「街風」UPCH-5315 \1,260(tax in) 2005年6月15日発売 1. 街風 2. わすられ (アコースティック・ヴァージョン) 3. テンダー
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| 4月25日に新宿ロフトで行われたイベントに、音速ラインが出演。しかも、並居る対バンをなぎ倒し(って、彼らはそんなキャラじゃないけど……)トリでご登場。アンコールを含めて6曲という短いセットではあったけれど、音速ラインの楽曲が持つすがすがしさや、実はちょっと攻撃的なところ、そしてほんのり淡いさみしさみたいなものがバッチリ凝縮されたライブだった。振り返ってみると……。
まず、ステージに出てくるなり驚いたのが、メンバー3人+サポート・ギタリストの4人体制になっていたこと。しかも、そのサポートメンバーがステージ上の4人の中でいちばん男前(笑)。それを意識してか否か(後に、藤井のMCで意識していたことが判明)、立ち位置がステージのド真ん中。客席から向かって右に藤井敬之(Vo&G)、左に大久保剛(B)、そして中央奥にドラムスの菅原健生。その菅原の前に立ち、終始ファンタジスタなプレイで楽曲を際立たせていたのでした。
1曲目は「スワロー」。イントロのギターが鳴りだした瞬間に、「あぁ、このギターの感じが音速ラインなんだよナ」とつくづく思う。そう思うやいなや、曲の世界に取り込まれてしまう、とてもとても強い引力を持った曲。ギターという楽器は、凶暴な感情や鬱々とした気持ち、思いっきり楽しくてとにかく興奮する感じなどなど、その音で聴き手のいろんな気持ちを引き出してしまう(ま、ベースだってドラムだってそうなんだけど、ここではひとまずギターに注目を)。そんな中で、音速ラインの、藤井敬之がかき鳴らすギターは、とてもみずみずしくて、青くて、まっすぐに胸の中に飛び込んできて、激しく優しく気持ちを揺さぶる。哀しいような切ないような、うれしくてはしゃぎたいような、さまざまな気持ちを。そのギターの音色同様に、彼の歌声もまた涙のしずくを集めたような青さを湛えている。「テンダー」、「ヒグラシ」、「スナフ」。どの曲も決して似ていないのに、どの曲にも胸を揺らすきらめきが息づいている。
そうやって最初からガンガンこっちを揺さぶっておきながら、何事もなかったように「ども、音速ラインです」とMCを。その藤井のあまりに素朴(+おっさん度高め)な話しぶりに、楽曲とのいいようのないギャップを感じて思わず吹き出してしまう。彼らは以前、自分たちの曲を「懐かしい」感じがする、と話していた。“懐かしい”という言葉に思い浮かべる情景や景色に、音速ラインの曲を流したら、とてもハマるんじゃないだろうか、と。確かにそうかもしれない。だからといってノスタルジックなだけの音楽ともちょっと違う。この日のライブでも、「スワロー」はちょっと悲しみ成分多めの曲なんだけれど、その哀しみをかなぐり捨てて激走するぐらいの力強い疾走感が、演奏から感じられた。それは、まだよくわからない明日へとにかく走り出そうとする姿勢のようにも思える。ヘッドフォンを通して伝わってくるのとは、また違った感触。これだから、ライブはいい。
ベースの大久保は、「自分のパートは好き勝手にやってるんで、とにかく歌詞やメロディーを聴いてほしい」と、話していた。ステージ上で一瞬、メンバーもフロアのお客さんも見ないで、体を壁に向けて弦をはじいていた姿は、ひとりで曲をかみしめているようにも見えた。
最後は「スローライフ」。いつ聴いても、ドキドキ心拍数を上げていく曲。なのに「スローライフ」だもんな。弾きまくって、叩きまくって、動きまくっても安定感のある演奏を聴かせてくれる。それはドラムの菅原健生の微妙なさじ加減によるところも大きい? トリのバンドのみに許されたアンコールでは、「逢いたい」を。フロアにひしめく誰もが、グッときてるんだけど、たとえばワーッと叫んだり手を上げたりの意思表示が今ひとつかみあわない感じが。そのお客さんたちに「ご静聴ありがとうございました~」と笑いを残して帰るのもご愛嬌。
以前、バンド名の由来を聞いた時、「好きな音楽に囲まれて生活するリズム、バイオリズム……、ってとこから、好きな音の速さで進む生活のライン」、ということで「音速ライン」と名付けたと話していた。好きな音に囲まれて、素敵な音楽を作る。その状態を、実際に彼らは東京(菅原、大久保)と福島(藤井)でキープしている。少し先だけれど、7月22日渋谷クアトロでのワンマン・ライヴ、その名も<デーモンナイト☆東京>にも大期待!
文●梶原有紀子 |
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