やなわらばー「拝啓○○さん」インタヴュー
東里 梨生(以下、梨生):それまで私たちは、他の人が書いた楽曲を唄った経験がまったくなかったんです。前作「唄の島」をいただくことになったときも、最初は“どういう風に歌詞へ込めた想いを受け入れればいいんだろう”と心配してたんですけど。楽曲を聴いたら、“これまでの自分たちの歩みを見てきたような内容の歌”」だったことから、2人ともすんなり受け入れることができました。
石垣 優(以下、優):「唄の島」は、 RYOJIさんが私たちの活動している姿を(客観的に)見た中から作ってくださった歌だったんですけど。今回の「拝啓○○さん」は、最初から RYOJIさんと一緒に、どんな楽曲を唄いたいかという話をしながら、“今はこんな気持ちでいる”“こういう感情をレゲエのビートに乗せて唄いたい”と、私たちの想いをしっかり伝えながら作り始めていきました。そうやって、つたない言葉で伝えた自分たちの気持ちを、 RYOJIさんは2人の心の裏側まですくい取りながら歌にしてくれた…。それが、すっごく嬉しかった。
梨生:そうですね。お互い中学時代からズッと一緒に過ごし続けてきたので、腐れ縁みたいな関係ですし(笑)。
優:友達というよりも、すでに家族みたいな感覚なんですよ。しかもうちらの場合、父親同士、母親同士も同級生。梨生と私の誕生日は1ヶ月違いで、同じO型だし。実家も互いの家が見えるくらい、近い距離。
梨生:でも性格は、まるっきり逆なんだよね(笑)。
優:音楽以外の趣味も違えば、行動パターンも別々……なはずなのに、よく出会うんですよ(笑)。この間も完全1日オフで遊びに出かけたら、遊び先で偶然梨生に出会ったり。片方が寄り道して帰ったはずなのに、同じ電車で会ったり、近所のコンビニで出会ったり(笑)。なんか勝手に繋がってしまうというか、ほんま腐れ縁だね(笑)。
梨生:なんかね(笑)。この「拝啓○○さん」には、そんなお互いが心の中で思っている気持ちはもちろん、プロデューサーの RYOJIさんに向けた想いも入ってるし。やなわらばーを応援してくれてるファンのみんなや、スタッフの人たちへの感謝の気持ちも入ってるんです。
優:うちら、いろんな人たちに支えられながら、こうやって日々前へと進んでいけてる。だからこそ、その感謝の想いを歌にして、みんなに届けたかったんですよ。
梨生:ホント、 RYOJIさんが2人の想いを全部汲み取ってくれたよね。
優:これまで応援してくれてたファンの人たちからすれば、変わった印象を抱く人もいると思うんですけど。それだけ、やなわらばーの表現枠が大きくなってきたということなんですよ。自分たちは、決まったスタイルやジャンルの音楽を演りたいんじゃない。どんな楽曲だろうと”大切に気持ちを込めながら唄うこと”が、何よりも一番大事なことだと思ってるし。どんな曲調を演ろうと、“やっぱし、やなわらばーだね”と言われるようになっていきたい。その第一歩が「拝啓○○さん」なんです。
梨生:それはドラマのプロデューサーの方にも言われました。いろんなことで板挟みになり、つらい気持ちになってたとき、いただいてた私たちの歌を何気に耳にしたら、胸がジ~ンとして涙が出てきたそうなんです。それをきっかけにこの楽曲を主題歌に選んでくれた…。その話を聴いたときには、自分たちも涙が出てしまうくらい嬉しかったんですけど(笑)。
梨生:私が一番好きな歌詞が、“曇りのち雨 スローな日も負けず 無理に勝ちもせず”というところ。私はここの部分が、一番胸にグサッときました。
優:不思議なのが、“辛いときを過ごしたからこそ”と唄いながらも、演奏が進んでくうちに、何時しか私たち自身もマイナスの気持ちがプラスに変わっていくことなんです。 RYOJIさんの作ってくれる歌には、自分たちじゃ恥ずかしくてなかなか言葉に出して言えない想いも入ってるし。自分たちを含め、聴いてくれる人たちへ向けたいろんなメッセージも詰め込んでいるんです。だから歌ってる私たち自身も、歌うたびにいろんな発見をし続けていくんだと思います。
梨生:「拝啓○○さん」も、2曲目に収録した「悲しみよ 風になれ」も、とてもシンプルな歌詞たちなんですよ。でも同時に、すごく深い意味も込められているんです。
梨生:沖縄は、第二次世界大戦のときに、日本で唯一地上戦を繰り広げてきた地なんです。それを経験してきた「おじい」や「おばあ」たちは、けっしてそんな暗い過去の姿を見せることなく、いつも明るく三線片手に唄い踊っている。
優:自分たちも小さい頃は授業の一貫で、当時の生々しい映像を見てきたし。子供心にショックを受けた経験もあるんです。人によっては、そんなの子供に見せるのは刺激が強すぎて良くないと言うんでしょうけど。そういう多感な時期にその怖さを知ったからこそ、そういう歴史を日々の中でもフッと感じることができるし。つらい気持ちを歌や踊りに変えて笑顔になろうとしていく「おじい」や「おばあ」の気持ちも、わかる気になっていく。とくに言葉としては出てこないんだけど、そういう背景もこの楽曲の中ヘ RYOJIさんは込めてくれました。
梨生:みんなにもそういうことを知って欲しいというよりも、“みんなが笑顔になれる時代が来たらいいな~“という想いとして聴いてもらえたら嬉しいですね。
梨生:私のおじいちゃんの住んでた家の前に、おっきいガジュマルの樹があるんです。私も、小さい頃はよくその樹へ登って遊んでたんですけど。うちのおじいちゃんは、とにかくお祭り好きで、いろんな人を引っ張っていくようなとても生命力にあふれてる人だった。だけどそんなおじいちゃんが身体を壊し、夏前に入院。“お盆までには絶対に退院して戻ってくるから”とベッドの上で笑っていたのに、夏が来る前、急に逝ってしまったんです。私、そのガジュマルの樹を観るたびに、あの大樹のよう元気だったおじいちゃんの姿を思い出してしまうんですね。そこから、楽曲を作りあげたんですけど。うちのおじいちゃんは笑うことが大好きだったので、私もこの曲を唄うときには笑顔で唄うようにしています。
優:ホント、やなわらばーの歌は、いろんな気持ちを教えてくれるんですよ。
梨生:ここまでいろんなことを語ってはきましたけど、一人一人気持ちも経験も違うよう、とらえ方もさまざまじゃないですか。だから私たちの歌も、それぞれが自由に、その人なりの想いと重ねあわせながら聴いてもらえればと思ってる。と同時に、少しでもやなわらばーの歌を通し、聴いた人の心を救う元気を与えられたらな…とも思っています。
優:あとPVも見て欲しいよね。渋谷の街中へ大勢のギャルを集め歌った様子から、オカマバーの人たちの前で歌った姿などもそこには入ってるんですけど。そのPVもドュキメント風の作りになっているんです。最初はガヤガヤ騒いでいたギャルたちが、ジーッと私たちの歌へ耳を傾けてくれ、最後には“ありがとう”とたくさんの言葉を投げ返してくれたり。“人生山あり山ありよ”なんてしゃべりながらも、私たちの歌を聴いて涙ぐんでくれたオカマさんのたちの姿が映ってたり。
梨生:私たちの歌を通し、いろんな想いを心へ遺していけたら…そんな歌の数々が、みなさんの胸にも届くことを願ってます。
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