オアシス、クラブ・ツアー、ロンドン速報レポ!

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5月10日(火)、オアシス待望のクラブ・ツアーがスタートした。初日の会場となったロンドン・アストリアの収容人数は2,000人。彼らを間近に見る滅多にない機会であり、しかも久しぶりの公演とあって、会場は異様なほどの熱気。観客の中には業界関係者、セレヴも多く、レイザーライトのジョニーやトラヴィスのフラン、元ストーン・ローゼズのマニ、ケリー・オズボーン、映画『ノッティングヒルの恋人』でお馴染みの俳優リス・エヴァンスらの姿が見られた。

ライトが落ち「Fuckin’ In The Bushes」が流れると会場は歓声の嵐に包まれた。しかし盛り上がるオーディエンスをよそに、リアム、ノエルをはじめとするメンバーはあくまでもクールな面持ちでステージへ登場。この夜のリアムは白いパーカー、膝までのバキー・ショーツに白いスニーカーという普通ならスポーティと形容すべき服装だが、彼の場合、“爽やか”とは程遠い。どんな格好をしようとも、あの“ふてぶてしさ”は隠しようがないということだろうか。しかし、この自信満々な“ふてぶてしさ”こそがファン、そしてマスコミの求めるオアシス像であり、オーディエンスがこの夜、期待しているものでもある。

パフォーマンスは新作『Don’t Believe The Truth』のオープニングでもある「Turn Up The Sun」でスタートし、その後「Lyla」と続いた。1stシングルとなる「Lyla」はまだリリース前であるにもかかわらず、すでにお馴染み。客席は早くも大合唱となった。この後も“一緒に歌えるオアシス・コンサート”との異名通り、「Morning Glory」「Cigarettes & Alcohol」「Live Forever」といったヒット曲が連発し、オーディエンスは声をからすことになる。

それら代表曲と並び、彼らは新作から6つのニュー・トラックを披露した。以前ノエルがコメントしたように、そのサウンドはバラエティに富んでいる。過去のヒット曲の流れをくむ「Lyla」、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを彷彿させる「Mucky Fingers」、そして「The Importance Of Being Idle」はキンクス風。ギタリストのジェム・アーチャーが書いた「A Bell Will Ring」は、ノエルの言うとおり確かにビートルズの「Revolver」に近いかもしれない。

昨年のグラストンベリー・フェスティヴァルでのステージはいまひとつ評判がよくなかったが、この夜はエッジのきいたロックンロール・ショウを展開。リアムのヴォーカルは鋭く、ノエルやアーチャーのギターも調和がとれていた。そしてザック・スターキーのドラムも見所だ。一見、動きがスローなように見え、激しいサウンドを出すという独特なスタイルでバックアップを務めた。グラストンベリーでの汚名を返上し、オアシスがまだまだ健在であることを立証したパフォーマンスだった。

正直言って、新作については意見が分かれるところだろう。「オアシスは終わった」というのは簡単だ。しかし、どんなに若く才能のあるバンドが誕生しようとも、彼らと同じ土俵で勝負するのは難しい。客層を見るとわかるのだが、彼らが惹きつけるのは音楽ファンだけではない。普段、コンサートに足を運ぶことなどなく、もっぱらパブやサッカー会場にいるような人々からも支持されているのだ。ここまで大衆から愛されているバンドが他にいくつあるというのだろうか。彼らがいまだUKのミュージック・シーンを代表するある種特別な存在なのを実感させられたショウでもあった。

Ako Suzuki, London
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