ミニレヴュー バーテックスリンク「iAUDIO X5」
バーテックスリンクのiAUDIO X5(以下、X5)は、高級感のあるつや消しブラックのボディカラーが精悍な印象を受けるポータブルプレイヤーだ。幅60.8mm×高さ103.7mm×厚み19mmという薄型のアルミボディに、20GBという大容量のハードディスクが内蔵されている。20GBといえば、平均的なMP3データなら約5000曲も記録できる容量だ。
X5の正面には、カラー液晶ディスプレイと操作用のスティックが配置されている。このカラー液晶は動画を再生できるほか、テキストを表示したり、デジカメ画像を見ることもできる。
液晶ディスプレイは160×128ドットで、26万色を同時発色できる。色が多く出ればそれだけ自然な画質になる。ポータブルプレイヤーでは高性能なディスプレイパネルを搭載していると言えるだろう。
小さいながら、この液晶ディスプレイはきれいだ。液晶にありがちな“残像が残る”現象も気にならないし、何より縦長のデザインは片手で持ちやすい。電車のつり革をつかみながら、X5で映画鑑賞……、なんてことも手軽にできそうだ。
X5のほかにも、動画再生に対応するオーディオプレイヤーは何製品か登場しているが、「動画の再生」をメインにするのか「音楽の再生」をメインにするのかで、製品の印象はだいぶ変わってくる。動画を中心とする機種は画面を大きくし、横長のデザインであることが多い。テレビ画面は横長であり、できるだけ大きな画面を確保するなら横長のデザインにするのが自然だ。
縦長のデザインを採用したX5は、“音楽を聴く”ことをメインとした設計なのだろう。あくまで音楽プレイヤーであり、動画も見られるというコンセプトだ。縦長の方が携帯しやすく、手に持ったときのホールド感もいい。これは正しい選択だろう。
X5は液晶部分だけが5mmほど厚みのあるデザインだ。箱から取り出した瞬間、手に持ったときのホールドバランスは大丈夫か?と心配したが、ある程度の重さがあり、全く問題なかった。逆にスティック下のスロープのおかげで、親指をすべらせるようにスティックに移動できるので、操作感が向上している。
右側面には、ホールド兼用の電源スライドスイッチと「録音」ボタン、「再生/停止」ボタンが配置されている。ちょうど右手に持つと親指にあたる配置だ。なお、反対の左側面にはリモコン付きヘッドホン端子と、デジカメなどOTG対応機との接続用のUSB HOST端子がある。
基本的にメニューは上下で選択するので、コントロールスティックを使った操作は直感的だ。マニュアルを読まなくても、“スティックを押せばメニューが開く”と覚えておけば、たいていの操作は問題なく行えるはずだ。
また、高機能なリモコンが使えるのもX5の特長の一つ。リモコン側で本体機能のほとんどにアクセスできる高機能リモコンは実に便利。バックライト付きの液晶ディスプレイを搭載し、メニューや再生時の曲データなどの情報を確認できる。
対応する音楽フォーマットはMP3、FLAC、Ogg、WMA、WAVと多い。聞き慣れない「FLAC」形式は、元の音声データからの音質劣化が無い、可逆圧縮のコーデックだ。少々ファイルサイズは大きくなるが、音質を全く落とさずに“原音”そのままのハイクオリティなサウンドを楽しめる。
また、iAUDIOシリーズには、「BBESound」という高音質化機能が搭載されている。これは、圧縮音楽を高音質に再生する技術だ。音楽再生時に波形の乱れを補正して、原音に近い波形に近づけたり、カットされてしまう再生帯域の低音部分を伸ばして深みのある低音を実現するなど、圧縮音楽を再生する際に失われてしまう情報を補完してくれるものだ。
この技術は、世界各国の放送局やスタジオで採用されているという。スタジオ並の音場を携帯できるのはスゴい。
なお、X5は3種類のパッケージが存在する。本体のみの「X5-20-BL」、本体に高機能リモコンとクレイドルが付いた「X5-20-BLF」、約35時間とバッテリー駆動時間を大幅に伸ばした「X5L-20-BL」の3点だ。リモコンとクレイドルは日々の使用に大変便利なものだし、多少本体の厚みと重みが増すが、標準モデルで14時間のバッテリー駆動時間がほぼ2倍になる大容量バッテリーモデルも実に魅力的だ。
筆者のお薦めはリモコンとクレードルが付いたセット「X5-20-BLF」だが、音楽とのつきあい方は人それぞれ。自分の音楽ライフにマッチした製品を選べばいいだろう。
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