でもなく、「武道館!」と正確に呼んだ。そのとき僕の脳裏をよぎったのは、在りし日のフレディ・マーキュリーの姿だった。彼もまた、自身の愛する日本の地名や会場名を、日本語の発音に忠実に呼ぶ人だった。もちろんそんな偶然の共通項があることを、アクセル自身は知らないはずだが。
武道館にちなんだ趣向は、もうひとつあった。いつもはTシャツ姿でドラムを叩いているはずのフランク・フェラーが、この夜は何故か半袖の白シャツにネクタイという正装で、しかも煙草をくわえて演奏している。最初にその姿を目にした時点で僕のアタマのなかにはある人物の存在が浮かんだが、実際、メンバー紹介の際にアクセル自身が種明かしをしてくれた。
「On the drums, Mr.Frank“Bun E.Carlos”Ferrer」
バーニー・カルロスとは、言うまでもなくチープ・トリックのドラマー。つまりフランクはバーニーの扮装で演奏していたわけである。チープ・トリックといえば1978年に武道館公演を行ない、その模様を収録したライヴ・アルバム『チープ・トリックat武道館』で世界的な成功を手に入れたグループ。同時に、それによって武道館の名前もまたインターナショナルな認知を得るようになり、多くの海外のバンドにとっての憧れの場所となった。ガンズにとってもそれは同じことだということなのだろう。
演奏内容には、この夜も極端な違いはなく、数々の代表曲たちに加え、世界が待ち焦がれているニュー・アルバム『チャイニーズ・デモクラシー』に収録されることになるはずの楽曲群のなかからは「ベター」、「ザ・ブルーズ」、「I.R.S.」といったところが披露された。そして終盤、アクセルの「みんなは知らないかもしれないけど、とにかくTVのキャラクターみたいなもの」といった説明に導かれて唐突に登場したのは、カナダのTV番組『TRAILER PARK BOYS』の登場人物、BUBBLES。彼を交えながらカントリー調のナンバーが1曲披露され、その流れを引き継ぐように演奏されたのが、今回の日本ツアー初登場となるサプライズ曲、「ユースト・トゥ・ラヴ・ハー」だった。
ライヴは「ナイトレイン」でひとたび幕を閉じた後、アンコールではやはり『チャイニーズ・デモクラシー』に収録予定の「マダガスカル」が披露され、続く「パラダイス・シティ」で、武道館のオーディエンスは赤い紙吹雪にまみれながら完全な一体感を味わうことになった。
そして「パラダイス・シティ」が着地点を迎えた瞬間、アクセルは「Good fuckin’ night!」と叫び、握っていたマイクロフォンを空中へと放った。日の丸の下で弧を描いたマイクがどこに着地したかまでは見届けることができなかったが、そのときアクセルが笑顔なのは間違いなかった。
その直後、ふたたびステージ上に姿を現したメンバーたちは、例によって肩を組みながら横一列になり、深々と頭を下げてからステージを去った。そしてアクセルは武道館のステージに立てたことについて「とても名誉あること」だと述べ、最後にこう言ってステージ袖へと消えていった。
「We hope to see you again!」
僕も同じことを願っている。2007年7月18日、午後9時30分ちょうどの風景だった。
ガンズ・アンド・ローゼズ ジャパン・ツアー ~写真編~
https://www.barks.jp/feature/?id=1000032901
増田勇一
開演予定時刻の午後6時を待つようにして始まったムックのステージが終了したのが、それからちょうど30分後のこと。前夜の名古屋公演では、そこから場内が再度暗転するまでに50分を要していたが、この夜、その瞬間が訪れたのは午後7時9分のことだった。つまり所要時間39分。今回のツアーにおける転換時間の最短記録が更新されたわけである。どうでもいいことと思われるかもしれないが、これは無視できない事実だ。
聴こえてきたのは、“来るぞ、来るぞ”とわかっていても興奮を抑えることのできない、あのギターの響き。そしてアクセルの「You know where the fuck you are?」というけたたましいシャウト。大歓声のなか、ショウはこの夜も「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」で幕を開けた。
冒頭からお馴染みのキラー・チューン4連発を経たところで、アクセルはオーディエンスに最初の挨拶。そのなかで彼は、世界的に有名なこの由緒正しいアリーナを「BUDOKAN!」でも「ブトカン!」でもなく、「武道館!」と正確に呼んだ。そのとき僕の脳裏をよぎったのは、在りし日のフレディ・マーキュリーの姿だった。彼もまた、自身の愛する日本の地名や会場名を、日本語の発音に忠実に呼ぶ人だった。もちろんそんな偶然の共通項があることを、アクセル自身は知らないはずだが。
武道館にちなんだ趣向は、もうひとつあった。いつもはTシャツ姿でドラムを叩いているはずのフランク・フェラーが、この夜は何故か半袖の白シャツにネクタイという正装で、しかも煙草をくわえて演奏している。最初にその姿を目にした時点で僕のアタマのなかにはある人物の存在が浮かんだが、実際、メンバー紹介の際にアクセル自身が種明かしをしてくれた。
「On the drums, Mr.Frank“Bun E.Carlos”Ferrer」
バーニー・カルロスとは、言うまでもなくチープ・トリックのドラマー。つまりフランクはバーニーの扮装で演奏していたわけである。チープ・トリックといえば1978年に武道館公演を行ない、その模様を収録したライヴ・アルバム『チープ・トリックat武道館』で世界的な成功を手に入れたグループ。同時に、それによって武道館の名前もまたインターナショナルな認知を得るようになり、多くの海外のバンドにとっての憧れの場所となった。ガンズにとってもそれは同じことだということなのだろう。
演奏内容には、この夜も極端な違いはなく、数々の代表曲たちに加え、世界が待ち焦がれているニュー・アルバム『チャイニーズ・デモクラシー』に収録されることになるはずの楽曲群のなかからは「ベター」、「ザ・ブルーズ」、「I.R.S.」といったところが披露された。そして終盤、アクセルの「みんなは知らないかもしれないけど、とにかくTVのキャラクターみたいなもの」といった説明に導かれて唐突に登場したのは、カナダのTV番組『TRAILER PARK BOYS』の登場人物、BUBBLES。彼を交えながらカントリー調のナンバーが1曲披露され、その流れを引き継ぐように演奏されたのが、今回の日本ツアー初登場となるサプライズ曲、「ユースト・トゥ・ラヴ・ハー」だった。
ライヴは「ナイトレイン」でひとたび幕を閉じた後、アンコールではやはり『チャイニーズ・デモクラシー』に収録予定の「マダガスカル」が披露され、続く「パラダイス・シティ」で、武道館のオーディエンスは赤い紙吹雪にまみれながら完全な一体感を味わうことになった。
そして「パラダイス・シティ」が着地点を迎えた瞬間、アクセルは「Good fuckin’ night!」と叫び、握っていたマイクロフォンを空中へと放った。日の丸の下で弧を描いたマイクがどこに着地したかまでは見届けることができなかったが、そのときアクセルが笑顔なのは間違いなかった。
その直後、ふたたびステージ上に姿を現したメンバーたちは、例によって肩を組みながら横一列になり、深々と頭を下げてからステージを去った。そしてアクセルは武道館のステージに立てたことについて「とても名誉あること」だと述べ、最後にこう言ってステージ袖へと消えていった。
「We hope to see you again!」
僕も同じことを願っている。2007年7月18日、午後9時30分ちょうどの風景だった。
ガンズ・アンド・ローゼズ ジャパン・ツアー ~写真編~
https://www.barks.jp/feature/?id=1000032901
増田勇一
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