<RIJF2005>サンボマスター、醜いほどにロックに一生懸命

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<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005>では、その日1日のライヴがスタートする前に、各ステージでスタッフによる様々なコメントが告げられる。「熱射病、日射病に気をつけよう」や「みんなで助け合おう」といった注意事項がメインだが、フェスにおけるちょっとしたエピソードなんかも披露する。メインステージであるGRASS STAGEでは、このフェスのプロデューサーである渋谷陽一氏がマイクを取っていたのだが、最終日の8/7、渋谷氏はサンボマスターの山口隆(Vo&G)のことを“昨年は自身のライヴはもちろん、別アーティストのサポートを2つも行なったのに関わらず、フェス終了後に1時間半もツェッペリンやビートルズの作品についてアレコレ熱く語った体力の限界知らず”と紹介。これからのステージで燃え尽きさせてやってくれと語った。そして断言した。「サンボマスターは日本のロックの未来だ」と。

そんな呼び込みで登場したメンバー3人。最終日のトップバッターのライヴに関わらず、GRASS STAGE会場は観客でいっぱいだ。そして「50年後、60年後、生きているか分からないですよ! でも今を生きていることは確かです!」と山口が言うと「歌声よおこれ」でスタートした。

「早くも伝説の予感です!」
「有料放送でフェスのライヴ観てて『これでひとつになるのかな?』って思ってたんです。でもひとつになってますね!」
「後ろで見ている人…! 横になってゆったりしながら見ている人…! 正しいです! 彼女と来ている人は彼女を! お子さんと来ている方はお子さんを! こんなちっぽけなボクより大切にしてください!」
「電車やバスがロンドンで爆発したとき、全否定されたような気持ちでしたよ! たぶんボクは無力だ! あんたがたも無力だ! でもボクは誠実だ! あんたがたも誠実でしょう! だからボクは歌うんだ! あんたがたのお金で歌えてるんですよ! だから歌ってよろしいか!」

これら次々と繰り出されるMCと曲。ところで、なぜサンボマスターがこんなに人の心をぐっとつかむのだろう? これら数々のMCはもちろんユニークだし、プレイ中は目いっぱい、そして曲間は無音にさせることなく常にギターを爪弾き音を出し、その上へ丁寧語の激情MCをかぶせ、シラけさせない演出もあるだろう。

それに加えて思った。山口氏って、ディズニーランドにいる着ぐるみのミッキーマウスなんじゃないだろうか?と。ミッキーマウスは(当然だけど)笑顔をキープしたまま、短い手足をめいっぱい動かして体を使って踊る。手足だけじゃなくてその動きに連動して首や肩もその動きに合わせていてとにかく全身で踊る。それが“かわいいのにこんなに一生懸命!(その下は汗だくで歯食いしばって頑張ってる大人がいる)”というところに、観る者の胸をいっぱいにさせてくれるものがある。そしていつも音楽は“夢と魔法”。頑張って希望を捨てない、ということだ。

山口氏もルックスはけっしてスマートではない。でもその彼が“全身全霊でとにかく一生懸命!”な姿で動き、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」なんかを歌われた日にゃ、観客みんなが、自分に欠けていたもの、でも大事なものを、“手段”として呼び起こされるんじゃないだろうか(“目的”は人それぞれ違うだろうから)。ロックンロールにこれほどに、醜いほどに一生懸命な山口隆。そして自分は何に対して醜いまでに一生懸命になれてるだろうか?と。

そんなことを感じさせるパフォーマンスを提示し、山口は「誰が金を持ってて、誰が金を持ってなくて。そんなのこの1時間で考えましたか!? 考えてないでしょう? ボクはそんなあなたたちを観に来たのです!」と言う。そして「そのぬくもりに用がある」「月に咲く花のようになるの」を披露して幕を閉じた。

photo/TSUKASA


セットリスト<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005>GRASS STAGE 2005.8.7
01. 歌声よおこれ
02. これで自由になったのだ
03. 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
04. 青春狂奏曲
05. 夜が明けたら
06. 美しき人間の日々
07. そのぬくもりに用がある
08. 月に咲く花のようになるの

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005 特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010461

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
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