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――最近の曲でも4年前の曲でも、自分たちの中で鮮度は変わらない?

藤井:いい歌は、何年経ってもいい歌じゃないですか? 4年経っても演奏できるっていうのはいい歌なんじゃないの?(笑)
 
大久保・菅原:(笑)
――(笑)確かに。前に藤井さんが、「“懐かしい”って言葉を聞いた時に思い浮かべるイメージに、音速ラインの曲を乗せるとハマると思う」と言っていましたが、それは今も変わらないですか?

藤井:変わらないですね。懐かしい感じがするメロディが好きなんですかね。「あの頃はよかったなぁ」っていう感じって、誰でも持ってるじゃないですか? 年配の人でも若い人でも。その辺の感覚と似てるかな。
――「あの頃は良かった」っていうのは、現在と比べてという意味?

大久保:それだと後ろ向きじゃないですか(笑)。あの頃はあの頃でよかったし、今は今っていう感じじゃないかな。それが懐かしい感覚。

藤井:ま、懐かしんでいるだけじゃ進まないからね。未来を見つつ、でも今まで歩んできた道も忘れず。なんか、過去って忘れやすいと思うんですよね。振り返ろうと思わなければ振り返る機会もないし。「懐かしい」っていうのと、「(思い出すと)胸が痛い」っていう、そういう感覚は忘れちゃいけないものだと思うんですね。ある曲を聴いて、なぜだかわかんないけど泣けてきたっていう感覚ありますよね? その辺の感覚を刺激するようなメロディが書きたいんです。
――なるほど。

藤井:もう10年以上やってますけど、メロディに関してそこは変わらないですね。なんか知らないけど泣けてくる感じとか、そういうのって言葉でうまく説明できないけど、今回のアルバムを聴いてみんなで共有できる感覚が絶対あると思うんです。その辺をずっと歌っているんじゃないですかね。

大久保:手が届きそうで届かない。戻りたいけど戻れないからから余計キラキラして見えるというか。そういうのと似てると思うんですけど。

菅原:……さっきからみんな、すごい話してるね(笑)。

大久保:あんま、そういう話するキャラじゃないんだけど(笑)。
――(笑)いい話です。

藤井:僕もバンド辞めようと思った時期もあったし、音楽をやっててもおもしろくない時期もあったけど、そういう時があったから「音楽は楽しくなきゃ意味がないんだ」って思えたし、音速ラインはそこがスタートだからね。楽しくなきゃ音楽じゃないっていうのを基本にやればうまく回りますよ。他のところに言い訳を求めたら、バンドは終わる。
――最後の曲「×2×2」は「バイバイ」と読むんですか?

藤井:はい。でも、詞に「また明日」って言葉が入ってて、「明日もう一回聴いて」ってことなんですけどね(笑)。
――どの曲にもいろんな風景があるし、聴いているうちに自分の中に思い出される風景もあって。このアルバム・タイトル『風景描写』はどうやって決まったんですか?

藤井:もともと自主制作で出したアルバム(’03年)がそのタイトルで。実際、僕がふだん住んでいる福島の田舎の景色もあるし、この中の曲を聴いた時に広がる心象風景もあるし、“風景”って言葉がうちのバンドには合っているなって。風景描写……風景を切り取って描写する、ってうまい言葉だなと。うちらを表わす言葉でこんないいものはないなと思って。自主盤は100枚か200枚ぐらいしか作ってなかったんで、そこで終わらせるのはもったいないなと思ってもう一回つけました。

菅原:このアルバム以降も、いい曲がいっぱいあるんで聴いてください。すごくいい曲ばっかりなので!
取材・文●梶原有紀子
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