| 10月12日に東京・渋谷club asiaで来日スペシャル・イベントを成功させたt.A.T.u.。2日間で3,000人の応募があった中から抽選で選ばれた200人のファンを前に、新作『デンジャラス・アンド・ムーヴィング』からの曲と前作からの代表曲「ノット・ゴナ・ゲット・アス」「オール・ザ・シングス・シー・セッド」を合わせて歌い、アーティストとしての成長ぶりをしっかりと印象付けた。
「お客さんが多くても少なくても、ステージで歌うのはいつも気持ちのいいものよ」と、以前そんなふうに話していたレナだったが、まさにその気持ちのよさと喜びを二人は実感しながら歌っているようだった。
ところで、そんな彼女たちの新作『デンジャラス・アンド・ムーヴィング』の評価は、真っ二つに分かれているようだ。デビュー作のほうがインパクトがあったという人もいる。が、一方で、今作ではハッキリと音楽的な成長を見せていると高く評価する人も多い(筆者もそっちの意見に同感だ)。というわけで今一度、そのアルバムの曲群に対する彼女たちの言葉をここで紹介しておきたいと思う。
まず表題曲のイントロに続いて、ドラマチックに鳴り響くのが、第1弾シングル曲でもあった「オール・アバウト・アス」。今の自分たちの意思表明のように思える歌詞だが、“必要なら逃げるの”というフレーズが妙にひっかかる。前作の「ノット・ゴナ・ゲット・アス」では、“私たちは捕まらない”と歌っていた二人だったが、“逃げる”というのはひとつのキーワードになっているのだろうか。
「う~ん……まあ、そうかもね。逃げるというか、いつも走ってる。デンジャラスな人間はその場にじっとしていられないの」(ジュリア)
「そう。逃げてるというよりは、疾走している感じね。デンジャラスで、ムーヴィング。つまり、そういうことよ」(レナ)
こんな馬鹿馬鹿しい世界で無駄な戦いをするくらいなら、逃げたほうがましということだろうか?
「いえ、私たちはこの世界から逃げているわけではないわ。自分たちがもっとよくなるために、今の場所から走り出していくっていう、そういうイメージよ」(レナ)
続く「コスモス」は、まさにそういう彼女たちの疾走感が最高スピードに達し、遂には地球から宇宙にまで飛び出してしまったイメージの曲だ。まるで、こんな狭い地球にいるよりも、宇宙に飛び出したほうが自由であるとでも言いたげな……。
「フフッ。私たちは、地球にいても宇宙にいても、どこにいても自由よ」(ジュリア)
次の「ラヴズ・ミー・ノット」では、「彼は私を愛している。私を愛してない」と、まるで子供の頃にタンポポの花びらを1枚ずつちぎって試した花占いのような相反する感情を歌にする。
「まあ、言葉遊びのようなものなんだけどね」とジュリア。でも、こういう感覚は、実感としてわかるのではないか。
「うん。頭の中でグチャグチャになって、好きなんだかそうじゃないんだかわからないみたいな感覚って、みんなあるでしょ?」(ジュリア)
「フレンド・オア・フォー」は、次のシングルになると噂されている曲だ(当初は「デンジャラス・アンド・ムーヴィング」が第2弾シングルに予定されていたが、変わった模様)。この曲、何気なく豪華な1曲。元ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートが曲を手掛け、あのスティングがベースを弾いているからだ。
「スティングには会ったわけではないけど、彼の音楽は大好きだし、(ベースを弾いてもらえて)光栄よね。彼の曲で好きなもの? “シェイプ・オブ・マイ・ハート”よ!」(レナ)
続いては日本のファンの間でもっとも人気のある切ないバラード「GOMENASAI」。一部のマスコミがこの曲について「日本に対する謝罪ソング」などと伝えているが、それは勝手な憶測。歌詞の内容を読めば、そんなものじゃないことが誰の目と耳にも明らかだ。
「こういう曲が上がってきて、私たちはそれを聴き、音楽として好きになったから歌ったの。日本語の響きもすごくいいなと思ったからね」(レナ)
残念ながらスペースの都合でこのほかの曲についてのコメントは紹介できないが、このような自信作を発表した二人は今、本格的な来日公演の実現も楽しみにしているところだ。
「待っててほしいわ。絶対にまた日本に行くから! ライヴの内容も以前とは全然違うものになるはず。制服? それはもう着ないわ。だって私たちはもう学生じゃないんだから。でも、ファンのみんながどうしてもって言うんだったら、また着てもいいかな?」(ジュリア)
再来日公演、なんとしても実現させてもらいたいものである。
取材・文●内本順一 |
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