──では、そうして最終的にプロデューサーやヴォーカリストたちから上がってきた音源に対して、沖野さんから何か注文を付けたりというのはあったんですか?
沖野:一切ないです。だから、ある意味けっこうリスクはありましたよ。でも、そのヴォーカルのディレクションから歌詞といったところまで僕の管理下に置くと、それって限りなくKJMに近づくんですよ。そこと差別化を図るために、あえてオーダーを出さなかったというところもあります。あと、僕の知らない自分の能力みたいなものをみんなに引き出してほしい、というのもありましたね。
──この20名の参加メンバーが感じる沖野さん像を表現している、というわけですね。
沖野:やっぱり何が大事って、想像力が大事だってことに気付いたんですよ。ヴォーカリストは、僕が何を求めているのだろうか?というのを想像しただろうし、プロデューサーもこの歌に最も適したアレンジ、しかも修也を喜ばせるアレンジって何だろうって、想像力を働かせたと思うんです。僕だって、人に会うことが一番だと思いますよ。でも、特に海外の人には、会いたくても会えないじゃないですか。もちろん、僕が世界各地を旅行して録音してっていう方法もありましたけど、それは期限やコストの問題もあるし。ツールはEメールであっても、それを使う人に想像力があれば、限りなく生のコミュニケーションに近いものを作り出せるんじゃないかって思うんです。
──その考え方って、すごくインターネット的ですよね。インターネットの利点って、どこでも簡単に世界とつながれることじゃないですか。それを自分の作品で証明したっていうのは、すごくクリエイティヴで面白いですよね。
沖野:このアルバム作ったことで、世界中どこにいてもこれと同じものを作れるなって思いましたね。だって、メロディは僕の頭の中にあるものですから。場所は一切選ばないんですよね。だから、この先、本当にパソコン一台持って、どこの国に行っても、自分の作ったメロディにデモ・トラックを付けて世界中の友達やヴォーカリストに送れば……こんなにも簡単に音楽が作れてしまうのかっていう発見はありましたね。
──では、収録曲の中で、沖野さんが一番予想だにしなかった仕上がりの曲を教えてください。
沖野:DEGOかな。これ、もともとは3拍子のジャズ・ワルツだったんですよ。DEGOが“これもうそのままでいいじゃん”とか言ってて。だから、こっちもコード進行とか3拍子とかは変えないのかなって思い込んでたんですけど、戻ってきたらまったく違うものになってたという(笑)。
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