──ブライアンがソロ・アルバムを制作しているという話は聞いていたんですが、具体的にはいつごろから作業していたんですか?
ブライアン:レコーディング自体は、バックストリート・ボーイズの『ネヴァーゴーン』を作り始める少し前からかな。去年から今年にかけて行なっていたワールド・ツアー中にも作業は続けていて、ツアー中に書いた曲もあるんだ。
──ロマンチックな「マイ・アンサー・イズ・ユー」で幕開けする今作。サウンド面では全編にわたって、美しいメロディとあなたの歌声がフィーチャーされています。中でも歌の中のスピリチュアルなメッセージというのは、非常に印象深いです。
ブライアン:これまでも、バックストリート・ボーイズの活動を通じて、メンバーそれぞれの価値観を表現するチャンスに恵まれてきたと思うんだけど、今回はソロということで、作品を通じて僕個人をさらにストレートに表現することができたと思っているよ。曲作りやレコーディングのプロセスに関しては、今までの活動で培った経験やテクニックを集約させることができたと思うしね。
──ゴスペルをフィーチャーした楽曲があるあたりは、バックストリート・ボーイズではなかった試みですよね。これはあなた自身のルーツによるところが大きいのでは?
ブライアン:そうだね。僕は幼いころから教会で歌って育ったし、そのことはバイオグラフィーなんかにも載っていたりするんだけど、僕自身、将来はクリスチャンの大学に進学して、神学の道を究めようと思っていたんだ。実際、大学にも奨学生として受け入れられたんだけど、そのことについて知っている人はあまりいないと思う。大学に入る2週間くらい前に、従兄弟のケヴィンから“一緒にグループをやろう、フロリダに行こう”っていう誘いの電話を受けて、僕もその誘いに“OK!”ってふたつ返事をしたからね。そして今に至るわけで(笑)。
──バックストリート・ボーイズ結成の裏にはそういう経緯があったと。ていうかそれ、ホントに初耳ですね。まったく知りませんでした(笑)。
ブライアン:ある意味、これも僕に与えられた運命なんだと思うんだ。大学に進学して伝道師になるのもひとつの道ではあったけど、世界に向けて愛や生きることの大切さを広めることは、音楽の活動を通じてもできること。バックストリート・ボーイズとしてよき仲間と多くのファンに恵まれて、今の自分たちがあること自体、すばらしいことだしね。
──ではゴスペルというアプローチだけじゃなく、アルバムの中にある世界観は、ブライアンのパーソナルな一面そのものなんですね。
ブライアン:そう。自分で書いた曲はもちろんだし、共作したものについても、自分が伝えたいメッセージに合う楽曲をひとつひとつハンドピックしていったんだ。
──あなたの価値観はもちろん、生きることの意味について考えさせられる楽曲もたくさんあると思います。これまでの歴史を振り返ってみると、グループとして世界的ブレイク目前というところで、心臓の手術を行ない、静養を余儀なくされた時期もありましたよね。その経験が、生きるということに対する意識だったり、あなたの価値観に変化をもたらしましたか?
ブライアン:これまでの人生で経験してきたことから学んだことはたくさんあるよ。'98年に心臓の手術を受けたことは、生きることの意味はもちろん、地に足をつけて生活する大切さも教えてもらったと思ってる。僕らがいるエンターテインメントの世界っていうのは、ちょっと有名になると、クレイジーな生活を送りがちで、それは仕方ないことだったりするんだけど、僕にはそういう生き方よりも、ごく普通の幸せをまっとうすることの方が合っているというのもわかったしね。
──幸せといえば、やはり愛する家族。アルバムにも、奥さんへの愛、お子さんへの愛と、家族愛に満ちあふれています。タイトル・チューンの「ウェルカム・ホーム」では、親子の絆が描かれていますよね。
ブライアン:そうだね。この曲では、誰もが経験したり、共感できるような家族とのつながりについて歌っているんだ。ホリデーなんかで実家に帰って、温かい歓迎を受けたときや、ツアーで世界を旅している最中に、父から電話で“今度はいつ帰ってくるんだ? 早く顔を見せろよ”なんて声をかけてもらうと、すごくうれしいんだ。自分も大人になって独立して、父親にもなったわけだけど、帰る場所があるっていうのは素晴らしい。この思いは多くの人とシェアできるんじゃないかな。
──ちなみに「ジーザス・ラヴズ・ユー」の子供の声は、あなたのお子さんの声ですか?
ブライアン:そう。息子のベイリーの声だよ。
──パパになってみて、何か変わりましたか?
ブライアン:なんていうか、まったく違った人間になった気がするよ。息子は“自分を持たないでいること”を教えてくれたというか。僕自身、それまではどちらかというと自己中心的な物事の考え方をする方だったし、人気グループのメンバーということで、アタマでっかちになっていた時もある。でも子供が生まれたことで、自分を客観的に見つめるようになったんじゃないかと思うよ。
──日本のリスナーには、このアルバムのどういうことろを聴いてほしいと思いますか?
ブライアン:ポジティヴな音楽…という点だね。それはバックストリート・ボーイズが長い間やってきたことの延長線上にあるものであり、僕の“一部”じゃなくて “全部”なんだ。このアルバムが、今の世界に欠けているポジティヴさを取り戻すきっかけになったら最高だよね。
取材・文/菊池陽子
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