【ライヴレポ】
<出発のアレ>
2007/05/13 @ 代官山UNIT
1年7ヶ月ぶりとなるアルバム『JOY』を引っさげ、5月末からいよいよ全国ツアーに出るzboned zubon。そのツアー開始を約2週間後に控え、アルバム発売の直前というタイミングの5月13日、全国ツアーの前哨戦となるライヴが代官山UNITで行なわれた。これまで<毎月のアレ>というマンスリーのライヴを行なってきた彼らだが、今回はいわば全国ツアーの予告編ともいうべきイベントで、その名も<出発のアレ>。タイトルからもツアーにかける彼らの意気込みが伝わってくる。
会場キャパを超えそうなほどのファンがぎっしり詰まった客席の照明が落ちると、ステージにはヴォーカルの土屋礼央だけが登場。なんと礼央自ら前説を行なうというのだ。コミカルかつ流暢な話術でアルバム『JOY』とそのツアーにかける想いを語り、客席を爆笑と歓声に包むといったん退場。そして改めてSEが流れてメンバーの登場となった。
恵比寿リキッドルームでのライブでは11人もの大所帯でのパフォーマンス。今回はメンバーの4人に、zboned zubonの楽器陣「ズボンドズボンズ」から織原洋子(Kb)と遠藤TABOKUN龍弘(B)を加えた6人編成。全員が位置につくと、SEが鳴り止まないうちに「決断アニバーサリー」が始まり、「シンプルイズム」へと続く。最初から新譜『JOY』の収録曲が続くが、ファンにはこれまでのライヴでおなじみのナンバーなので、のっけから大いに盛り上がる。
そして3曲目には早くもこの日のハイライトの1つがやってきた。過去の曲を一気にメドレーで聴かせてくれたのだ。「OPYJ」から「追い風」、「陽」、「ドライブスマッシュ」といったナンバーを合計9曲、おそらく20分以上に渡ったパフォーマンスは、これだけでもこの日観に来た価値があると思えるくらい。どれもノリがいいし、明るいメロディも歌詞も、礼央とjunkoのヴォーカルのかけあいも、すべてが楽しさ全開のメドレーだった。
熱狂のメドレーが終わると雰囲気は一転、メンバー4人だけがステージ前方に座ってのアコースティックタイムだ。ギターの齋藤はアコースティックギターを抱え、ドラムの菅田はカホン(箱型のパーカッション)をキックに使ったミニドラムセット、そして礼央はキーボードに向かうという布陣。1曲ずつ、それぞれの曲への想いを語りながら進めていくのだが、ここでも礼央はギャグを連発。客席はたちまち爆笑の渦に巻き込まれる。アコースティックタイムでもしっとりした雰囲気なんかにまったくならないのも、彼ららしいところなのだろう。
そして後半は、スティーヴィ・ワンダーの「I wish」のアレンジを取り入れたナンバーからファンキーにスタートし、エンディングに向けアップテンポの曲でたたみかける。「チョコっとGive」では歌詞に合わせて礼央とjunkoがやりあうパフォーマンスも楽しい。そして最後は「バランス」、「堪能JAPAN」と盛り上げて本編は終了。
アンコールの「HOME」では、サビのハーモニーの部分を客席全員でハモって歌うという予想外の試みが行なわれた。最初は“ええーっ?”という声も上がったが、礼央の“音楽は楽しければいいんだっ”という呼びかけに勇気をもらい、会場全員が参加。もちろん3声のハーモニーだからちょっとやそっとではできないし、ましてやこの大人数。完璧に美しく決まったわけではないけれど、こういうときに生まれる一体感は格別だ。
『JOY』は、そのタイトルが示すとおり楽しさを前面に出したアルバムだったし、この日も随所で“キーワードはJOY”と語りかけていたとおり、とにかく楽しいライヴだった。それでも礼央は冒頭で“今日はあえて出し惜しみをする”と宣言していた。これから始まるツアーには、もっと期待していいということなのだろう。