【インタビュー】WANDSの柴崎浩、ツアー<TIME STEW>初お披露目のニューギターを語る「長い時間をかけて開発した」

2025.06.24 19:00

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■自分のキャビネットIRを作りました
■好みの音を探す作業も楽しいんです

──続いて、Nishgaki GuitarsのAmnis Novusは、これまでメインギター的に使われていました。

柴崎:Amnis Novusはクラフトマンの西垣くんが僕のために最初に作ってくれたギターなんですけど、音のイメージとプレイアビリティー、あとハムバッカー×2基搭載とか、最低限のスペックだけを彼に伝えて、木材の種類も任せて作ってもらったんです。そうしたら完成度の高いギターが出来上がってきてビックリしたという。去年のツアーではSuhr 2020 Limited Classicとダブルメインとして使っていましたけど、新たにSpiraが完成したので、今年は登場機会が少なくなっています。

【Nishgaki Guitars Amnis Novus】
柴崎のためにNishgaki Guitarsが最初に制作したシグネチャーモデル。Nishgaki Guitarsは1500年の歴史を持つ鍛治(刃物)の町“播州三木”に拠点を置くブランドだ。クラフトマンの西垣祐希も幼少期から伝統的な木工技術、工法を学んで育ったとのこと。そのため同ブランドのギターは厳選された木材と精緻な作り込みによる品質と精度の高さが魅力。
 Amnis Novusは、フィギュアドメイプルトップ&バックにセンターにアルダーを挟み込んだボディ構造、メイプルネック、ローズウッド指板、ジャンボフレット、Sperzel製ロック式ペグ、Suhr Thornbuckerピックアップといったスペックを持つ。リッチな質感による上質なトーンと優れたプレイアビリティーを備えた1本。
【Suhr Modern 10th Anniversary Limited Edition 2008】
先進性を打ち出したプロフィールを持つSuhr Modernは、コンパクトなスクエアエッジボディー、ノンピックガード、ダイレクトマウントされたピックアップ、Gotoh製フロイドローズトレモロユニットといった近代的なスペックと、優れた操作性を誇る。
 また、ガボンマホガニーと呼ばれるオクメボディー、アフリカンマホガニーと呼ばれるカヤネック、ローズウッドよりも硬質で粒立ちの良いパーフェロー指板という木材からもSuhrのこだわりが感じ取れる。トーンは厚みと明確な輪郭を兼ね備えており、音の立ち上がりの速さやレスポンスの良さはSuhrならでは。ボディートップのキルテッドメイプルとチェリーサンバーストカラーの組み合わせによる華やかなルックスも特徴。

──SuhrのModern 10th Anniversary Limited Edition 2008とErnie Ball Music Man JP7(ジョン・ペトルーシ・シグネチャーモデルの7弦バージョン)は重低音が魅力ですし、7弦ギターからはWANDSの音楽性の幅広さが伝わってきます。

柴崎:まずSuhrのModernはドロップD(6弦のみ1音下げる変則チューニング)で使用していて、ピックアップはThornbucker+とThornbuckerに載せ換えています。今回のツアーでは「YURA YURA」「Shooting Star」で使っていますね。Ernie Ball Music Man JP7は「GET CHANCE GET GROW」用のギターで、チューニングはドロップA(7弦のみ1音下げ)。これはリアピックアップをDimarzio Illuminator7_DP757に載せ換えています。

──昨年のツアー前にお話をうかがった時に、「7弦は導入したばかりでまだ慣れない」とおっしゃっていましたが、その後いかがですか?

柴崎:ずっと慣れないです。頻繁に弾くギターではないので、相変わらず4弦なのか5弦なのか分からなくなる時があったりします(笑)。

【MUSICMAN JOHN PETRUCCI 7 STRING MYSTIC DREAM】
ドリーム・シアターのジョン・ペトルーシ・シグネチャーの7弦バージョン。豊かなローエンドからクリアなハイエンドまでバランスの良いトーンや丹念に追及されたことがうかがえるプレイアビリティーの高さ、コンター加工が生む快適なフィット感など注目点は多い。
 バスウッドボディー、セレクテッドメイプルネック、ローズウッド指板といったスペックに加えて、アコースティックトーンをクリエイトできるピエゾピックアップを搭載し、モノラル/ステレオのアウトプットが選択できることもポイント。柴崎はピックアップをDimarzio Illuminator7_DP757に交換している。今回のツアーでは「GET CHANCE GET GROW」で登場。ドロップAチューニングならではの重低音を響かせた。
【PRS DGT】
柴崎が2008年夏に入手した同機はデイヴィッド・グリッソムのためにPRSが開発したモデルで、PRS McCartyをベースにしたうえでオリジナルのネックシェイプや、やや高さのあるフレット、専用にチューニングされたピックアップなどを搭載している。オリジナルピックアップは40セット以上に及ぶプロトタイプの制作を経て完成したもの。良質なヴィンテージトーンが特徴だ。
 また、コイルタップ機能を装備していて、ふくよかさと抜けの良さを併せ持ったシングルコイルトーンを引き出すこともできる。トレモロユニットを搭載していることも含めて、汎用性の高さから今回のツアーではバックアップとしてスタンバイしていた。

──慣れるために、7弦を使わない曲も7弦ギターで通すギタリストもいますけど、楽曲のサウンド的な方向性に応じてギターは換えたいですよね。続いてアンプやエフェクターシステムについてお聞きします。前回のツアーと同じく、アンプはFractal Audio Systems AXE-FX IIIを使用しつつ、今回新たにラックエフェクターのEventide H3000が導入されましたが、これはBARKSインタビューでも予告してましたよね。アルバム『TIME STEW』収録曲「FLOWER [WANDS第5期ver.]」のレコーディングでH3000を使用されたという。

柴崎:原曲のレコーディング(1995年)でH3000を使用したんですけど、僕が今使っている機材だとどうしてもイメージする音にならなかったんですよね。それで1990年代に使っていたH3000を引っ張り出してきたんです。H3000でしか出せない音なので、今回のツアーに導入したんですけど、結局、「FLOWER」1曲のためだけにシステムに加えたという(笑)。

──H3000は、どんなふうにAXE-FX IIIに組み込まれているのでしょう?

柴崎:AXE-FX IIIはステレオのインアウトを4つくらい装備しているんですけど、そのアウトプットからPAやチューナーに送りつつ、その中のひとつのペアをSEND/RETURNとして使うことでH3000をつないでいます。(ディスプレイに配列を表示して)これが「FLOWER」で使うレイアウトなんですけど、“OUT 4”をAXE-FX IIIのSENDとして使っているんですね。で、音作りをしていくなかで結局、H3000の音だけじゃなくて、他のエフェクターとミックスさせているんですけど、なんでこうしたのか記憶がない…けど、理由があってこうしてるはずです(笑)。

▲▼RACK SYSTEM
2024年のツアー同様、Fractal Audio Systems Axe-Fx III(マルチプロセッサー / 写真上段)を使用。同機はアンプ/キャビネットのモデリングの豊富さやリアルさなどに加え、精緻かつマニアックなサウンドメイクを行えることが特徴で、世界各国のプレイヤーに愛用されている。
 なお、今回のラックシステムに関しては、Eventide H3000(ラック式マルチエフェクター / 写真中段)が加わったことがトピック。Eventide H3000は1990年代にラック式マルチエフェクターの定番としてシーンに深く浸透し、歴史的名機と称されている。柴崎はインタビューでも語っているように、「FLOWER  [WANDS第5期ver.]」を演奏するためだけに今回のライブシステムに同機を導入した。
 もうひとつ、前ツアーではバックアップとしてセットされていたFractal Audio Systems FM3がAxe-Fx III(写真下段)に変更されたこともポイントといえる。
▲▼Axe-Fx IIIパネルに呼び出されているのは、ディストーションサウンドとクリーントーンを混ぜたプリセットのエディット画面。柴崎によると、「上側がクリーンアンプの配列で、下側が歪みの音。それを混ぜているんです。それぞれにディレイをかけた後、上下のラインをミックスして、その混ざった音を17msecくらいのディレイでダブルにして左右に広げています」とのこと。アナログ実機で実現するには困難なサウンドメイクも行えるのはAxe-Fx IIIの大きな強み。
▲▼FOOT PEDAL
足元にはFractal Audio Systems FC-12(フットコントローラー)、KORG DTR-1(デジタルチューナー)、BOSS FV-500H(ボリュームペダル)、SORCE AUDIOのフットペダル(ワウ用)をセット。フットコントローラーはプリセットやチャンネルの切替、エフェクトのON/OFFなどをリアルタイムで行うためのツールだが、シンクデータにプログラムチェンジのデータが入れてあるため、音色は楽曲の進行に合わせて自動的に切り替わっていく。
 また、昨年のツアーではワウ用ペダルとしてFractal Audio Systems EV-1 Blackを使用していたが、今回はSORCE AUDIOをセット。柴崎曰く、「一般的なエクスプレッションペダルだと踏み幅とかの関係で、ワウペダルとして操作する時にワウっぽくならない。なので、ワウペダルの形のエクスプレッションペダルを導入しました」。

──音色を作る時は頭ではなく、耳で判断されているんですね。AXE-FX IIIには260種類以上のアンプや2,200種類以上のキャビネットをモデリングしていますが、以前から使い方に変化はありますか?

柴崎:新しいキャビネットIRをいろいろ使っているかもしれない。TacoSoundsから僕のシグネチャーIR (412 SHIBASAKI Signature IR PACK)が販売されているんですよ。それはBognerのCelestion V30スピーカーが4発入ったキャビでIRを制作したものなんですけど、それを使ったり、TacoSoundsの別のIRも使ったりしています。

──412 SHIBASAKI Signature IR PACKは、どのように生み出されたものですか?

柴崎:キャビネットIRに関しては最初、「TacoSoundsのIRを使ってみてほしい」と言われたんですよ、知り合いなので。そのうち試そうかなと思ってて、結果、半年以上経ってから試してみたら、“いいじゃん”と。で、使っていくうちに「シグネチャーを作ってみませんか?」と言われたんです。その時も“TacoSoundsのレギュラーシリーズで満足しているから、シグネチャーは要らないんだけどな”と思いながら。でも、せっかくだからやってみようと、自分のBognerのキャビネットとマーシャルのグリーンバックが4発入っているキャビネットを持っていって、データを取ったんです。それが意外と良くて、結果、シグネチャーのキャビネットIRを作ってもらうことにしました。

──スピーカー4発入りの大きなスタックタイプのキャビネットの音が好みに合うのでしょうか?

柴崎:歪みに関しては、4発入りキャビが多いですね。クリーンは2発入りキャビの時もありますけど。「FLOWER [WANDS第5期ver.]」は自分のシグネチャーのキャビネットIRを使っています。

▲▼WIRELESS SYSTEM
特許取得したARCテクノロジーやMARCADサーキットを搭載したSHURE UR4D+は、クリアかつリアルなトーンを得ることができる。ハイレベルな音質はもちろん、周波数自動検索機能や赤外線リンク機能により素早いセットアップが行えるほか、最大10台までの受信機をカスケード接続可能。分配器を使うことなく最大20チャンネル(デュアル・チャンネル受信機の場合)の受信システムを構築できる。
▲▼PICK
マンドリン用の小さなピックを愛用。現在使用しているのは柴崎のシグネチャーピックとして開発されたEXCEL APEX PRO-SHで、白とべっ甲柄タイプがある。共にセルロース製で、厚さは1mm。小さなピックながら、ラフなコードストロークやカッティングなども行うことからもピッキングコントロールの巧さがわかる。
▲▼Pearl Percussion Table PTT-1212
小物置きとしてセットされていたテーブルはパーカッションテーブルをアレンジしたもの。カーペットが敷かれていることや、ドリンクやピックケースがピッタリ収まるホルダーなどもポイント。

──モデリングなどの音作りにおいてキャビネットモデルは重要ですよね。アンプモデルに関しては、昨年ツアーのインタビューで「EVHやCUSTOM AUDIO ELECTRONICS 3+などのモデリングを使用する」とおっしゃっていましたが、その後、変更はありませんか?

柴崎:基本的には変わっていませんね。Plexi2204もよく使うし、クリーンはBogner Shivaを使ったり、歪みとクリーンを混ぜた音とかも使っていますし、いろいろやっているんですけど(笑)。

──ギターサウンドに関しては、AXE-FX IIIを使ってかなり追い込みながら作っていることが分かりますが、時間がある時などにマメに触られているのでしょうか?

柴崎:キャビネットIRも含めてAXE-FX IIIは本当にいろいろなことを試せるので、何か思い立つと良く触っていますね。好みの音を探す作業も楽しいんです。

取材・文◎村上孝之
撮影◎TOYO

 

■WANDS × WOWOW 3ヶ月連続特集

▶<WANDS Live Tour 2025 ~TIME STEW~>
7月20日(日) 午後10:00
WOWOWライブで放送/WOWOWオンデマンドで配信
※放送・配信終了後~1ヶ月間アーカイブ配信あり
 始動6年目を迎えたWANDS第5期が、8thアルバムを携えて開催した全国ツアーより、ファイナルとなった東京ガーデンシアター公演を独占放送&配信。活動期間歴代最長となった3代目ボーカルの上原大史、初期メンバーの柴崎浩(G)、木村真也(Key ※療養中)という体制で“第5期”の活動を行なっている彼らの最新ライブ映像となる。
収録日:2025年5月30日/収録場所:東京東京ガーデンシアター

▶WANDS全期 Live & Music Video History
8月放送・配信予定
※放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
 1991年にデビューしたWANDSの全期を網羅したライブ映像とMVをセレクトして放送&配信。デビューシングル「寂しさは秋の色」から、ミリオンヒットナンバーを連発した黄金時代、そしてZARD坂井泉水が歌詞を担当するなどアニメ主題歌でも人気を博した2代目ボーカル和久二郎の第3期、さらに鉄壁の現体制がシンクロする。30年超のキャリアの中でライブ活動を主軸に活動していたのは、第2期(1992~1996年)と第5期。初代ボーカル上杉昇と、上杉へのリスペクトを公言している現フロントマン上原大史の魅力を味わうことのできる特集が届けられる。

▶WANDS第5期 Live & Music Video Collection
9月放送・配信予定
※放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
 上原大史(Vo)、柴崎浩(G)、木村真也(Key)による第5期WANDS始動後のライブ映像とミュージックビデオをセレクトして放送&配信。2019年11月に上原大史(Vo)、柴崎浩(G)、木村真也(Key)の3人で活動が始まったWANDS第5期。2020年1月にはシングル「真っ赤なLip」を発売して第5期の開幕を高らかに宣言するも、程なくしてコロナ禍の影響により世の中は厳戒態勢に突入する。それでも彼らは楽曲制作の手を緩めることなく、第5期WANDSサウンドを追求。そうした焦燥と葛藤と挑戦の日々が詰め込まれたのが、これまでに公開されてきた楽曲であり、ライブ映像とミュージックビデオだ。現在のWANDSの情熱とポテンシャルを感じることのできる作品群とともに、その魅力が届けられる。

関連リンク

◆<WANDS Live Tour 2025 〜TIME STEW〜>特設サイト
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