【ライブレポート】7年越しの歓喜、H.E.A.Tが原点回帰で示した圧巻の演奏と80s愛

2025.06.30 08:58

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スウェーデン産メロディックハードロックバンドのH.E.A.Tがようやくの再来日公演を果たした。2020年に4度目の来日公演が予定されていたものの、同公演は2021年に延期となり、最終的にはやむなく中止となって以降、心待ちにされていたバンドだ。

現在のメンバーはケニー・レクレモ(Vo)、スカイ・デイヴィッズ(G/ デイヴ・ダロン改め)、ジミー・ジェイ(B)、ヨナ・ティー(Key)、ドン・クラッシュ(Dr)というオリジナルメンバーに近いラインナップでの実現だ。

ケニー・レクレモ(Vo)
スカイ・デイヴィッズ(G/ デイヴ・ダロン改め)
ジミー・ジェイ(B)
ヨナ・ティー(Key)
ドン・クラッシュ(Dr)

7年ぶりのH.E.A.Tの来日公演は、まさに北欧ハードロックの真髄を体現した熱狂の一夜になった。過去の来日公演も毎回ステージには定評がある彼らだが、今回は2020年に再加入したオリジナル・シンガーであるケニー・レクレモが再び見られるのも注目ポイントのひとつ。彼らはステージに登場するや否や、観客を一気に自らの世界へと引き込み、終演まで一切の緩みを見せることなく突き抜けてくれた。

オープニングの「Disaster」は、ジョン・サイクスばりのリフが炸裂する強力なナンバー。メンバー全員がフル出力で一気に会場のボルテージが上げられた。新曲ながら、今後のバンドの代表曲になるのは間違いないだろう。フロントマンであるケニー(Vo)の圧倒的な存在感は予想を遥かに超えていて、彼の再加入はH.E.A.Tに再び熱いエネルギーを注いでくれた。以前の彼は少しふっくらとした優しい風貌だったが、筋肉質でたくましく、情熱に溢れたパフォーマンスを見せてくれたのだ。ハイトーンボイスもアルバムで聴く以上に力強く表現されていて、観客も常に一体となって歌っている。

「Dangerous Ground」や「Nationwide」のドライヴ感溢れる楽曲は、近年のバンドを象徴した魅力が詰まっており、ただ音が重くて派手なだけではない。キャッチーなメロディライン、そして聴き手の心を掴むフックの効いたサビが、ライブでも完璧に再現されていた。初期からずっとバンドのグルーヴを支えてきたジミー(B)もこのドライヴ感の貢献度は大きいと思う。

パワーバラードの「Rise」や「Running To You」、そして初期の「Cry」で改めて気付かされるのは、彼らのアンサンブルの完成度の高さだ。繊細なコードワークやコーラスワーク、構成の巧みさが随所に散りばめられていて、これはプロデューサーでもあるキーボーディストのヨナ・ティーの存在が大きい。彼はサウンドにドラマティックな要素を加える立役者としてライブでも光っていた。また「Cry」のイントロギターをスカイ(G/ デイヴ)が奏でた瞬間の歓声がとても大きかったのも印象的だった。

フロントマンとしてのケニーのMCは、時折りクスッと笑みがこぼれるもので、歌の掛け合いでもフレディ・マーキュリーが突如現れ、「エーオ!」と始めるのもユニークであったし、「君たちが騒いで、僕たちも騒ぐと、素晴らしいスピリットが生まれて、今夜は歴史を作ったことになるよ」とも。さりげなくドラムも少し披露してくれた。本職ドラマーのクラッシュも終始安定したリズムを保ち、誰に教わったのか「ビールクダサイ!」の連発もライブの気負わない雰囲気作りになっていたと思う。

「Beg Beg Beg」からブラック・サバスの「War Pigs」や、ドラムソロにクイーンの「Flash」を入れる演出を挟み、後半「Back To The Rhythm」「Bad Time For Love」のミドルテンポ曲からの「Living on the Run」では観客との一体感は最高潮に。イントロのキーボードは少し控えめに感じたけれど、始まった瞬間にあちこちから歓声と拍手が湧き上がる。この曲は前シンガーであるエリック・グロンウォールの代表曲でもあり、ケニーは少し高音がきつそうにも感じたが、ライブのハイライトだったのではないだろうか。

そして完全に1980年代のギターヒーローに見えたスカイ(デイヴ)のギターは1音1音に鋭さがあり、ソロパートでは耳に刺さるような切れ味を響かせてくれていたし、終盤のAOR的な初期曲「1000 Miles」を再びケニーで聴く事が出来たのも感無量。そのまま締めくくりの「A Shot at Redemption」まで、彼らのライブは観るだけではなく、体感するという醍醐味を存分に味わえた。また、オープニングのメンバー登場シーンにはビバリーヒルズコップのサントラになったグレン・フライの「The Heat Is On」を、エンディングにはレイ・パーカーJr.の「Ghostbusters」をテープで流す1980年代の世界観もとても楽しめた。

H.E.A.Tは、1980年代へのリスペクトを持ちながらも、現代の技術と感性でアップデートされたサウンドと演奏力で、今この時代にしかできないロックを鳴らしている。ハードロックが未だに生きていて、そしてこれからも進化し続ける音楽である事を信じたいところだ。会場の熱気はスタートから一瞬たりとも冷めることなく、まさに「H.E.A.T(熱)」に満ちた夜だった。

文◎Sweeet Rock / Aki
写真◎ShimaZi

< H.E.A.T ~ Welcome to the Future Japan Tour 2025~>

2025年6月26日@浅草花劇場
1.Disaster
2.Emergency
3.Dangerous Ground
4.Hollywood
5.Rise
6.Nationwide
7.Running To You
8.Cry
9.Beg Beg Beg~ War Pigs (Black Sabbath cover)
~Drum Solo~ Flash (Queen cover)
10.Back To The Rhythm
11.Bad Time For Love
12.Living On The Run
13.1000 Miles
14.One By One
15.A Shot At Redemption