<SUMMER SONIC 2005>パブリック・エナミー、全く色褪せてない名曲群

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近年のセールスこそ低調なものの、'80年代後半から'90年代前半にかけては斬新なサウンドと人種問題に関する鋭い社会的メッセージで時代の寵児だったパブリック・エナミーは、まさに“ヒップホップのレジェンド”と呼んで差し支えない。特に30代前半~後半の音楽ファンならその思いはなおさらだろう。だがしかし、悲しいかな、会場には若いB-BOY、B-GIRLの姿があまり見られず! いるのはむしろ、30代前後のロック・ファン風情の男性。う~む、今の若いB-BOYたちにパブリック・エナミーは浸透していないのか……。ヒップホップがストリート・レベルのまま全米、全世界浸透するのに貢献した重要なアーティストだと言うのに。まだこの音楽にはロックほどレジェンドをリスペクトする習慣が根付いていないのだろうか? これはちょっと残念だ。ただ、パブリック・エナミー側に問題がないではない。今回のライヴも、飛び道具的名物ラッパー、フレイヴァー・フレイヴが来ず。DJも、もうすでにターミネーターXではなく、実質上はチャックDのソロ・プロジェクト。サウンドの方も、ジェイムス・ブラウンやスライ&ザ・ファミリー・ストーンといった60~70’sファンクにこだわり過ぎるあたりが、今のヒップホップ・ファンの感性とは微妙にズレているのかな、と思わないではなかった。

だが“メッセージ・ヒップホップ”の代表選手である彼らがブッシュや戦争批判をし“ソウル・パワー”をステージから訴えるとやはり説得力がある。加えて「You’re Gonna Get Yours」「Rebel Without A Pause」「Don’t BeliveThe Hype」といった名曲群は今聴いても全く色褪せてない。そして、やはり圧巻はバンド演奏による彼ら最大の名曲「Fight The Power」と「Bring The Noise」。「ああ、ヒップホップもミクスチャーも、'92年ぐらいが一番クールだったよなあ……」と、感慨に耽りながら、かつて海の向こうのジェネレーションXな若者カルチャーに憧れた僕は踊り狂ってしまった。もっと再評価されても良いのになあ。

取材・文●沢田太陽
Photo●SUMMER SONIC / SUMIE

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2005/8/14 MOUNTAIN STAGE

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
SUMMER SONIC 2005特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010617
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